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うるさいばかりのニューヨークのレストラン 日本の居酒屋を見習え

マイケル・ブースの世界を食べる
北村玲奈撮影

年をとったせいかもしれないとは認めつつも、最近は、入ったレストランの音量が交通量の多い道路並みだった場合、即座にきびすを返してしまう。

にぎやかなことは人気店の定義とされるが、同席の人たちとの会話もままならないような音量だとしたら、私は御免だ!

なぜ、騒音を発生するように作られた店があるのか。そうでなくてもなぜ、せめて目の前の問題を改善すべく何らかの手を打たないのだろうか。英紙ガーディアンによると、ロンドンでは90デシベルを超えるレストランは珍しくないという。これはバイクの爆音に匹敵する騒音レベルだ。

経験上、この問題が最も深刻な都市はニューヨークである。私が耐え忍んできた中でも随一の騒がしさを誇るレストラン「エステラ」は、ハウストン通りにある「ニューアメリカン」をうたう店。オバマ前大統領のお気に入りとされ、料理はまぎれもなくおいしく、気が利いている。でも、数年前に妻とディナーをともにした夜のように、声がかれるほどわめくはめには二度と陥りたくない。

ニューヨーカーはどうしてこうも騒がしい店を好むのか。その後よくよく考えた。これといって話すことがなくて、気まずい空白を埋めてくれるからなのか? あるいは店が「大きな音=楽しむ客」とでも信じ込んでいるのか?

おそらくこの街では、普段からあまりに騒音レベルが高く(街路や地下鉄ではたびたび100デシベルを超える)、それ以下の状態は比較的穏やかであるとみなされているのだろう。あるニューヨーカーが、騒音レベルに応じてレストランを検索できる「サウンドプリント」というアプリを開発した。難聴に苦しむ人々からは厚い支持を得ているのは言うまでもない。

外食時に耳栓が必要になる?

ユーザー発信のレストランレビューサイトのコメントでは、店の騒がしさに関してよく言及されているから、状況は変わりつつあるのだろう。とはいえ近頃のおしゃれな店のデザインはどこ吹く風である。むき出しの木のテーブル(テーブルクロスがないので、音を吸収しない)、コンクリートの床にレンガの壁。音は、これらの硬い表面で跳ね返り、広がっていく。まるでブリキのバケツに小石を入れたように。

デイヴィッド・チャンがアジアとアメリカのフュージョン料理店「モモフク」(いかにもニューヨークだ)を開いてからというもの、メタリカやその他似たようなヘビーメタルバンドの曲をオープンキッチンから流すことが「いけてる」となった。ここのシェフのメッセージは明快だ。私の定める料理を、私の定める順番で食するだけでなく、私の音楽的嗜好をも楽しむがよい。

食の専制政治である。

食卓のこととなると、やはり日本に手本を求めてしまう。私はもちろん愉快で活気ある日本中の居酒屋で食事をしているが、ここでの喧騒は常に客が生み出している。おしゃべりに笑い声、ただそこで楽しい時間を過ごしている人々によるものだ。

日本で3月といえば送別の季節だが、店で音楽がでしゃばることも、音響のせいで嫌な思いをしたことも私の記憶にはない。さらにいいことに、外食のときに盛り上がりたい気分ではないときや、静かな会話、あるいは料理についての平穏な思索を望むときには、いつだってさまざまな選択肢がある。

これは日本人にとって当たり前のことかもしれないが、実はそうでもないのだ。もしうるさい場所がうるさいままなら、私たちは食事するのに耳栓が必要になるだろう。(訳・菴原みなと)