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ホワイトハウスの「お出迎え」はハプニングがいっぱい

ホワイトハウスへ猛ダッシュ
インドのモディ首相夫妻をホワイトハウスで迎えるために、サウスポーティコと呼ばれる南玄関から姿を現すトランプ大統領とメラニア夫人=ワシントン、ランハム裕子撮影、2017年6月26日

先日トランプ大統領がDMZ(韓国と北朝鮮を隔てる非武装地帯)を訪れ、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と3度目の米朝首脳会談を実現した。その隣には、同行した韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領の姿があった。代表取材のカメラに映るトランプ大統領とのツーショットを見ながら、ホワイトハウスで起こった小さなハプニングをふと思い出した。

外国の首脳をホワイトハウスに招く際、米大統領が「お出迎え」と「お見送り」をする慣例がある。首脳が夫婦で到着する場合は、大統領はファーストレディとともに登場し、見送りも二人で行う。大抵の場合、招かれた各国首脳は、ブレアハウスという米政府のゲストハウスに泊まり、そこからホワイトハウスへ向かう。ただ、ブレアハウスはホワイトハウス北口のすぐ向かいにあり、歩いてもほんの数分。この短距離を車で移動し、大統領が迎えるという儀式は、セキュリティー上の理由だけでなく、お披露目のためでもある。そのため、相手国との関係をホワイトハウスが(またはトランプ大統領自身が)どう見せたいかによって迎え方や歓迎の場所が異なる。

チリのピネラ大統領を乗せ、ホワイトハウスの敷地内をウエストウィングに向かいゆっくり走る車。手前では到着の様子を取材するホワイトハウス記者団が待ち構える=ワシントン、ランハム裕子撮影、2018年9月28日

儀式とはいえ、かかる時間はごくわずか。送迎車が到着する直前に大統領が入り口に現れ、車から降りる外国首脳と握手を交わし挨拶をする。迎える相手やトランプ大統領の機嫌によってカメラにポーズをしたり、会話を交わしたりすることもあるが、トランプ大統領が「さぁどうぞ」と中へ案内したところで「歓迎の儀式」は終了。ただ、この短時間にもハプニングは起きる。

ウエストウィング玄関でコロンビアのサントス大統領(当時)を迎えるトランプ大統領。トランプ大統領の握手はいつも相手の手をがっしりと掴み自分側に引っ張る=ワシントン、ランハム裕子撮影、2017年5月18日

文大統領にとって2度目のホワイトハウス訪問となった2018年の5月22日。大統領を乗せた黒い車は右側前方にアメリカの国旗、左側には韓国の国旗をなびかせながらウエストウィング(大統領執務室や会見室があるホワイトハウス西棟)玄関に到着した。

ホワイトハウスに到着する韓国の文大統領を乗せた車。玄関には右に韓国の旗、左に米国旗を持った儀仗兵が立つ。トランプ大統領は車到着の1分ほど前に姿を現す=ワシントン、ランハム裕子、2018年5月22日

挨拶と握手が短く交わされた後、その日のトランプ大統領は、並んでカメラにポーズすることをなぜか拒んだ。ご機嫌斜めだったのか。。。 次の瞬間、文大統領は、なんと一人でカメラに手を振り出した!普段はトランプ大統領が各国首脳と横に並ぶが、今日はまさかの前後並び。。。?!しかも文大統領の方がトランプ大統領よりも一歩前に出ている。。。 結果、笑顔で振り上げた文大統領の手は、トランプ大統領の顔を見事にブロック。おかげでトランプ大統領の顔を笑顔で遮る文大統領の姿が記録された。

ホワイトハウスに到着し、トランプ大統領の前で一人、記者団に手を降る文大統領=ワシントン、ランハム裕子、2018年5月22日

その直後、トランプ大統領が隣にいないことにふと気づく。振り返った文大統領は、心の中で「あれ?僕一人だけ?」と思ったかもしれない。

トランプ大統領が隣にいないことに気づき、振り返る韓国の文大統領。後ろではトランプ大統領が苦笑い=ワシントン、ランハム裕子、2018年5月22日

と、次の瞬間、トランプ大統領は「もういいから早く」と言わんばかりに、文大統領の手を取った。二人の大統領は、手を繋ぎホワイトハウスの中へ姿を消した。

トランプ大統領に手を引かれ、ホワイトハウス内へ入る文大統領。二人の手が見えるが、繋ぎ方がどうも不自然=ワシントン、ランハム裕子、2018年5月22日

よく使われる歓迎地点はウエストウィングの玄関。首脳を乗せた車は普段報道関係者が出入りするホワイトハウスの北口から入り、旗を掲げる60人ほどの儀仗兵の列をくぐり抜け、大統領が待つウエストウィングの入り口に到着する。陸軍、海軍、空軍、海兵隊の兵士が軍旗や州旗を掲げながら歓迎する時もあれば、護衛以外の儀仗兵は全くいない時もある。

