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新型コロナで激変したノルウェー留学 現地に残った大学生たちはいま

ノルウェー通信
普段は賑やかなスタヴァンゲルの街 撮影:松⽊蓮/Photo: Ren Matsuki

3月、新型コロナでノルウェー社会が大きく変わり始めた。政府の方針で、教育機関は閉鎖が決まり、オンライン授業となり、試験は中止・延長されている。

現地に住むノルウェー人の学生たちは、アルバイトで生活費をためていたが、急な解雇を告げられるケースも相次いでいる。学業の傍ら仕事をしていた人は、十分な補償が得られるわけではないため、政府に対策案の見直しを迫る動きが学生たちの間では強かった。

一方、ノルウェーに留学中の学生たちにも、別の不安が襲っていた。現地の言葉はノルウェー語だが、英語で生活をしている人も多い。毎日変わる情報の渦についていけず、留学生活が中断されるのではないか、奨学金はどうなるか、日本に帰国後の不安など、心配事は多い。

北欧諸国では国境がほぼ閉鎖状態となり、飛行機の便数はどんどんと減り始めた。留学生活を中断し、急いで帰国した人たちもいる。

そんな中、今でもノルウェーに住み続け、学業を続けている日本人もいる。
現在の暮らしはどうなっているのか、メールで聞いてみた。

ノルウェーからデンマークに転入できるか不安

松⽊ 蓮(まつき れん)さん(24)
スタヴァンゲル⼤学に正規⼊学

学業への影響
3⽉12⽇に政府より出された⽅針で、授業が完全停⽌になりました。現在はオンライン授業が週1程度であります。
今年の秋学期よりデンマークのオールボー⼤学へ転入する予定ですが、新型コロナの問題が夏までに終息するのかが⾒えず、ビザ申請などの諸⼿続きの情報提供が現状滞っています。

生活への影響
街に出ても閉まっているお店が多いです。図書館などの公共施設も閉鎖中なので、原則⾃宅で過ごす毎⽇です。
新型コロナが流⾏りだしてから同じ寮に住む人の態度が⼀変したように感じます。感染拡⼤を防ぐために⼈との接触をできるだけ避けているのがあからさまに感じられます。海外での⼀⼈暮らしなので、不安に感じる⼈は多いです。

「1 番の⼼配は、いつ普段の⽣活に戻れるのかです。思うように⼈と会えないので、少しスト レスも感じます」 撮影:松⽊蓮/Photo: Ren Matsuki

英語を話すことが目的だったのに、人に会えない

MSさん(匿名希望)
ベルゲン大学に交換留学

学業への影響
3月の中旬に大学で行われる講義が中止され、オンライン授業に。英語を話す機会を求めての留学だったのに、人と会話できない状況に困っています。

生活への影響
一番大変だったのは、奨学金が止まってしまったことでした。ノルウェーの海外渡航安全レベルが2になったタイミングから日本学生支援機構(JASSO)からの奨学金の支給が止まってしまい、生活が成り立たなくなりました。そのため留学を中断し帰国することなどを検討しながらも、署名活動などで政府に対応を変えてもらうように訴え続けました。そのおかげで支給が再開することとなり、いまもノルウェーでなんとか生活できています。
自分はまだここに残り続けたいので、強制的に帰らされることはなんとしても避けたいと考えています。

幼稚園の休園で、学業をしながらの育児が大変

「家庭内で娘とできることも限られており、娘もストレスが溜まっているようで心苦しいです」と話すひろえさん Photo: Hiroe RJ

ひろえさん(28)
オスロ大学教育学部3年(正規)

学業への影響
全授業がオンラインになり、卒業論文の個別指導も電話・スカイプ対応になりました。準備していた大学生活最後の発表もセミナーも中止になってしまい、不完全燃焼です。

生活への影響
幼稚園(ノルウェーでは0歳から入園できる)に通っているはずだった娘がいるのですが、入園日から休園になってしまいました。
娘が幼稚園で過ごすことを想定して授業を取っていたので、学業が全くはかどらず、就職活動をどうしようか頭を悩ませています。

今の心配
卒業延期の可能性やコロナの影響で失業者が急増したことにより就職先が見つからない可能性を心配しております。北欧では過ごしやすい春・夏の生活を楽しめないまま、また暗くて寒くて長い冬を迎えるのだと思うと心が重くなります。

