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オーバーツーリズム対策、ついにホテル新設禁止へ アムステルダムが選んだ苦渋の決断

ニューヨークタイムズ 世界の話題 更新日: 公開日:
アムステルダムの歓楽街にたむろする観光客たち
アムステルダムの歓楽街にたむろする観光客たち。観光客の爆発的な増加に対応するため、市当局はホテルの滞在者数を年間計2千万人以下に抑えることを目標に、ホテルの新設を禁止している=2018年6月10日、Jasper Juinen/©The New York Times

オランダの首都アムステルダムは毎年、この都市を訪れる観光客の数を抑える方法を探ってきた。

2023年3月には、18歳から35歳の英国人男性を主なターゲットに広告を使ってキャンペーンを展開し、「来ないでよ」と呼びかけた。7月には、クルーズ船がアムステルダムの中心部で接岸するのを禁止すると発表した。

アムステルダムはまた、歓楽街の混雑を緩和しようと長い間努力してきた。粗暴な観光客の一団が地元住民に迷惑をかける事態がよく起こるのだ。マリフアナ喫煙に関する規則も一段と厳格化した。また、観光客向けの店の新規出店も禁じた。それでも、観光客の人波は絶えない。

運河や17世紀の芸術、そして合法的な性産業やマリフアナ使用の容易さで知られるこの都市はいま、爆発的に増え続ける観光客の制限をさらに強化するため、もう一歩踏み出した。ホテルの建設を禁止しているのだ。

市議会は「アムステルダムはホテルの新設に『ノー』と言う」という声明を出した。「私たちは、住民と訪問者にとって住みやすい都市をつくり、維持することを願っている」。声明は、そう言い添えている。

アムステルダムは、ホテルに滞在する観光客を年間2千万人以下に抑えるよう努めていると付け加えたが、市のデータによると、新型コロナウイルス大流行以前の2019年には、過去最多の2520万人に達した。

2023年、アムステルダムに滞在した観光客はこの数を上回ったが、これには民泊やクルーズ船上で宿泊する短期滞在者は含まれていない。また、宿泊しない日帰り客の数も除外されている。

ホテルの新設禁止は、観光客の数を減らすという同市の目的を明確に伝えるが、同時に象徴的な意味合いも大きい。

ホテル建設に関する規制はすでに厳格で、市によれば、2017年以降で要件を満たした計画はわずか3件しかなかった。承認済みか、建設中の新規ホテルは合計26あり、これらについては目下のところ続行が認められている。

新しい規則だと、新規ホテルは既存のホテルが閉鎖された場合にのみオープンできる。市によると、ホテルの部屋数も、既存の部屋数以上は増やせない。

「こうした規制の影響は、さほど大きくはないだろう」とオランダ・ロッテルダムにあるインホラント大学の新都市観光学教授コー・コーエンスは言う。長期的には、総ホテル数の制限は宿泊料金高騰の要因になりうるとみている。

コーエンスは、この禁止措置だけではアムステルダムへの観光客数を大幅に減らせはしないが、他の施策と合わせると、観光地としてのこの都市の魅力があせるかもしれないと指摘する。しかし、「いまのところ観光客たちは気にしていないようだ」と彼は言っている。

政府機関のオランダ統計局によると、アムステルダムにはホテルの客室が計4万2千室近くあり、9万2千人以上を泊められる(オランダ全体では、ホテルの客室数は15万室超ある)。

観光業を抑制するアムステルダムの取り組みは、主に混雑した市の中心部に力点が置かれてきた。しかし、アムステルダムのスキポール空港が欧州の主要なハブ空港であり続ける限り、観光客をこの都市から遠ざけるのは容易ではないだろう。

「単純な解決策はない。事情はすごく複雑だ」とコーエンスは言っていた。

アムステルダムは2024年4月中旬、水域に停泊するリバークルーズ船の数を減らし始めることも発表した。その数は2023年には2125隻だったが、同市は2028年までに約半分の1150隻以下に抑える意向だ。

この取り組みによって、市は街を訪れる観光客の数を27万1千人減らせると予測する。住民の生活の質を向上させ、排ガスと混雑を減らすことが期待されている。

「市内のバランスを改善する必要がある」とアムステルダムの港湾を担当する副市長へスター・フォン・ビューレンは声明で述べている。

欧州の主な観光地で、増加する観光客への対応に苦慮しているのはアムステルダムだけではない。

イタリア・ベネチアは、観光シーズンたけなわの4月25日から7月中旬までは、週末及び一部の祝日、観光名所である市中心部を訪れる日帰り客から5ユーロ(約825円)の入場料を徴収すると発表している。

アムステルダムは現在、有名なチューリップの開花目当てに観光客が押しかけている。ベネチアのような措置は発表していないが、今回のホテルの新設禁止のような観光客数を制限するためのさらなる取り組みや実験が行われる可能性がある。

「そうした抑制措置がなければ、アムステルダムの中心部は一つの大きな『宿泊施設』になってしまうだろう」とコーエンスは言い、「そうなることも避けたい」と続けた。(抄訳、敬称略)

(Claire Moses)©2024 The New York Times

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