慎重に? それともすぐに?
「リスクに対する姿勢」には文化的な違いがあります。リスク回避の文化の人は、リスクや間違いを起こすことを避けたがります。そのため、物事を進める際も慎重かつ保守的です。最善策を選択するために、前もって情報を沢山集め、それを分析し、さらにそれを話し合うことを好みます。それができないと満足がいく決断をできないと感じ、早く進めないこともあります。
対照的にリスク指向の文化の人は、リスクを冒すことにそれほど抵抗が無く、失敗することを厭わない傾向があります。「失敗から回復できる」や「やってみないと分からない」と思っているからです。そのため、事前の情報収集や分析をあまりせず、素早く行動できます。綿密に計画するより、試行錯誤、実験的な進め方を好みます。
日本はかなりリスク回避の文化ですが、海外の多くの文化は、よりリスク指向の傾向を持っています。特に、移民や開拓者達にルーツを持つアメリカやオーストラリア、海を航海するバイキングを祖先とするスウェーデンやデンマークなどが、リスク指向の文化の典型です。
こういった文化の違いは、価値観や仕事のやり方の根本を成しているので、自分と正反対の文化的傾向をもつ相手に対し、疑問、不満、苛立ちを感じることは多いでしょう。しかし、相手のやり方が文化的相違を反映していることを認識し、うまく対応することが必要です。
葵「いや、だって、失敗って、とても怖いじゃないですか。お金も時間もかけるわけですし。絶対に失敗しないっていう確証が無いとプロジェクトを先に進めるのは怖いです」
ジャック「人間が失敗しないなんてことは可能なのかな? やってもないのにどうやってわかるんだろう。失敗したらそこから学べばいいんじゃない?」
石頭(いしず)本部長「許さん!」
リスク感覚の違いから生じる摩擦
このケースでは、アメリカ人のジャックはまだ起きていない問題を分析するより、早く進めたがっています。それを反対する葵と石頭( いしず) 本部長は、リスクを心配するばかりすぐに行動に移そうとしません。これは典型的な「リスク回避文化」と「リスク指向の文化」の違いの現れです。両方が極端になると問題が起こりやすいので、これは違った文化的背景を持っている人がお互いにお互いの文化を学べられるところだと言えます。
リスクを避けるために行動を入念に進めることは悪くはないし会社は社外に流す情報に関して社内規定を持つのが妥当だと言えます。
しかし、「かも知れない」の心配ばかりになって行動できなくなるのはリスク指向の外国人には理解されにくいです。尚、すぐに行動を取らないことによって失われる機会も十分意識しなければなりません。十分注意して行動しながら、過剰な恐怖感を持たないようにすることが大切です。
この記事は『マンガでわかる 外国人との働き方』(ロッシェル・カップ、千代田まどか共著、えんぴつ作画、株式会社スポマ編集、秀和システム)の転載です。