エジプトのシシ大統領の到着に備えホワイトハウスで行進する儀仗兵たち。この儀式は天候に関わらず行われる=ワシントン、ランハム裕子、2019年4月9日

もう一つの歓迎地点は、ホワイトハウスの南側にあるサウスポーティコ(南柱廊)。ホワイトハウスの中心にあり、大統領が住居空間からヘリに向かう際に使われる玄関だ。ホワイトハウスの南側にあるサウスローンという庭に面しているこの入り口には、赤絨毯が敷かれ、ウエストウィングよりも格式高い歓迎儀式が行われる。

式典で演説するため、サウスポーティコの玄関から登場するトランプ大統領=ワシントン、ランハム裕子撮影、2019年7月15日

文大統領はこれまで3回ホワイトハウスを訪れているが、初めは奥さんも招かれ、南側玄関で待つトランプ大統領とメラニア夫人に迎えられた。2度目と3度目は大統領単独で訪問し、ウエストウィングロビーでトランプ大統領に迎えられた。一方で、サウジアラビアのムハンマド皇太子が訪れた時は、報道陣からは見えにくい西側の入り口から密かに迎え入れられた。2018年6月に北朝鮮の朝鮮労働党副委員長の金英哲氏がホワイトハウスを訪れた時は、首脳でないにも関わらず南口玄関で迎えられた。今年1月の2度目の訪問時は、記者団の前での歓迎が行われなかったため、どこでどのように迎えられたか不明だ。

トランプ政権発足後初の文大統領によるホワイトハウス訪問。大統領夫妻は、赤絨毯が敷かれた玄関でトランプ大統領とメラニア夫人に迎えられた=ワシントン、ランハム裕子撮影、2017年6月28日

安倍晋三首相がトランプ大統領就任以来これまでホワイトハウスを訪れたのは計3回。3回ともウエストウィングで歓迎された。特に印象的だったのが、トランプ大統領就任後間もない2017年2月10日。ウエストウィングの玄関に到着した安倍首相は、極めて近距離でトランプ大統領と握手を交わし、まるで親しい友人同士のようにハグをした。

安倍晋三首相にとって、トランプ政権発足以来2度目のホワイトハウスへの訪問。トランプ大統領がウエストウィング玄関で安倍首相を迎えた時の、この表情は何だったのか=ワシントン、ランハム裕子撮影、2018年6月7日

本来、ウエストウィング玄関に各国首脳が到着する際、フォトグラファーたちは、入り口すぐ脇の壁沿いにひな壇のように群がってカメラを構えていた。大統領と各国首脳はこれらのカメラに向かい笑顔でポーズしたものだった。が、トランプ政権が発足して約1年が過ぎた頃、ある日突然レンズを阻むものが登場した。その正体は、玄関の両脇に置かれた大きな植木。生い茂る葉っぱがフォトグラファーの前にたちはばかる。初めて見たとき、「まじか。。。」と落胆したのを今でも覚えている。こんなに植木を憎んだことがあっただろうか。フォトグラファーの間では、メディアを敵視するトランプ政権の思惑ではないかと囁かれた。

この植木のおかげで、フランスのマクロン大統領が訪問した際には、トランプ大統領と木の陰で抱擁し合っているかのような怪しい写真に。。。

国賓としてホワイトハウスに招待されたフランスのマクロン大統領。植木が明らかにフォトグラファーの視界を遮っている。。。=ワシントン、ランハム裕子撮影、2018年4月23日

メディアを「敵」とするトランプ大統領だが、記者団のカメラを相当意識していることが、普段の撮影から読み取れる。各国首脳の歓迎の際に、「カメラはあちらですよ」と招待客を記者団の方向に向かせポーズをとることもしばしば。イスラエルのネタニヤフ首相をお見送りした際には、ゴラン高原についてイスラエルの主権を正式に認め署名した文書を「撮ってくれ」と言わんばかりにカメラに向けて掲げたこともあった。

トランプ大統領がイスラエルのネタニヤフ首相を見送った際、ゴラン高原のイスラエル主権を認め署名した文書をカメラに向け披露した=ワシントン、ランハム裕子撮影、2019年3月25日

通常、歓迎儀式の際に記者が大統領に対して質問を浴びせることはないが、イラン情勢の悪化を受け、ある記者が「イランと戦争になりますか?」と大声で叫んだ。すると、トランプ大統領は「そうは望まない」と反応し記者団を驚かせたこともあった。

カナダのトルドー首相がホワイトハウスに到着する直前、記者がイランと戦争になるのですか?と叫ぶ。トランプ大統領は普段このような機会に反応しないが、この日は「それは望まない」と答えた。この時点でトルドー首相を乗せた車はすでに到着していた=ワシントン、ランハム裕子撮影、2019年6月20日

トランプ大統領の行動は「予想がつかない」とよく言われる。そのおかげで特に舞台裏では振り回されることがしばしば。それも含めた歴史的瞬間をカメラに収めるため、今日も私はホワイトハウスへ走っている。