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日本に住む外国人に「いい日本人になって」市長の真意 「移民大国」日本・私の提言②

World Now
萩原誠司・美作市長

【気がつけば「移民大国」 連続インタビュー】

#1毛受敏浩氏(日本国際交流センター執行理事) 外国人に「地方創生」ビザを(12月16日)

#2荻原誠司氏(岡山県美作市長) 多文化共生よりも同化を(12月17日)

#3ジェームズ・ライニー氏(コーラルキャピタルCEO) 多様性がイノベーションを生む(12月18日)

#4ロバート・フェルドマン氏(モルガン・スタンレーMUFG証券) 永住、定住の門戸開いて(12月19日)

#5鳥井一平氏(NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」代表) 技能実習制度の虚構(12月20日)

#6ラタナーヤカ・ピヤダーサ氏(佐賀大学名誉教授) 実習生制度はアジアの貧困対策になる(12月21日)

#7ピーター・ベヴェランダー氏(スウェーデン・マルメ大学移民研究所所長) 犯罪増は移民より社会の問題(12月22日)

#8エイドリアン・ファヴェル氏(英リーズ大学教授) 移民規制、でも経済を支えているのは誰か(12月23日)

――市内に住むベトナム人の数はこの5年間で実習生を中心に4倍近くの247人に増えています。なぜ技能実習生を積極的に受け入れるようになったのですか。

日本全体で既に言えることですが、我々の社会が必要としているサービスや労働力をちゃんと維持するためには、どうしても外国人の方々がしばらくは助けに来てくれないと無理なんです。この街も消滅可能性自治体ですから。6年前に市長に就任したときに調査して、友好的なところからの(人の)流入はとても大切だと考えました。

――なぜベトナムに照準を絞ったのですか。

事業者に聞くと、ベトナム人の評判がとてもいい。フレンドリーで真面目で器用。いろんな意味で期待する声が強かった。そもそも全く国際施策がなかったようなところから始めました。我々が考える必要があったのは、どこから人を政策的に誘導すれば、社会にもたらすネガティブなインパクトを下げることができるのかということ。国別で言うと、ベトナムの方にたくさん来てもらうほうが我々の社会へのインパクトが少ない、むしろ良好なインパクトもあるだろう、と深掘りしていくことにしました。

市の職員として実習生を支援するベトナム人のサ・ティ・ジャンさん

――どのように受け入れを進めてきましたか。

まずベトナム中部のダナン大学と関係を築き、卒業生を市の嘱託職員として採用しました。その職員がベトナム人の生活に対応したり、ゴミ袋の表示にベトナム語を入れたりして、住みやすい環境を作ってきました。

――ベトナム政府が贈った建国の父、ホー・チ・ミン像を市の施設に設置した際には、反発も出ました。

どの地域でも、ネガティブインパクトを恐れる方は当然いる。根底には外国に対する若干の恐れがあるんだろうと思います。それでも、大半の人は受け入れを歓迎しているんだ、ということをポジティブに示したのが、あの姿なんです。受け入れる側の心意気をしっかり示さなきゃいけない。

ベトナム政府から寄贈されたホー・チ・ミン初代国家主席の銅像

――そこまでして外国人受け入れを進めていき、どんな将来像を描いていますか。

外国人の移住や定住については、「多文化共生」と「assimilation(同化)」という考え方が対立しています。私はassimilationという方式をとろうと考えています。多文化型は、外国人が市内のあるところに集住して、それと折り合いをつけていくやり方。同化型は、日本の社会の中に埋まりこんでいってもらう。

――「同化」というのは、戦前の創氏改名といった同化政策とは違うのですか。

全く違います。私が言う「同化型」とは、強制的に何かを押しつけるのではなく、社会の一員としてより深く受け入れて、安心して住んでもらうようにしていくことです。いまヨーロッパで移民問題が起きる根本は同化していないからじゃないか、と言われている。日本社会の安定性から言えば、日本語をしっかり獲得してもらい、日本の考え方に賛同される外国の方を受け入れ、次第に日本人化していくことが必要だと思います。

――それで「美作人になってほしい」と。

重要なことは、日本文化を守っていくこと。それが我々の責務だと思います。それを担ってくれるのが外国出身者でも全然構わない。考えてみれば、今から数百年前には、この地に誰もいなかったわけで、すべての人はどこかから流れてきた。

ふるさと祭りではベトナム人技能実習生らがベトナム料理などを販売した=2018年(美作市提供)

――ベトナムの人はどう思うでしょうか。

まだ「いい美作人になって」とまでは言えていない。今の技能実習制度では原則5年で帰るため、限界がある。将来的には、しっかりとしたワーキングビザで日本に来て勤め上げながら家族も呼べるようにしたり、管理職への道も開かれたりするような、いろんな選択肢がある制度にしたほうがいい。そうなれば、地域のお祭りや伝統芸能を守れるようになっていく。

――国籍についてはどう考えますか。

国籍は本人の選択の自由なので、ご本人が日本人に変えたいと思うならそうすればいいし、そうでなければ、そうしなければいい。

コロナ禍でマスク不足に陥ったときにベトナム・イエンバイ省から贈られたマスクを手にする美作市の萩原誠司市長=2020年10月

――どのぐらいの規模の外国人受け入れを考えていますか。

ゆくゆくは人口の1割ぐらい。美作市では3千人ぐらい入ってきて頂けると、とてもいいコミュニティーになると思います。まだそこまではいっていませんが。

日本語教室で学ぶベトナム人の技能実習生たち。美作市が無料で開いている=2020年10月、岡山県美作市

――理想通り行くでしょうか。

重要なのは、結局日本は世界の人と共存共栄していかなければならず、今から世代をかけて準備していく必要があるということです。我々の「うちなる国際化」をやっておかないと、子々孫々、困ってくる。今のままで本当に日本はもつのか。「同化型」の政策を重んじていくときが必ずくると思います。