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世界一エコな学校 バリ島グリーンスクールが 取り組む3つのイノベーション

アジア発のソーシャルイノベーション 〜バリ島からの便り〜
スクールバスにバイオディーゼルを給油するグリーンスクール学生(出典:Biobus)

昨今、日本で開催されるイベントはSDGs関連が非常に増えていますが、SDGsが策定されるずっと以前から、「持続可能な社会を担うリーダー育成」を掲げる学校がインドネシア・バリ島のうっそうと茂る熱帯雨林の中にあります。

その名も「グリーンスクール」。

2009年にジュエリービジネスを大成功させたカナダ人のジョン・ハーディー氏が創設した私立学校で、今年10周年を迎えます。環境教育のパイオニアとして知られるグリーンスクールは、世界中のメディアに取り上げられ、世界中から毎日のように見学者が訪れ、入学希望者が殺到する話題の学校です。

© 2016 Green School Bali

幼稚園から高校まであり、昨年9月の時点で児童・生徒数は495人。大半が外国人で、子どもたちは世界35カ国から集まっています。地元からは43人が奨学金制度を使って学んでいるほか、360人が通常の授業とは別のコースで学校と交流しています。

学校が大切にしていることの一つに「起業家的な考え方を養う」という方針があります。子どもたちの中に自ら備わっているその力を伸ばしていくため、実生活における課題や問題の解決方法を探るため、子どもたち自身でプロジェクトを立てて取り組むことを学びの中に位置づけています。

© 2016 Green School Bali

今日はそんなグリーンスクールが取り組む3つのイノベーションに着目します。その三つの取り組み全て、グリーンスクールのコミュニティ・イノベーション・ハブ、略してiHubと呼ばれるチームが運営しています。今回のコラムの内容については、iHubのコーディネーターBaxter Smith氏にお話を伺いました。

高校生が開発した廃食油で走るスクールバス 

グリーンスクールの数あるサステイナブルな取り組みの中でも、象徴的なのが「バイオバス」(https://www.gsbiobus.org/)という名のスクールバス。そのバスは毎日学校近辺を走っているため、対外的にも知名度が高いです。

バイオバスは、グリーンスクールのキッチン、また提携する周辺のレストランから使用済みの調理油を回収し、バイオディーゼルに加工し、それを燃料として走るディーゼル車です。近辺に住む数百の家庭が毎日マイカーで送り迎えをするのではなく、スクールバスを使用することによって不要な消費・汚染を防ぎ、かつその燃料が循環型という、ダブルでサステイナブルな取り組みです。

注目される更なる理由の一つが、グリーンスクールの学生が発案し、形にしたことです。2015年に高校三年生が、卒業プロジェクトとして取り組んだのがバイオバスのアイディア。六ヶ月間かけて卒業前にプロトタイプが完成し、その年の8月には2台のスクールバスが運営開始されました。今ではバスの台数が6台まで増え、そのうち1台は外部にイベントや観光用にレンタルするほどまで需要が増え、ソーシャルビジネスとして展開しています。

バイオバスの画期的な側面は、廃食油からバイオディーゼルを作る過程において副産物として出るグリセリンを活用して石鹸を生産・販売しているところにもあります。

Biobusチーム生産の石鹸(出典:Biobus)

グリーンスクールの生徒が多く住むバリ島のウブドやチャングーに毎朝迎えに行くバイオバスですが、予約アプリの開発にも学生が関わりました。オンライン予約を実現するため、グリーンスクール卒業生が在学する香港理工大学から協力を得て、バイオバスチームはアプリのデザインを学びました。バイバスは、まさにグリーンスクール教育の柱の一つである企業家精神を具現化した取り組みだ、とSmith氏は説明します。

周辺のコミュニティも巻き込むリサイクルプログラム 

バリ島やインドネシアを訪れた方はご存知の通り、「楽園バリ島」は深刻なゴミ問題に悩まされています。島に焼却炉がなく、空港近くの埋立地に毎日約1200トン、祝日や旅行のピークシーズンになると1日1500トンのゴミがただ積まれていき、今では高さ15メートルゴミ山と化しています。

インフラ問題の突破口が見えない中、グリーンスクールでは地元市民のゴミに関する教育や啓蒙活動を行っています。その一環として、グリーンスクール内にKembali(クンバリ)というリサイクル施設があります。校内や生徒の家庭から出るあらゆるリサイクル・リユース可能なものを回収し、資源として業者に売れるものを販売し、「ゴミゼロ」を目指す施設です。2014年に始まった取り組みで、スケールも年々拡大しましたが、最近では周辺のコミュニティを巻き込む3つの活動を始めました。

Green School Kembali=筆者撮影

まずは、Kembaliが培ったリサイクルのノウハウを、半径30分ほどの公立小学校7校に紹介し、グリーンスクールの学生が実際導入を手伝いました。Kembaliでは資源分別を13種類にも分けていますが、周辺学校の導入にはシンプルにし、まずは3種類からの手ほどきを行います。導入に対して、小学校の教師や生徒も当初は積極的でなかったものの、最近では学校側から教えて欲しいと依頼されるケースが増えているとか。

Green School Kembali=筆者撮影

次に、リサイクルプログラムを導入した学校のうち、特に積極的な二校から生徒を集め、グリーンスクールiHubが行うサステイナビリティ教育プログラムに参加します。9回にわたる講座では、リサイクルやリユースの域を超えて、空気汚染や土壌汚染についても学びます。

更に、サステイナビリティ教育プログラムを卒業した地元の学生で、特に関心が高い生徒には、iHubが個別指導を提供し、アイディアをプロジェクトにする手伝いをします。Smith氏曰く、まだ事例は多くないが、一人の生徒がクラスや学校全体に対して起こせる意識改革のインパクトは過小評価できないそうです。

高校とは思えない立派なメーカースペース

グリーンスクールの教育は、とにかく手足を動かして試してみることを重視しています。そのため、五感を使って「つくる」「学ぶ」「共有する」ことが体験できるmakerspace(メーカースペース)は貴重な存在です。

元々小さな掘っ立て小屋だった工房スペースから、2018年1月のiHubオープンに伴い、大きな竹建築の空間に移り、3Dプリンター、レーザーカッター、はんだごて、電動のこぎりなどが揃い、高校とは思えないほど立派なメーカースペースと生まれ変わりました。もちろんここでもゴミを限りなくゼロにし、資源の循環を目指しています。「ここは世界で一番グリーンなプロトタイプ作りのスペース」だとSmith氏は自負します。

iHubのメーカースペースでの展示=筆者撮影
iHubのメーカースペースで作成された竹細工モデル=筆者撮影

放課後自分の好奇心を探求するためメーカースペースを使用する学生は多数。日中は、グリーンスクールの小学から高校まで、クラスごとにメーカースペースを訪れ、授業の一環でデザインや工作を学びます。最近、中学校の授業で盛り上がったのは、生徒自ら3Dプリンターやレーザーカッターを使って、自分たちが遊べるボードゲームを製作したことだそうです。

今後、メーカースペースの設備は更に拡充していく予定だと話すSmith氏。グリーンスクールのイノベーションを牽引するiHubの今後の展開が非常に楽しみです。

メーカースペースの3Dプリンター=筆者撮影