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認知症を描く韓国ドラマが話題 切ない描写に心揺さぶられ

現地発 韓国エンタメ事情
「眩しくて」終盤、ヘジャと息子の間のわだかまりが解けた瞬間=JTBC提供

急速に少子高齢化が進む韓国。最近の統計庁の発表によると、妊娠可能期の女性1人あたりの予想出生数である合計出生率が今年は0.87人となる見込みで、来年から総人口が減少に転じるという。

そんな中、ドラマや映画でも、高齢者をめぐる作品が目立つようになってきた。最近話題になったのは、3月に最終回を迎えたJTBCドラマ「眩しくて」。

アナウンサーが夢という25歳のヘジャ(ハン・ジミン)が、ある事件をきっかけに突然70代のおばあちゃん(キム・ヘジャ)になってしまう。外見はキム・ヘジャ演じるおばあちゃんで、心の中で語る言葉は若々しいハン・ジミンの声。見ていて切なくなってくる。

「眩しくて」で、ヘジャ(ハン・ジミン)が一番幸せだった頃=JTBC提供

ファンタジーと思って見ていたら、もしかしてヘジャは認知症なのでは……という予感がしてきた。なぜなら、私自身の祖母がアルツハイマーを患っていて、しばしば頭の中が若い頃にタイムスリップするのを見てきたからだ。私には「おじいちゃん」と呼んでいた祖父のことを突然「ふみおさん」と言いだし、「ふみおさんが会社から帰ってこない」と、いろんな人に電話をかける。祖父は十数年前に亡くなっているのに、だ。若かりし夫の帰りを待つ主婦の頃にタイムスリップしては、周りを驚かせた。

「眩しくて」の70代のヘジャが、そんな祖母に重なって見えた。中身は若いままなのに、周りは自分をおばあちゃん扱いする。認知症の本人にすれば、こんな風に見えるのかもしれない、という世界が描かれていた。

果たして、そうだった。ドラマの大半で描かれた世界は、70代のヘジャの頭の中の世界だったということが、ドラマ終盤で明らかになる。当然、視聴者の間には衝撃が走った。私自身も、このドラマを通し、認知症の本人の頭の中を初めて追体験した。

「眩しくて」で、認知症を患うヘジャ(キム・ヘジャ)=JTBC提供

当初はハン・ジミン主演と思って見始めたが、完全にキム・ヘジャのドラマだった。キム・ヘジャは実際の年齢も77歳のベテラン女優で、ポン・ジュノ監督の映画「母なる証明」などで知られる。高齢の主人公で、ここまで視聴者をくぎ付けにできるドラマも珍しい。終盤、人生の終着点に近づき、つらかった過去もすべて受け入れていくキム・ヘジャの演技には、これまで見たどんなドラマの誰の演技よりも心を揺さぶられた。

一方、老夫婦がともに認知症を患う映画「ロマン」が、4月初めに公開された。

先に認知症の症状が出てくるのは、妻のメジャ(チョン・ヨンスク)だ。同居する息子の家族に暴力まで振るうようになり、見ていられなくなった夫ナムボン(イ・スンジェ)はメジャを老人ホームに入れてしまう。そこにはほとんど葛藤が見られなかったが、ナムボン自身も認知症の症状が出てくると、不安になり、メジャを再び家に連れて帰ってくる。それに反発して息子家族は出ていき、認知症の二人だけの生活が始まる。

正気に戻る時間が減っていくにつれ、同じ空間に暮らしながら、互いに留守番のメモを残すように手紙を書きあう二人。認知症になる以前よりも素直に気持ちを伝えあう姿を見ると、自分は今、大切な人に大切なことを伝えて生きているだろうかと、我が身を振り返らされた。

「眩しくて」で、法事を営むヘジャの家族=JTBC提供

これまで、ドラマや映画のみならず、新聞やテレビなど韓国のメディアで認知症が取り上げられるのは、日本に比べて圧倒的に少なかった。実際には韓国でも認知症を患っている人は少なくないはずだ。日本でも少し前までタブー視されていたのが、ここ数年で大きく変わってきたように、韓国でも急激に変わりそうな気配が、最近のドラマや映画から感じられる。