日々進化するコミュニケーションツール
ビジネスに特化したクラウドコミュニケーションツールとして、「対面よりも10倍良い体験を提供する」「目指すのは、リアル以上」をビジョンとして掲げる「Cisco Webex」(以下、Webex)。
前編ではWebexの基本的な特徴から、ノイズ除去機能やジェスチャー認識機能、投票機能、ブレイクアウトセッション機能など、オンラインでのビジネスをシームレスにする新機能を体験した。
後編では、ビデオ会議用デバイス「Cisco Webex Desk Pro」(以下、Webex Desk Pro)や、Webexの革新的な機能を体験。「会議の質が格段に上がった」「自宅にいても会議にリアルさがある」など評判のデバイスを使い、Webexの進化をみていく。これから実装予定の新機能もあるので、前回に引き続きシスコシステムズ社員の田邊靖貴(やすたか)さんに、特徴を聞きながら進めていく。
オンラインでの会議の質を格段にあげる専用デバイス
今回体験した専用デバイスWebex Desk Proは、27インチの4KウルトラHDのディスプレイを搭載した卓上モデル。デスクに置いてみると、スマートなデザインで画面の大きさに比べて圧迫感がない。またディスプレイ背面に端子部分を隠すカバーがあり、コード類がシンプルにまとまって見えるところもポイントだ。
セットアップはとにかく簡単。タッチディスプレイで「言語」「Wi-Fi」を設定して、アクティベーションコードを入力するのみ。PCやモバイルなどの設定に慣れていなくても苦労はなさそうだ。
スペックはかなりの高性能で、ディスプレイはノングレア液晶で光沢がおさえられているため、長時間眺めていても目の疲れが少ない。画面上部についたカメラはスライドを開閉することでカメラのオン・オフの操作が可能。さらに人物追従機能があるので、会議中に動いたとしてもカメラが自動で追ってくれる。スピーカーとノイズ除去機能付きマイクの質も高く、使ってみると相手の声を臨場感たっぷりにとらえていた。
会議に必要な機能は、すべて大画面のタッチディスプレイで操作できるのが、これまでのデバイスとは一線を画す。ほかにも専用のスタイラスペンを使って画面に直接書き込みができるホワイトボード機能があったり、付箋(ふせん)を貼り付けられたり、直感的に操作できるところに使い勝手の良さを感じる。
実際に使用して感じることは、大画面にくわえて質の高いカメラとマイクで会議をすることで、会議のレベルが格段にあがること。PCやタブレット、スマートフォンから会議に参加すると、他に起動しているアプリの影響を受け、画面が固まったり、音声が途切れたりということも少なからずあった。とくに大事なプレゼンや会議時などで失敗はできない。そんな場面でもWebex Desk Proがあればその心配を軽減できるだけでなく、ハイクオリティなコミュニケーションができるのだ。さらにこのデバイスは、Webexでの会議以外でも力を発揮するとのこと。
Webex Desk Proは、USB Type-Cでパソコンとつなぐことができ、高性能な外部ディスプレイ、カメラ、マイク、スピーカーとしてパソコン側で使うことも可能です。つまり、Webex Desk Proを4Kのセカンドディスプレイや高音質スピーカーとして使って在宅勤務の環境をリッチにしたり、Webex以外のウェブ会議サービスにWebex Desk Proのマイクやカメラ、スピーカーを使って入ることも可能です。USB-Cからノートパソコンの充電をすることもできるので、Webex Desk Proひとつあれば卓上環境がシンプルで高性能になります(田邊さん)
Webex Desk Proのような在宅勤務にぴったりなオールインワンのCisco Webex Deskシリーズのほかに、企業の会議室で使いやすいWebex Room Seriesなど、様々なビジネスシーンで活用できる製品がシスコには揃(そろ)っている。
すべてWebexを提供するシスコが手掛けるデバイスなので、インターフェースや操作性が統一され使いやすいだけでなく、Webexの革新的な機能も搭載されている。
会議室向けのデバイスは以前から幅広く提供していますが、ご自宅やオフィスの自席で使える製品も開発を進めています。2月には、Webex Desk Camera という 4KウルトラHDのUSBカメラを発売しました。暗い環境でも鮮明に人物を映すことができたり、ノイズキャンセリング付きの高性能マイクを搭載するなど、ビデオ会議で培ったシスコの技術がふんだんに組み込まれています。また、Cisco Headset 500/700 Seriesというヘッドセットもあります。とくにウェブ会議は映像や音声の品質がしっかりしていないと会議の質も下がってしまいますから、高品質なUSBカメラやヘッドセットがあるだけでも大きな変化があると思います
