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「1億俳優」ファン・ジョンミン来阪

現地発 韓国エンタメ事情
「ベテラン」で財閥の悪事を暴く熱血刑事を演じるファン・ジョンミン(左)と、財閥御曹司役を演じるユ・アイン©2015 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED
「ベテラン」で財閥の悪事を暴く熱血刑事を演じるファン・ジョンミン(左)と、財閥御曹司役を演じるユ・アイン©2015 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED

韓国映画ファンにとって、ファン・ジョンミン来阪は「事件」と言ってもいいかもしれない。11月17日、韓国の人気俳優ファン・ジョンミンが来阪し、「第4回大阪韓国映画祭」(駐大阪韓国文化院主催)の観客とのトークに登場した。

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大阪で開かれたファン・ジョンミンのトークイベント=成川彩撮影

ファン・ジョンミンは韓国で指折りの「1億俳優」だ。韓国では累計で観客数が1億人を超えた俳優を「1億俳優」と呼ぶ。ファン・ジョンミンのほか、主役級ではソン・ガンホとハ・ジョンウだ。人気、実力ともにこの3人がトップ3と言ってもいい。

そのファン・ジョンミンが、大阪へ。来阪が発表された直後から、SNSで韓国映画ファンたちが騒ぎ始めたので、韓国在住の私もすぐに気づいた。「トークだけでも」と、取材を申し込み、ファン・ジョンミンを追って韓国から大阪へ。

今回の大阪韓国映画祭は、上映6作品のうち3作品がファン・ジョンミン主演作という「ファン・ジョンミン特集」だった。上映されたのは「ベテラン」「ヒマラヤ」「新しき世界」の3本。トーク付きの「ベテラン」の回だけで3千を超す応募があり、競争率10倍という人気っぷりだった。文化院のスタッフは「北海道から沖縄まで、全国から応募があった。ある程度は予想していたけど、ここまでとは……」と驚いていた。

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司会の古家正亨さん(左)の質問に笑顔で答えるファン・ジョンミン(右)=成川彩撮影

ファン・ジョンミンの公式の来日は、今回で2度目。2007年に東京国際映画祭に日本原作の韓国映画「黒い家」で招待されて以来で、来阪は初めてという。壇上に現れるや、歓声と拍手の嵐。トークの司会を務めた古家正亨さんは、K-POPアイドルのイベントの司会などで人気のラジオDJだが、観客の熱烈な反応に「アイドルのコンサートみたい」と笑った。

ファン・ジョンミンの第一声は、日本語で「お招きいただき、ありがとうございます」。大俳優が恥ずかしそうに話す姿に、親近感を覚えた。

私自身、ファン・ジョンミンの大ファンで、出演した映画はほぼすべて見ているが、最初にファン・ジョンミンを発見したのは「ワイキキ・ブラザーズ」(2001、イム・スルレ監督)だった。ファン・ジョンミンが世に知られるきっかけとなった作品だ。「ワイキキ」までの長かった無名時代の苦労を問われると、「演劇から始めて、もちろん経済的には苦しかったけど、本当に自分が好きな仕事ができることがとっても楽しく、幸せでした」と、俳優業への愛を語った。舞台出身の映画俳優は多いが、ファン・ジョンミンは今も舞台に出続けている。ミュージカル「ラ・マンチャの男」でドン・キホーテを演じる生ファン・ジョンミンを見たことがあるが、舞台を心から楽しんでいるように見えた。舞台に出続ける理由について「映画は監督の、舞台は俳優の芸術だと思う。幕が上がれば、『カット』はかけられない。舞台の仕事に癒しを感じている部分もある」と話した。

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「ベテラン」で財閥の悪事を暴く熱血刑事を演じるファン・ジョンミン©2015 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED

個人的には、「新しき世界」(2013、パク・フンジョン監督)のファン・ジョンミンの演技が最高だと思う。華僑だが、韓国のヤクザ組織の幹部という役で、ヘラヘラしながら実は怖い、魅力的なキャラクターだ。空港に登場するシーンの、いかにもチンピラっぽい白のスーツにサングラス、足元はサンダルという奇抜なファッションについて問われると、「あのファッションは私から監督に提案した。あの役は私のアイディアの詰まった、アドリブもいっぱいのキャラクター」と、答えた。やはり、本人にとっても思い入れの強い役だったようだ。

「この日本の監督からオファーが来たら、出てみたいなという監督は?」の質問には、「『うなぎ』の監督の作品が大好きで、呼んでさえいただければ……」。今村昌平監督が亡くなったことは、知らなかったようだ。今村監督、ファン・ジョンミン主演の映画ができていればと妄想してみると、惜しくてならない。

観客からは、トーク直前に上映された「ベテラン」(2015、リュ・スンワン監督)の終盤のアクションシーンについて、質問があった。「明洞の繁華街での撮影、大変だったと思うが、裏話があれば教えてほしい」という質問に、「実際、車が突っ込んでいくところは明洞で撮ったけど、突っ込んで路地裏に入ったところからは、明洞でなく、忠清道の清州での撮影。明洞では不可能な撮影でした」との意外な答え。明洞は日本人観光客が最もよく訪れる場所で、あの人ごみの中、どうやって撮ったんだろうと思っていたが、地方での撮影だったとは。

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「ベテラン」で財閥の悪事を暴く熱血刑事を演じるファン・ジョンミン©2015 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED

約1時間のトークでは全然足らないという観客の熱気に、古家さんから「どうしてもこれだけは伝えたい!という人」という呼びかけ。思いっきり手を挙げた女性は「毎日ファン・ジョンミンさんのおかげで幸せな気持ちをもらっています」と、愛情たっぷりのメッセージを伝えた。