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オンライン教育と言われてもネットがない コロナに見舞われた途上国の苦しみ

World Now
ジョセフ・ピーリーさん

新型コロナの中、世界の人々はどう生き、何を考えたのか。世界各地からの証言です。

  1. <ブラジルから>「保障も支援も理解もない」コロナ感染者急増のブラジルから、最前線の医師の訴え
  2. <米国から>「感染したかも」病院で受けたコロナの検査、相手は防護服 残った複雑な思い
  3. <フランスから>オンラインでは想像力も制約される 新型コロナで実感、何げない対話の価値
  4. <イタリアから>コロナと子供 爆発的な感染拡大のイタリアで、母として保育士として感じたこと
  5. <中国から>SARSの体験があったから自由の制限を我慢できた ある北京市民の実感
  6. <台湾から>「不便」と言えば改善される コロナ対策で世界が注目、台湾は自信を取り戻した
  7. <フィリピンから>検問でID、罰則に腕立て伏せも…地区ごとに細かなルール、フィリピンの感染対策
  8. <ベトナムから>外出制限の暮らしの中で、大人も子供も身につけた知恵がある
  9. <ザンビアから>オンライン教育と言われてもネットがない コロナに見舞われた途上国の苦しみ
  10. <フランスから>働きながら子供2人のオンライン授業を支える母の苦労 でもいいこともあった

――周りの感染状況はどうですか。

私が住むチパタでは、今のところ感染者や死亡者は確認されていません。ザンビア全体では、これまで139人が感染し、3人の死亡者が報告されています。(5月初旬時点)

――生活への影響はありますか。

感染拡大で個々の生活様式は、大きく変わってきています。私個人のことで言えば、元々外に出かけることが好きで、自宅の外で働いたり過ごしたりすることが多かったのですが、今は感染を防ぐために、家にいることを余儀なくされています。社会的なつながりが大きく減って、家で一日中テレビを見て過ごすことが唯一の娯楽となっている状態です。全ての人に共通することですが、移動の自由が制限されています。

■営業規制、破れば店舗没収も

――仕事には影響が出ていますか。

コロナ危機の前は、毎日病院に通って、午前8時から午後5時まで働いていました。いまは短縮されて、毎日1人2時間勤務のシフト制になっています。急に慣れない勤務になり困惑しています。

ジョセフ・ピーリーさん

世界の多くの国で経済活動が停止して失業率が増加していると聞きますが、ザンビアも同じです。仕事が減り、失業する人が増えています。ザンビアのような発展途上国では、前代未聞の規模で貧困が広がることが懸念されています。

チパタに住んでいる大半の人は、正式に会社などに就職していません。自営や個人で何らかの仕事をしている人がほとんどです。新型コロナの影響で、自宅待機を余儀なくされている中で、仕事がなくなり、貧困の度合いが増しています。

――外出はどう制限されていますか。

ザンビアではいまのところ、それほど厳しく制限されていません。政府が定めた規則があり、それを破ると罰せられることがあります。例えば、バーやナイトクラブなどは休業することになっていますが、規則を破れば逮捕されて店を経営する資格を失い、店舗を没収されます。また結婚式や教会での礼拝、葬式など、大規模な社会的な集まりは自粛しなければなりません。50人以下の少人数での単発的な集まりだけは許可されています。規則を破ると罰せられ、最近では数人の牧師が逮捕されました。

マスク着用と手洗いも、多くの公共の場や銀行で義務化されています。従わない場合、出入りが禁止になります。すべての公共の場所で、人との距離を1メートル以上離れるよう要請されています。

新型コロナウイルスの感染拡大で外出制限や学校の休校などの影響が出ているザンビア・チパタ市の様子

■子どもに行き場のないストレス

――学校はどうですか。

公立、私立学校、そして大学などすべての学校は、初めての感染者が発表された2日後の3月20日から休校になっています。いつまで休校が続くかは未定です(※後に6月1日から一部のみ授業を再開する方針が発表された)。政府は、テレビやインターネットを利用した学習の指示を出しましたが、現状としては、ほとんどの子どもたちがネットにアクセスできる環境にはなく、自宅学習を進めることができません。結局、政府は何の対処もしていません。公立学校では、デジタル機器を使った学習教材を提供できるような設備は整っていません。私立学校の中には、アプリを利用して課題が送られてきて、自宅学習ができる家庭もあります。ただ、このように恵まれている子は、かなり裕福な家庭のほんの一握りです。

――子どもたちはどのように過ごしているのですか。

ほとんどの子どもはテレビを見て過ごしたり、家の手伝いをして過ごしています。テレビやネットなどの通信手段を持たない多くの子どもたちは、学校に行けず、行き場のないストレスを抱えています。特に私は精神科病院に勤務しているからかもしれませんが、若者の多量のアルコールや違法ドラッグの摂取を目にします。退屈によるストレスや学校が休校になってることも影響していると思います。

――ピーリーさんはこれまで孤児や片親、親が無職といった事情で学校に通えない子どもたちの支援に取り組んできました。そうした子どもたちはどんな状況におかれていますか。

私が支援している孤児や貧困に苦しむ子どもたちは、特に新型コロナウイルスの影響を大きく受けています。コロナ以前から、すでに生活が極めて苦しい状態にある上に、いまは自宅待機を迫られているので訪問支援ができず、孤立してしまっています。今後、多くの子どもたちが、学校に戻ってくることができず、教育をあきらめなければならなくなることが予想されます。

新型コロナウイルスの感染拡大で外出制限や学校の休校などの影響が出ているザンビア・チパタ市の様子

■全域で休校「異常なこと」

――数年前にも、コレラの蔓延で学校が休校になったと聞きました。感染症で休校になることはよくあることですか。

コレラはザンビアのあちこちで時々、感染が見られます。チパタも長年、コレラと戦ってきました。しかし、学校の休校などは、コレラの感染が危機的になった地域に限定して宣言されていました。今回のように、ザンビア全体の学校が、感染症の蔓延で休校を宣言されるのは異常なことです。新型コロナの感染は今までの感染症とは違って、世界中のすべての地域に影響を及ぼし、経済活動の停滞を招いており、かなり深刻な状況です。

――政府は、どのような支援策をとっていますか。

現在のところ、政府が行っている唯一の支援は、新型コロナについて地域ごとの状況と感染予防法の情報を提供していることだけです。今後、どのような支援を政府がしてくれるか、見守っている状態です。現金給付などの支援は、ありません。

――一部の国では、最低生活を保障するベーシックインカムの導入が議論されていますが、どう考えますか。

新型コロナの影響に対して政府がそれぞれの世帯に現金を支援するのは素晴らしい試みだと思います。特に、政府は貧困家庭に対しては、食料などの支援を新型コロナが終息するまで行うべきだと思います。しかし、残念ながらザンビアではそのような方針は示されていません。