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NiziU、日韓で認知度に大きなギャップのわけ

現地発 韓国エンタメ事情
タワーレコード渋谷店には12月、正式にデビューしたNiziUの写真が大きく掲げられた

日本で今月正式にデビューし、年末の紅白歌合戦にも出場が決まっているガールズグループ「NiziU」。プレデビュー曲「Make you happy」のミュージックビデオが再生回数1億8千万回を突破するなど、デビュー前から日本では爆発的な人気となっていた。

ところで、私は7月末にいったん韓国から日本へ戻るまでNiziUの人気っぷりに気付いていなかった。日本に戻るとどこに行ってもNiziUやNiziUを生んだ「Nizi Project」のプロデューサー、J.Y.Parkの話でもちきりで、「韓国でも人気?」とたびたび聞かれた。J.Y.Parkは歌手としてもJYPエンターテインメント設立者としても有名で、韓国ではパク・チニョンと呼ばれる。10~11月に韓国にいた間に周りの韓国人に聞いてみたが、NiziUについては知ってる人もいるが知らない人も多いという感じで、同じく日本で人気のガールズグループTWICE、IZ*ONEに比べると知名度は低い。日韓のこのギャップの大きさはなんだろう?と考えてみた。

TWICE、IZ*ONEは、日本でも韓国でもトップクラスの人気を誇る。だが、実はガールズグループで世界的に人気なのは、BLACKPINKだ。日本でTWICE、IZ*ONE、NiziUが特に人気なのは、日本人メンバーがいることと、オーディション番組を通してデビューしたことが共通している。Nizi Projectには1万人を超す応募があったというから、TWICEやIZ*ONEがオーディションを通してデビューし、アイドルとして花開いていく姿を見ながら「私も」と夢を抱いた応募者も多かったのではと想像する。

一方、TWICEやIZ*ONEを生んだオーディション番組は韓国のテレビでも放送されたが、Nizi Projectは放送されなかったという違いがある。日韓の認知度のギャップの一番大きな要因だろう。IZ*ONEを生んだオーディション番組「PRODUCE48」は私も韓国で見ていたが、当時かなり話題になっていて、参加していたAKB48グループのメンバーも韓国でファンがたくさんついていた。ソウルの地下鉄の駅構内にファンがお金を出し合った応援の看板広告も出るなど、盛り上がり具合は肌で感じられた。

ソウルの地下鉄の駅構内に登場した矢吹奈子(IZ*ONE)を応援する看板広告=2018年8月

では、なぜNizi Projectは韓国で放送されなかったのか? 理由はいくつか考えられるが、一つは、残念なことにIZ*ONEを生んだオーディション番組「PRODUCE」シリーズで不正が見つかったことだ。デビューメンバーを決める投票結果を番組プロデューサーが操作していたという問題で、刑事事件に発展した。2審のソウル高裁は11月、プロデューサーに1審と同じ懲役2年を宣告し、被害を受けた練習生らの名簿を公表した。被害を受けた、というのは本来ならデビューできたはずなのに、投票結果を操作されたためデビューメンバーから外されたということだ。取り返しのつかない被害だ。シーズン1~4すべてで被害者が出ている。「PRODUCE48」はシーズン3にあたる。

この事態が発覚したのはシーズン4が終わった2019年で、その後韓国ではアイドルのオーディション番組は下火になっている。代わりにトロットと呼ばれる韓国演歌のオーディション番組が人気だ。

また、2019年7月に日本政府が韓国への輸出規制を発表して以降、それに反発して韓国で日本製品不買運動が広まった。アサヒビールやユニクロなどがその代表的なターゲットだったが、例えば日本映画の上映が難しくなるなど、影響は文化にも及んだ。日本への旅行も激減した。そのまま新型コロナウイルス感染症の流行が始まり、日韓の行き来が事実上途絶えた、という状態だ。日本で「愛の不時着」をきっかけに韓流ブームが盛り上がっている一方で、韓国では日本文化が歓迎される雰囲気ではないのも事実だ。

とは言え、一部で報じられたような、NiziUに対するバッシングや、反日感情のために韓国デビューが白紙になったというようなことは聞いていないし、ニュースをたどっても出てこない。むしろ日本での人気ぶりについては好意的に報じられている。

ただ、そもそもNiziUは韓国市場を目指しているとは思えない。メンバーが日本人でK-POP風というのは、日本では受けても韓国ではどうだろうか? 例えばAKB48グループはインドネシアやタイ、フィリピンなどでもグループが作られているが、日本市場を目指しているわけではないだろう。

日本の10代の女の子たちの間では「#韓国っぽ」というハッシュタグがはやっているという。韓国にありそうなおしゃれカフェ、K-POPアイドル風のメイクなどの写真を「#韓国っぽ」というハッシュタグをつけてSNSにアップするのだ。韓国っぽいのはかわいい、という発想で、「っぽい」というのは本当は韓国のものではないけど、というニュアンスも含まれる。NiziUはメンバーは日本人だが、メイクやヘアスタイル、ファッション、ダンスなど見た目はK-POPアイドルだ。日本語の歌詞まで韓国人が歌っているように聴こえる。その、日本人だけどもK-POPアイドルっぽいというのは、まさに日本の10代がかわいいと思う「#韓国っぽ」の世界なんだと思う。

韓国ではオーディションの様子も伝わらず、まだ韓国デビューしてもいないNiziUについて知らない人が多いのは当然だ。それでも日本での人気は徐々に伝わっていて、関心も少しずつ高まっているようだ。日韓コラボの象徴的存在として、虹のように明るい橋渡しとなればと願う。