東京都内に住む30代未婚女性Aさんは、有名な大企業に勤める才媛だ。人当たりも良いという。Aさんに直接会ってみると、うわさ通り、好感の持てるタイプだった。かっこいい彼氏がいてもおかしくない。「人気がありそうですね」と聞いてみた。「付き合っている人はいません。1、2回会ってご飯を食べて、お茶して別れます」
Aさんは「面倒だし、時間もない」と言う。しかし、恋愛の時間がないほど忙しいわけでもない。平日、Aさんの帰宅時間は大抵午後7時。左手にコンビニ弁当、右手にレンタルの映画のDVDを持って帰宅し、晩ごはんを食べながら映画を見る。時々海外旅行に行く以外は、週末も家にいるという。恋愛どころか、周りの人との交流がほとんどない。
横にいたAさんの同僚男性Bさんもうなづいた。「僕もそうだし、他の友達も、仕事が終わったら一人でご飯を食べて本を読んだりゲームをしたり。人と深く付き合うのが怖いという知人もいる。紹介されたら軽く1、2回会うぐらいがいい」と言う。Bさんはこれを「ニンテンドッグス恋愛」と言った。
ニンテンドッグスは、ゲーム会社「任天堂」のペット飼育ゲームだ。ゲーム画面を開けば、かわいいペットがまるで目の前にいるように愛嬌を振りまいてくれる。しかし、電源を切れば消える。自身が必要とする時だけ、会えればいいのだ。実際にペットを飼うのが負担な人たちの中に、このゲームを楽しむ人が多い。真剣な関係は「ノー(No)」だが、寂しい時に1、2回会ってご飯を食べるのは「イエス(Yes)」という日本の若い世代の恋愛方式は、まさにニンテンドッグスのようだ。なぜ、人との交際を遠ざけるのか。Aさんはこう答えた。「人に会ってストレスを受けたくないんです。私も相手に迷惑をかけたくないし」
日本の未婚率は毎年最高値を更新し続けている。それに加えて人と接触しないという傾向まで出てきた。地域の小さなラーメン屋ですら、人(店員)でなく自動販売機を通して注文する店が徐々に増えている。店員は一言も話さず注文を受けた料理を運ぶだけだ。人手不足で、ロボットがコーヒーを入れ、提供するカフェも増えている。接触を表す「コンタクト(Contact)」の反対、「アンタクト(Untact)」社会の到来だ。
最近、アンタクト社会の「完成形」のような現象が起きている。死すら誰にも知らせまいという人が出てきた。生を終える前に自身の持ち物を整理し、跡形もなく消えようという人たちだ。
NHKは最近、このように「蒸発」した身元不明の死亡者が2万人にのぼると、警察庁の統計を引用して報道した。社会学者の天田城介・中央大学教授は「最後まで(他人と)接触しようとしない現代社会の姿が現れている」と分析する。
韓国にも交友、恋愛などで不必要な人間関係をできるだけ減らし、一人の時間を過ごそうという20、30代を意味する「サルコギ世代」(注:サルコギは骨や脂身のない肉)という新造語が登場したと聞いた。
一人でいる時に感じる寂しさは耐えられるが、人間関係の中で感じる緊張感や疲労感はだんだん耐えられない世代が、日本でも韓国でも「出没」してきた。その先には、果たしてどんな世の中があるのだろう。そこでの「寂しい退場」まで、一人で耐えられるのだろうか。
(2018年5月31日付東亜日報 キム・ボムソク東京特派員)
(翻訳・成川彩)