学業が中断となり、友人とも会いにくくなった

トロムソ大学に通う森さんの寮の共同キッチン Photo: Marina Mori

森 麻里永(もり まりな)さん(21)
東京外国語大学国際社会学部アフリカ地域研究3年
トロムソ大学に交換留学

学業への影響
ノルウェー語の授業以外は履修科目が既に完了していたのですが、現地で予定していたフィールドワークの中断を余儀なくされました。

森さんは寮のキッチンで映画鑑賞をすることも増えた Photo: Marina Mori

生活への影響
帰国・帰省等でただでさえ近くにいる友人が減ってしまったのに、残った友人とも社会的距離のために会いにくくなってしまいました。
スキーなどのアウトドア用品を無料で貸し出してくれる施設が閉鎖され、リフレッシュするために自然の中へ繰り出そうとしても歩くことくらいしかできていません。定期的に行っていた社交イベントが中止されてしまったことも、ストレスになっています。

現地でコロナが話題になり始めた一時期は、森さんは周囲の視線がいつも以上に気になってしまったこともあったという。「コロナのせいで差別的な事を実際に言われたりはしていません。ノルウェーの海外輸入ケースのほとんどが北イタリアに関係している事を人々が理解しているのかなとも思います」。

森さんの寮の部屋の窓から見える景色。「車や人はいつもより少なめです」Photo: Marina Mori

人との出会いや外で運動する機会が減った

山瀬さんは、ダイニングテーブルに自分の自習スペースを設置した。「大学からは、学内カウンセリングもオンラインでできるとの連絡がありました。規則正しい生活をキープするために、大学からのモーニングコールサービスに申し込むこともできます」 撮影:Kristina Shizuka Yamase Skarvang

山瀬 静香 (やませ しずか)さん(27)
トロンハイムにある科学技術大学NTNU、自然科学学部物理学科 修士2年目

学業への影響
オンライン授業に切り替わりました。在校生は世界中・ノルウェー中から集まっているので、自分の国や地元に帰っても授業に参加できます。
NTNUでは2018年までに全科目がデジタル試験化されていたので、通常のデジタル試験を自宅から行う形になりました。
家からの勉強は上手くいっています。けれど、情報を得て、人間関係が広がるきっかけだった友人とのコーヒータイムがなくなったのは寂しいです。

生活への影響
ノルウェーの民族音楽や民族ダンスなど、夕方以降や週末のアクティビティが全てなくなったことは大きな変化です。
散歩や買い物には積極的に出るようにしていますが、筋力の衰えはすでに感じています。

「窓からはときどき鹿を見ることができます」撮影:Kristina Shizuka Yamase Skarvang
山瀬さん「運動不足解消のため、近所の森に散歩やスキーに行ったりします」 撮影:Kristina Shizuka Yamase Skarvang

おうちでの時間は、どう過ごしている?

寮や自宅で過ごす中、どのように「楽しく」時間を過ごそうとしているかも聞いてみた。

余⽩の時間ができ、湖に散歩、写真撮影や料理など、好きな事にその時間を充てられるようになったことはポジティブに捉えています(松⽊ 蓮さん)

学校のジムが閉鎖されたので、外で走るようになりました。料理、筋トレ、ネットフリックスなどで動画を見ています。こういう時こそ、好きな作品にふけることで、辛い時間が忘れられます(MSさん)

手芸や料理など創作活動を楽しんでおります。また、娘に新しいおもちゃや本をいくつか買いました(ひろえさん)

料理、編み物、本や映画に時間を使っています(森 麻里永さん)

一緒に住む彼と、自宅で映画やドラマを鑑賞しています。週に1回ほどは宅配で夕食を頼んでいます。時間のかかるお菓子作りや編み物を始めました(山瀬 静香さん)

先の見えない今後に、不安を抱える毎日

多くの人に共通していたことが、

  • 現地の言葉がわからないので、情報収集に時間もエネルギーも消費して疲れている
  • 緊急帰国する友人も多く、さよならをする機会がほとんどなかった
  • 日本でいる家族のことが心配
  • 今後の職探しにどう影響するか

現地に残る決断をしたものの、帰国する時の飛行機はどうなるのか?帰国してからの交通手段・自主隔離場所はどうなるのか? 気になることは、後を絶たない。

「今後の見通しがつかないことに、漠然とした不安を常に抱えている」という声も共通していた。