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外国人に「地方創生」ビザを 「移民大国」日本・私の提言①

World Now 更新日: 公開日:
日本国際交流センター執行理事の毛受敏浩さん。「少しずつ流れ落ちていたように見えた砂(人口)が、少なくなると一気に流れ落ちる。こうなると、その地域は手の打ちようがなくなる」

【気がつけば「移民大国」 連続インタビュー】

#1毛受敏浩氏(日本国際交流センター執行理事) 外国人に「地方創生」ビザを(12月16日)

#2萩原誠司氏(岡山県美作市長) 多文化共生よりも同化を(12月17日)

#3ジェームズ・ライニー氏(コーラルキャピタルCEO) 多様性がイノベーションを生む(12月18日)

#4ロバート・フェルドマン氏(モルガン・スタンレーMUFG証券) 永住、定住の門戸開いて(12月19日)

#5鳥井一平氏(NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」代表) 技能実習制度の虚構(12月20日)

#6ラタナーヤカ・ピヤダーサ氏(佐賀大学名誉教授) 実習生制度はアジアの貧困対策になる(12月21日)

#7ピーター・ベヴェランダー氏(スウェーデン・マルメ大学移民研究所所長) 犯罪増は移民より社会の問題(12月22日)

#8エイドリアン・ファヴェル氏(英リーズ大学教授) 移民規制、でも経済を支えているのは誰か(12月23日)

めんじゅ・としひろ 1954年生まれ。兵庫県庁を経て、88年から日本国際交流センター。国際交流の実務家。人口減の問題や外国人定住政策を研究。新著に「移民が導く日本の未来」。

――日本在住の外国人と日本社会の間で相互理解が進んでいないように見えます。なぜでしょう。

定住前提の受け入れ制度ではないことが根本的な理由だ。1980年代後半のバブル期に人手不足が深刻になり、穴埋めに多数の日系ブラジル人を「定住者」として受け入れた。その後、急速な少子高齢化を背景に構造的な人手不足の局面に入ったのに、「その場しのぎ」を続け、実態は期間限定の出稼ぎ労働者である技能実習生と、本来は労働目的でない留学生を多く受け入れている。

受け入れ側の日本人も「一時的な滞在者」との認識から抜け出せない。外国人は日本語をあまり覚えず、コミュニケーション・ギャップが生じたまま定住化が進んだ。

――それによって、日本社会にどんな問題が生じていますか。

いまは技能実習生の急増でしのいでいるが、日本産業の劣化を招くと言える。イノベーションによる成長を目指さなくても、低賃金の実習生をフル活用して延命できる。企業には短期的には都合がよくても一定期間後にいなくなるので、国内で熟練労働者が急速に減っている。給料の多くを母国に仕送りし、「消費者」としても期待できない。

小松菜の収穫をする中国人の技能実習生=茨城県鉾田市(本文とは関係ありません)

――外国人を受け入れないという選択肢はありませんか。

日本の人口減は強烈で、2053年には1億人を割るとの予測もある。高齢者が増え、若年層が細り、年齢構成も非常にアンバランスだ。近年の自然災害では犠牲者の多くが高齢者。「お年寄り同士、助け合いましょう」と言われても無理だ。「誰が年金制度を支えるのか」という問題もある。外国人の可能性を引き出し、支えの一部になってもらえれば、ウィンウィンの関係が築ける。

――海外には、移民受け入れが社会の分断や対立の芽となった例があります。

欧州の国々は旧植民地のほか、南欧やトルコなどからも多数の移民労働者を受け入れ、「並行社会」と呼ばれる現象が起きた。地域社会から疎外された移民の中に分断されたコミュニティーが生まれ、他のコミュニティーと並んで存在する状態だ。外からは何が起きているのか見えなくなった。

いまや移民大国のドイツも、50年代末から70年代初めごろは外国人労働者を一時的に受け入れた。定住が前提でなかったが、人手不足の中で労働者が住み着き、家族の呼び寄せも認められた。それでもドイツ政府は「移民ではない」との立場を崩さず、市民も同じ仲間と見なさなかったため、各地にトルコ系のゲットー(限られた居住区)が生まれた。

仏南西部アレスで8日に開かれた難民・移民の受け入れに反対する集会。1週間前には同じ場所で受け入れ賛成派が集会を開いた=イザベル・コントレーラス撮影

――では、どのような受け入れ策が必要でしょうか。

ドイツも韓国も、定住外国人に何百時間もの自国の言葉や文化の教育をほぼ無償で提供する方針になった。カナダやオーストラリアでは州政府が人材確保のために独自政策を導入。その地域での一定期間の定住を義務づけている。日本でも地域主体の「地方創生ビザ」を検討してはどうか。

日本で欧州のような社会対立が起きていないのは、一部の自治体やNPOが彼らに寄り添い支援してきたから。国と自治体が責任を持って共生の環境を整備し、外国人にも積極的な社会参画を求める。私たち自身も、地域でよく見かける外国人に挨拶したりして、交流の一歩を踏み出す。そうした包括的な『移民政策』がないと、移民問題があらわになるだろう。