【気がつけば「移民大国」 連続インタビュー】
#1毛受敏浩氏(日本国際交流センター執行理事) 外国人に「地方創生」ビザを(12月16日)
#2荻原誠司氏(岡山県美作市長) 多文化共生よりも同化を(12月17日)
#3ジェームズ・ライニー氏(コーラルキャピタルCEO) 多様性がイノベーションを生む(12月18日)
#4ロバート・フェルドマン氏(モルガン・スタンレーMUFG証券) 永住、定住の門戸開いて(12月19日)
#5鳥井一平氏(NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」代表) 技能実習制度の虚構(12月20日)
#6ラタナーヤカ・ピヤダーサ氏(佐賀大学名誉教授) 実習生制度はアジアの貧困対策になる(12月21日)
#7ピーター・ベヴェランダー氏(スウェーデン・マルメ大学移民研究所所長) 犯罪増は移民より社会の問題(12月22日)
#8エイドリアン・ファヴェル氏(英リーズ大学教授) 移民規制、でも経済を支えているのは誰か(12月23日)
Pieter Bevelander 1963年生まれ。ルンド大学で博士号を取得。専門は移民政策、移民の労働市場統合などで、特にスウェーデン、オランダ、カナダなどの移民研究で知られる。
――「多文化主義」とは何でしょうか。
スウェーデンでは、国外生まれが20%、先祖が外国から来た人を含めると25~30%を占め、その意味で多文化の国です。スウェーデンの多文化共生主義の政策とは、彼らを社会に適応させること、仕事や住む家を見つけ、スウェーデン人と交流できるよう促すことです。
――移民それぞれが持つ文化を尊重することかと思っていました。
もちろん、文化継承や母語教育に対する支援にも同時に取り組みます。彼らの文化や宗教を無理に変えることはできません。ただ、暮らしていると人は自然と変わります。私自身オランダで生まれましたが、今はスウェーデン人のように振る舞いますから。
――スウェーデンでも「多文化主義」への批判が強まっているように思えます。移民規制を求める声も耳にしました。
ただ、世論では移民に極めて好意的な人が20~25%、批判的な人が20%を占めます。両極化とも受け取れますが、残りの大多数は現状を容認しています。
どの国でもそうですが、スウェーデン政府は移民の流入を野放しにしたわけではなく、常に制御してきました。労働市場の要請と移民の流入は、バランスが取れていたのです。2015年の難民危機は、確かに少し数が多かったのですが、初めての経験ではありません。1990年代にも旧ユーゴスラビアから多数の難民を受け入れました。
――社会への適応はうまくいっていますか。犯罪多発の指摘もありますが。
移民の99%はスウェーデン社会で普通に暮らし、多くの物事を学び、チャンスをつかんでいます。中には途中で脱落し、犯罪に走る人もいる。ただ、それはどんな国でも、どんな社会でも起きること。理由も単純ではなく、学校の問題、住宅事情、警察官の不足など複雑な要素も影響しています。犯罪増加は、移民よりもむしろ、スウェーデン社会の構造的問題ととらえるべきでしょう。