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ロックダウンで変わった南アフリカの日常 軍も出動して治安維持

アフリカを旅する
都市封鎖(ロックダウン)が始まった3月27日、ビジネス街のサントン地区の人通りはまばらだった=南アフリカのヨハネスブルク、石原孝撮影

7日時点で1749人の感染が確認された南アフリカのラマポーザ大統領は先月23日、都市封鎖の実施を発表。26日深夜から食料品の購入や医療機関の受診など一部を除いて21日間にわたって外出が禁止になり、企業の多くは休業かテレワークに。散歩やジョギングも禁止され、空港も閉鎖されました。お酒の購入も禁じられたため、封鎖前日には大勢の人が酒屋に詰めかけました。

都市封鎖(ロックダウン)が始まる直前の3月26日、お酒を買うために列に並ぶ男性客ら=南アフリカのヨハネスブルク、石原孝撮影

以前はマスクをする人を見たこともなかったのに、ヨハネスブルクのビジネス街サントンでは、封鎖後にマスク姿の人が増加。車通りは減り、交差点に立っていた物乞いの人もほとんどが姿を消しました。

ショッピングモールではスーパーマーケットなどの食料品店や薬局、銀行以外は閉店し、お客もまばら。封鎖開始から2週間近くたち、客足はいくぶんか増えていますが、 多くの店では出入り口に消毒液を客にかける専用のスタッフを配置。入店する度に消毒されるため、私の手は荒れたままです。人数制限をかけるスーパーもあり、陳列されている商品は通常の8割ほどといったところです。

都市封鎖(ロックダウン)が始まった3月27日、ビジネス街のサントン地区のショッピングセンターは客も少なく、がらんとしていた=南アフリカのヨハネスブルク、石原孝撮影

会計前には距離を取って並ぶように指示され、飛沫感染を防ぐために透明の板をレジの前に設置する店も。普段は「How are you?(元気ですか?)」と明るく聞いてくれる店員も小声になり、私が買い物を済ませると消毒液を念入りに自分の手にかけていました。

封鎖後、地元政府は2万人以上の軍兵士や警察を各地に配置し、治安の維持に努めています。朝日新聞の支局があるヨハネスブルクのリボニア地区周辺では軍兵士の姿を見かけず、警察車両もほとんどありません。ただ、そこから7キロほど離れたアレクサンドラ地区では、銃を持った軍兵士たちが住民に外出をしないように呼びかけていました。現地の知人によれば、人口の多い旧黒人居住区のソウェトでは、周辺国から来た移民たちが封鎖前に母国に戻るなどして、人通りが減ったようです。

アパルトヘイト(人種隔離)時代に設けられたこうした旧黒人居住区には、失業者や大家族も多く、自宅に水道が通っていない地域もあります。貯金がほとんどなく、食料を買いだめしたくてもできない人もいます。学校が休校になった今、子どもたちが1日中いる自宅には、家族の誰かが感染しても隔離できるようなスペースもありません。

南アフリカのヨハネスブルクにある旧黒人居住区ソウェト。モザンビークから移住してきた男性の自宅には水道がなく、すきま風が吹いていた=2018年6月12日、石原孝撮影

封鎖に対する不満を持つ人もおり、地元報道によれば、外出禁止措置に違反したなどとして、封鎖開始後に約1万7千人が拘束されたようです。結婚式を挙げたとして、新郎新婦や牧師が警察に摘発される事案もありました。中には、外出していた群衆に向かって警察がゴム弾を発砲するなど、権力乱用とも言える治安部隊の行為も出ています。

元々国内の失業率は30%近くに上り、都市封鎖によってさらに37万から百万もの雇用が失われるとの試算が出ています。中央銀行は「1600もの企業が債務超過になる恐れがある」としています。現地の通貨ランドは、私が赴任した2017年8月に1ドル=13ランド台だったのが、今月8日には1ドル=18ランド台までランド安ドル高が進んでおり、仮に都市封鎖が終わっても先行きは不透明です。

都市封鎖(ロックダウン)が始まった3月27日、普段は混雑しているショッピングセンターのレストランは閉店し、人影は無かった=南アフリカ・ヨハネスブルクのサントン地区、石原孝撮影

一方で、地元警察は5日、都市封鎖期間中の殺人事件が前年比で326件から94件に急減したと発表しました。日本人が被害に遭いやすいカージャックや強盗など複数犯による犯行も、8853件から2098件に減ったといいます。家庭内暴力が増えたとの指摘もありますが、治安改善が長年の課題だった政府にとっては、都市封鎖の効果として発表したくなる気持ちもうなずけます。

私はと言うと、3月16日から自宅勤務を始め、封鎖前に消毒液や自宅用のプリンターのインクを購入。予定していた対面取材は全て延期し、日中は電話取材やオンライン会見に参加しています。休日はアジア食材店に売っているアイスを食べてささやかな幸せをかみしめ、体調管理のために早めに就寝しています。感染流行前には、月の半分は別の国に出張に行っていたため、家族から「こんなに家にいるのは初めてね」と、突っ込まれています。