田邊さんの言う通りカメラやマイクの質によって会議の質が上がるのは、専用デバイスを使ってみるとよくわかる。ウェブ会議とはいえ、映像も音声も、とにかくクリアでリアルなのだ。
次は、Webex Desk Proを使いながら、Webexの新機能を体験していく。
リアルを超えるオンラインプレゼン
新機能のひとつは、オンラインプレゼンの質を一段上にあげてくれる「イマーシブシェア機能」だ。
従来のウェブ会議システムでは、プレゼンの際に資料を画面共有してプレゼンターは画面端の小窓で話すというレイアウトが多かった。こうなると参加者はふたつの画面を追わなければならず、とくに資料を見ているとプレゼンターにはあまり目がいかない。必然、臨場感の足りなさを感じていた。
この“臨場感”をウェブ会議にプラスしてくれるのが、Webexに新搭載されるイマーシブシェアだ。プレゼン資料とプレゼンターを一画面に合成できる機能だが、実際に田邊さんにイマーシブシェアの使い方を見せてもらう。
イマーシブには「没入した」という意味があるように、より没入感や臨場感のあるプレゼンテーションができる機能になっています。パソコンの画面とプレゼンターの映像を合成する機能なので、資料は静止画だけでなく動画を流すこともでき、プレゼンテーションの幅が広がります。ボタン一つで簡単にYouTuberになれるような感覚です。3月時点でイマーシブシェアはいま体験していただいているWebex Desk Proでお使いになれる機能ですが、Webexのデスクトップアプリでも5月頃に実装予定ですので、Webexを使っている方は誰でも使える機能になります
実際に資料と人物が一画面になったことでプレゼンを見る側は視線が一定になり、プレゼンの内容により集中することができた。リアルなプレゼンより、資料も表情も見やすく感じるほどだ。人物を合成する位置は、自由にレイアウトできるので、使い方の幅が広がりそうだ。プレゼンでかなりの強みを生むツールであると同時に、ウェビナーや講義など多くのシーンでオンラインコミュニケーションを進化させる機能だと感じる。
言語もシームレス化
Webexの新機能として、もうひとつ大きな話題を呼びそうなのが「リアルタイム翻訳機能」。
会議中に話された英語をリアルタイムで日本語をはじめとした他言語に翻訳して画面下にキャプションで表示してくれる機能なので、英語の聞き取りに不安があってもこの機能により格段に作業効率があがりそうだ。海外との取引が多い企業にとってのメリットはもちろん、今後海外進出を狙う企業やビジネスパーソンにとっても強い味方になってくれるだろう。取材時はまだリリース前だったため、田邊さんに特徴を聞いた。
リアルタイム翻訳の機能は、Webex Assistant というWebexの音声アシスタントが提供する機能の一つです。Webex Assistantが聞き取った英語を、日本語をはじめとした100カ国語以上の言語に翻訳する機能を今年の春に実装します。翻訳された言葉はリアルタイムに会議の中で字幕として表示もされます。また、現在は英語だけですが会議の議事録をとる機能もあり、議事録の中には自動生成された要約(ハイライト)が含まれ、また発言内容をクリックするとその時の音声を再生することも可能です。時間があいて見直しても誰の発言だったのか迷うことなく振り返りができます。何度も出てきた単語など重要なポイントや単語はワードクラウドで視覚化されますので、会議を直感的に振り返ることやアイデアを考えるときの参考にすることも可能です
この機能は、まさにWebexが目指すゴール「地理や言語に関係なく、すべての人が平等に世界経済に参加できる未来を作る」のひとつ。もっと進化して日本語を英語に翻訳する機能もつけば、ビジネスチャンスがさらに大きく広がりをみせる可能性を感じる。
Webexを体験してみて
世界165カ国以上で使われ、各国政府や官公庁、金融機関、国際会議などで活用される信頼性とセキュリティーの高さもビジネスには欠かせない要素だが、Webex Desk ProでWebexの新機能を体験してとくに感じたのは、操作性の良さをふくめたシンプルなデザインと、リッチなテレワーク環境は、デバイスとツールで作れるということ。
Webexの新機能には「リアル以上」を感じるものが随時追加されていて、また専用デバイスはテレワーク環境をどんどん進化させてくれて質の高いビジネスを進めることができる。テレワークやオフィス問わず、どこからでもハイクオリティーな会議やコミュニケーションを取るための要素が詰まったWebexと専用デバイス。今後さらにどんな進化をみせてくれるのか楽しみだ。