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日本出身の俳優キム・インウ、「日本人」役で大活躍

現地発 韓国エンタメ事情
「ハーストーリー」のポスターより
「ハーストーリー」のポスターより

韓国ではここ数年、夏になると日本植民地時代に関わる映画が公開されている。8月15日は日本では終戦記念日だが、韓国では「光復節」といって、日本の植民地支配からの解放を祝う日だ。

日本植民地時代を描くからには、当然、日本人役が必要になる。そこで大活躍中の俳優が、日本出身のキム・インウ。植民地朝鮮の独立運動家による暗殺計画を描いた「暗殺」、関東大震災前後を背景に実在のアナーキスト朴烈を描いた「朴烈」、端島(通称軍艦島)の炭鉱で働いた朝鮮人徴用工の架空の脱出劇を描いた「軍艦島」……数え上げればきりがないほど、多数の韓国映画に日本人役として出演してきた。

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俳優のキム・インウ氏

もともと日本で俳優として活動していた在日コリアン3世で、10年ほど前に拠点を韓国へ移した。日本語力と演技力の両方を兼ね備えた俳優として、韓国の映画・ドラマに欠かせない存在となっている。

今年は6月末、ミン・ギュドン監督の「ハーストーリー」という慰安婦関連の映画が公開された。といっても、時代背景は1990年代。元慰安婦ら原告が、日本の謝罪と賠償を求めて起こした実際の裁判を描いている。一審判決は、国家賠償責任について一部原告側の訴えを認めるものだったが、その後、二審、三審で原告敗訴となり、韓国内では忘れ去られた歴史(ヒストリー)となっていた。それを今回、ミン監督が、原告と支援者ら彼女たちの物語(ハーストーリー)として掘り起こした。

一審の裁判長を演じたキムは「慰安婦関連の映画に出演するのは勇気がいる」と話す。日本での俳優活動が難しくなる可能性があるためだ。それでも出演を決めたのは、やはり慰安婦関連の映画だからだ。「被害を繰り返さないため、ちゃんと後世に伝えるべき話だと思った」

キムは、法廷で被害を訴える原告の姿を目の当たりにし、心証が変わっていく裁判長の内面を丁寧に演じた。「国家賠償責任を認める判決は、裁判長にとってかなり勇気のいる判決だったはず。でも、裁判長だって人間だ。原告のハルモニ(おばあさん)たちから感じるものがあったと思う」。ハルモニの気迫の証言が、この映画の見どころでもある。ベテランの俳優陣が、渾身の演技を見せた。

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「ハーストーリー」で裁判長を演じるキム・インウ(NEW提供)

2015年12月に慰安婦問題で日韓合意が発表されて以降、少なくとも4本の慰安婦関連映画が韓国で劇場公開されている。日本ではなかなか公開に至らない場合が多いが、「鬼郷」は観客数350万人、「アイ・キャン・スピーク」は320万人というヒット作となった。

「ハーストーリー」のミン監督は「これは反戦映画であって、反日映画ではない」と話す。実際、一審の支援者の多くは日本の一般市民で、そのこともきちんと映画に描かれている。キムも関連の資料を読み込むうち、日本の支援者の存在感に圧倒された。「公開は難しくとも、せめて上映会ででも、日本の支援者の皆さんに見てもらいたい」

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伊藤博文役を演じるキム・インウ。tvN「ミスター・サンシャイン」より

一方、現在、韓国で話題のドラマといえば「ミスター・サンシャイン」だ。日本でも人気のイ・ビョンホン、若手で最近引っ張りだこのキム・テリを主演に、1900年代初頭の抗日闘争を描いた作品だ。キム・インウはここでも、伊藤博文の役で登場している。映画を中心に活躍してきたが、今年は「ミスター・サンシャイン」のほか、現代ものの刑事ドラマ「スケッチ」、朝鮮初のソプラノ歌手と恋人の劇作家の実話をもとにした「死の賛美」と、ドラマ出演が続く。キムの活躍が日本のお茶の間に届く日も近そうだ。