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ユーチューブは陰謀論ブームを引き起こした。それを阻止することは可能か

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=ロイター

“YouTube Unleashed a Conspiracy Theory Boom. Can It Be Contained?”

ニューヨーク・タイムズ紙 2月19日付

ユーチューブにconspiracy theories(陰謀論)をテーマに公開されたあるビデオは、far-fetched(こじつけの、無理な)内容だったが、3000万回も再生されたという。その内容とはiPhoneは密かにユーザーの全発言を録音しているとか、子ども向け人気テレビ番組は自殺を奨励するsubliminal message(サブリミナル効果のあるメッセージ)が入れられているとか、最近のカリフォルニアの山火事は誰かが仕掛けたものだ――といったものだった。しかしこのような極端なコンテンツがユーチューブではまれではなくなっていて、misinformation(誤報)がvast troves(膨大な量)になっているため、同社は対応をreckoning with(検討している)最中だという。

誤報ビデオがプラットフォームにあるのは確かに問題だが、さらに問題なのは、ユーチューブのアルゴリズムがそうした極端なコンテンツを自動的にユーザーに推薦し、紹介していることだ。それによって誤報はたちまち全世界に広まってしまう。同社は1月、アルゴリズムの変更で誤報のstem the tide(流れを減らす)ことを図っていると発表。しかし現実問題として、害を与える内容を定義するのはとても難しい。例えば、この記事を書いたコラムニストは、Bigfoot(アメリカで目撃される未確認動物)は真実だと主張するビデオが、9・11の公式説明は嘘だと主張するビデオよりも危険だと判断するだけの本質的理由はないと言う。もう一つの微妙な問題に、投稿者に関することがある。ユーチューブで最も人気のあるビデオクリエーターの中には、陰謀論関連のビデオ制作が好きな人もいる。彼らがそれを制限されるとなると、快く思わないだろう。

ユーチューブは動画を効率よく発信することを可能にし、様々な面で便利でエンターテインメントの価値も高い。しかし副作用として、陰謀論をシェアすることを容易にし、結果的に陰謀論ブームをunleashed(引き起こした)ことがある。それをcontain(阻止)できるかどうかが、今後の大きな課題だ。

この記事が出た後の3月15日、ニュージーランドのモスクで大量殺人事件が発生した。容疑者はユーチューブのビデオのファンであることが明らかになった。それを受け、ユーチューブのプラットフォームにある問題コンテンツを制限するよう求めるプレッシャーはさらに強まるはずだ。ユーチューブが早急にこうした問題に対応しなければならないことは確かである。