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タブレットで遊んでいるのは…オウム!? タップは舌で、幼児向けアプリに興味津々

ニューヨークタイムズ 世界の話題 更新日: 公開日:
タブレットの画面でモバイルゲームを操作するオウム
タブレットの画面でモバイルゲームを操作するオウム。このゲームはオウムのエンリッチメントツールとしての可能性を秘めているが、オウム特有の生態に合わせて調整する必要がある=Interact Animal Lab via The New York Times/©The New York Times

オウムには幼児と多くの共通点がある。この頭のいい鳥は、色や形を認識したり、物を操作したり、大量の言葉を理解したり、自分の要求を信じられないほど大音量で伝えたりすることを学べる。

また、遊び好きで、知的で、好奇心も旺盛だ。それに、十分な認知エンリッチメント(訳注=その動物が備えている認知機能を引き出すような環境づくり)がないと、すぐに退屈してしまう。

だから、オウムをペットにしている飼い主は時々、幼児の親にはおなじみの手法を使う。つまり、画面を見せることができる手近な機器に手を伸ばすのだ。幼児向けのモバイルゲームやお絵かきアプリ、楽曲づくりプログラムなどでオウムを飽きさせないようにする飼い主もいる。

米ノースイースタン大学で動物とテクノロジーの関わり方を研究している科学者レベッカ・クラインバーガーは、「子ども向けアプリはオウムにとても人気がある」と言っている。

しかしながら、人間向けにつくられたアプリは、舌でタッチ画面を操作しがちなオウムには適していないかもしれない。

クラインバーガーと彼女の同僚による最新の研究によると、オウムはさまざまな独特のタッチ動作をすることがわかった(この研究は、英グラスゴー大学の動物―コンピューター間の相互作用研究室を率いるイリエナ・ヒルスキー・ダグラスとノースイースタン大学の科学者たちとの協働で行われた。2024年5月の学会で発表され、査読付きの学術誌への掲載を待っている)。

この研究結果は、端末アプリにオウムのエンリッチメントツールとしての可能性があることを示唆しているが、それはオウム特有の生態に合わせる必要がある。

「どうすれば、テクノロジーをオウムに特有の身体とニーズに対応させられるか?」。そうクラインバーガーは問う。

この研究を進めるために、研究グループは、人間がタッチ画面をどう操作しているかについて研究者や設計者がデータを集められるよう、特別仕様の携帯アプリを作成した。

アプリには一連の赤い丸が表示される。オウムに課されたタスクは、その丸をできるだけ速く正確につつくことで、その間にアプリはオウムがどのように画面にタッチしているかのデータを収集した。

ペットとして飼われているオウム20羽が対象になり、飼い主たちはごほうびと引き換えに赤丸に触れるよう自分のオウムを促した(ほとんどの場合、ごほうびはピーナツバターやヨーグルト、松の実などの食べられる物だったが、オウムにもそれぞれ独自の好みがあった。「エサにあまり興味を示さず、単に歓声をあげたり、ほめたりすることに一番反応したオウムもいた」とクラインバーガーは言っている)。

オウムがゲームのコツをつかんだところで、研究者らはオウムの成績とタッチ動作に関するデータの収集を開始した。オウムの行動は人間と比べれば正確さは劣るものの、画面をただ適当にタッチしているわけではないことが裏付けられるほどには良い成績を示した。

また、オウムのタッチ動作はさまざまな点で人間とは異なっていた。一例をあげると、オウムは舌を使って同じ標的を素早く何度もたたく傾向を示した。クラインバーガーは、まだ証明されたわけではないがとしたうえで、その行動はオウムがエサにする種子をついばむ際に舌を素早く動かす動作を反映したのではないかとする仮説を立てた。

クラインバーガーによると、オウムは人間よりもそっと画面をタッチしていた。そのためソフトウェアは必ずしもオウムのタッチに反応したわけではなく、オウムをいら立たせた。

オウムはまた、タッチしながら舌を引きずることが多く、画面の上で舌を動かしてから離すことがあった。「画面をなめることが実に多かった」とクラインバーガーは言う。オウム専用のソフトをつくる設計者は、この知見を活用して「なめられてもいいような」ゲームを制作すればいいと彼女は言っている。

研究者らは、人間は標的同士が近づくと動きが速くなる傾向にあるが、オウムの場合は標的同士が近くにあっても標的をたたく間に独特のタイムラグがあることも発見した。動画を見ると、オウムは「タップ・アンド・リトリート(タップして後退)」の動作をする傾向があり、画面に触れては離れ、次の標的に狙いを定めていることがわかった。

この行動は、オウムの目が舌にいかに近いかを考えると、理にかなっているとクラインバーガーは指摘する。オウムは、一つの標的をたたいてから次の標的との距離を測るため、画面から離れる必要があるのだろう。

オウムの飼い主の多くは、オウムがアプリを楽しんで使っているようだと報告したが、時間が経つにつれ興味を失ってしまうオウムもいた。クラインバーガーは、オウム向けの専用ソフトを設計すれば、オウムの関心を維持したり楽しみを増やしたりできるのではないかと期待している。

「動物たちとテクノロジーに関する研究の多くは、動物に何ができるかを理解しようとするものだ」とクラインバーガー。「私がいつも心掛けているのは、その問いを反転させること。つまり、人は動物のために何ができるのかということだ」(抄訳、敬称略)

(Emily Anthes)©2024 The New York Times

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