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思い出すと恥ずかしい?「食の流行」追うより直感を

マイケル・ブースの世界を食べる
photo: Kitamura Reina

レーガンが米国の大統領だったあの頃、私はおしゃれをあきらめた。そう思わせるような写真があったのだ。

写真というものは、背景や説明なしにある瞬間の断片を閉じ込めて、それを未来永劫示す。そこに写る人がなぜストーンウォッシュのデニムや大きすぎるスニーカー、巨大な肩パッドなどをいいと思っていたのかを的確に伝えることは到底できやしない。そこにはただ、流行を追うのに必死の愚か者がさらされるばかり。

さて私が言いたいのは、1984年頃に撮った古い写真に写る自分がバンド「ヘアカット100」のメンバーのようないでたちだったもので、ちょっと恥ずかしくなったということである。

食べ物についても同じこと。食の流行は、追わない方が無難だ。わが人生、今となっては弁明に困るようなものもたくさん食べてきた。

たとえば80年代に一大ブームを巻き起こした、バルサミコ酢を煮詰めたソース。逆流してきた胃酸のような味、こぼれた重油のような見た目の代物を、人はなぜ欲するというのだろうか。

そして世界中のシェフは90年代、なぜ皿の中央にちょっとしたタワーのように料理を盛りつけることを自らに課したのか、だれか教えてくれないだろうか。座ろうとするたび目に刺さりそうになったものだ。

そんなことを考えていると、いつか鼻で笑いながら振り返るような現代の食の流行が他にもあるだろうかと気になってきた。インスタグラム(写真共有アプリ)では虹色の「ユニコーン」と称されたりする食べ物が人気だが、身の毛もよだつそのカラフルな色味は、味になんら関係のない着色料でできている(発がん性物質を含むものもありそうだ)。まあ長続きしないだろう。

ロンドンでは、朝食用シリアルのみを提供するというなかなか馬鹿げたカフェがオープンしたし、アボカドトーストだってそろそろお引き取り願いたい。つい最近も、(甘くない)セイボリーヨーグルトがアツいと読んだ。

そして東京では、こじゃれたポップコーンやロブスターロールに長い行列ができる。どちらも、別に道端で待たされてまで食べる価値があるわけでもない。

「健康食」という名の流行

しかし、私たちが最も悔やむことになるだろう食の流行といえば「健康食」、そのまやかしだろう。「ジュースダイエット」然り、「低脂肪」や「低カロリー」「グルテンフリー」「糖質ゼロ」を掲げる食べ物然り。「クリーンイーティング(自然食品などを食べること)」「デトックスダイエット」への熱狂ぶりときたら、もう最悪だ。

「低脂肪」食品のほとんどは、もともと「高脂肪」な農産物よりはるかに不健康なもの。有機飼育・栽培の牛肉やバター、オリーブオイルのほうが、「低脂肪」に成り下がったものよりよほどいいのだ。ダイエット食品は往々にして大量の添加物を含みがちだし、脂質を減らしたことで失われる味の代償として、かなりの塩分も投入される。一方で、消化するにもコレステロール値を調整するにも重要となる食材本来の繊維質は、口に入れるものを片っ端から絞っていたら破壊されてしまう。

そしてこの際きっぱり断言しておきたい。デトックスダイエットなるものは、存在しないのだ。それはもう生理学上、不可能な話なのだから。食べて体が「キレイに(あるいは細く)」なるわけではないのだ。

何年かすれば、私たちは虹色の食べ物やアボカドトースト、「クリーンフード」といった流行を、どうかしていたと言って懐かしむのだろう。パステルイエローのジャケットの袖をたくし上げていた、84年当時の私に対してのように。

ところで529日は「世界消化器健康デー」だったが、ご存じだっただろうか。どうか今からでも、胃腸をねぎらってあげてほしい。はやりものには見切りをつけ、己の直感を信じよう。(訳・菴原みなと)