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働きながら子供2人のオンライン授業を支える母の苦労 でもいいこともあった

LifeStyle 更新日: 公開日:
フランスで、オンラインで学校から送られる教材を使って1日4、5時間、自宅で学習を続けるアーサー君

■仕事すべて取りやめ、一時無収入に

――周囲の感染状況はどうですか(取材は5月上旬)。

友人夫婦とその13歳の娘が感染しました。ほかにも、友人や顧客、その家族なども感染しました。一時は呼吸困難になるなど、大変でした。

――生活にはどのような影響が出ていますか。

私は6年前から産業界や建設業などでの事故防止の研修教材を自分で販売する仕事をしています。しかし、コロナの感染拡大で多くの企業が活動を中止し、顧客を訪問して営業することもできなくなりました。3月~6月の研修やイベントはすべて取りやめとなって、仕事に大きな影響が出ています。一時的に収入が完全に入らなくなってしまいました。

外出は制限され、食料の買いだしや医療機関にかかるといった理由があるときだけ認められています。その際も、外出理由を説明する文書を携帯しなければなりません。正当な理由がなかったり、時間を過ぎたりすると、1人135ユーロ(約1万6000円)の罰金を科されます。私もスーパーに行った際、2度、警察官から証明書の提示を求められました。

外出規制は、ウイルスの感染が少ない地域では5月11日から緩和されます。ただ100キロ以上の移動は原則できません。

ジュリエット・シャゼイさん

■子供が直面する課題、よく理解できた

――家庭での影響はどうですか。

私はシングルで、2人の息子(11歳と14歳)を育てています。私立、公立を問わず3月16日以降、すべての学校が休校となりました。最初の1週間はとても混乱しました。学校の教師たちがオンライン教育のトレーニングを受けていなかったからです。ただ、時間がたつにつれ、やり方が変化していくのを目の当たりにしました。これは、この危機における大きな利点の一つだと思います。

いまは、先生が電子プラットホームを使って、週ごとの課題を送ってきます。このプラットホームは私たち保護者らが個人でアクセスでき、時間割や宿題、試験の結果などを見ることができるものです。教材は、先生と双方向でやりとりできるものではありませんが、課題や宿題が送られてきて、それを印刷して、子どもたちが使っています。体育や音楽の教材もあります。子どもたちは1日4、5時間の学習を家で続けています。

――子どもたちの様子はどうですか。

最初は学校が休みになって、大喜び!でも、2カ月もたつと、友だちに会えなくて寂しがっています。今では、暇さえあれば、ずっとSNSなどでやりとりしています。

――親の負担は大きいのでは。

仕事を持ちながら、子どもたちの宿題のために、これだけ多くの時間を費やすのはとても大変なことです。ただ、ある意味では、子どもたちと一緒に話したり遊んだりする時間が増えたので、良かったと思います。学校で彼らが何を難しいと感じているのかをより理解することができました。一緒に多くの時間を過ごすことができ、学習障害がある末っ子のことを、もっと助けられるようになりました。普段は時間がなくて話せないようなこともたくさん話せました。彼らが何を考え、何に興味があるのか知ることができました。

私たちはコロナ危機を経験したことで、オンラインでの新しいスキルを身につけ、新しい実践方法を見つけて、友人や愛する人たちと、以前よりもコミュニケーションをとることができるようになったと言えると思います。

――学校の再開は。

次男の学校は5月18日から一部、再開します。ただ、1クラスを以前の半分の15人に制限して、全員マスクの着用が義務づけられます。教室での飲食も禁止となります。

■生産と消費の行動変えるべき

――コロナ禍を経験したことで、社会は変化していくと思いますか。

人々の交流や循環が活発化し、貿易に依存したことで、パンデミックは常に存在してきました。でも、私は国境を閉じることが有益だとは思いません。私たちは、より良い防御と感染症への備えをして、生産と消費の行動を変えることで、パンデミックに備える必要があると思います。

病院は数年前から、財政的、物的、人的資源を求めていました。でも、私たちは、ウイルスの流行に対処するための十分なマスクも人工呼吸器も医療スタッフも持っていませんでした。危機が始まって以来、マスクもなく、私たちは自分たちで作らなければなりませんでした。私にはなぜそうなったのか、理解できません。

ジュリエットさんの次男アーサー君が手作りしたマスク
マスクを手作りするのに使った材料

――「生産と消費の行動を変える」とはどういうことですか。

この危機は、私たちが環境を守るために行動しなければならないことを示していると思います。パンデミックで経済活動が止まって以降、私は環境の変化を目の当たりにしてきました。騒音や大気汚染が減り、庭にはもう見かけなくなっていたミツバチや珍しい鳥まで飛んでくるようになりました。動物が戻ってきて、川や海岸線の水がきれいになったということは、輸送や産業に伴う排出が環境にかなりの影響を与えているということです。

ジュリエット・シャゼイさんの自宅前の景色。「人や車の動きがなくなり、見たこともない鳥が飛んでくるようになった」

私たちはより環境にやさしい「グリーン輸送」を進めていかなければいけない。環境に影響を与える物質を排出する産業に対しては、もっと厳しく対処すべきです。私は、オーガニックで地元産のものを買うこと、環境汚染を引き起こす製品やパッケージ、使い捨て製品を排除するといった消費習慣に変えていきたいと思っています。可能であれば飛行機に乗ることも避けたい。私たちは市民として、特定の製品を買わず、よりクリーンな製品を求め、不必要なものを消費しない、という力を持っています。変えることは可能だと思います。