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汚職や腐敗の状況を指数で公表 国際NGOが見る先進国の「政治とカネ」の課題は?

World Now 更新日: 公開日:
透明性インターナショナル本部の「政治の誠実性」問題責任者ヨン・ブルシ氏=2024年2月16日、ベルリン、大牟田透撮影

「政治とカネ」の不透明な関係は、汚職や利権政治の温床になります。世界の腐敗状況を監視し、様々な警鐘を鳴らしている国際NGOは先進国の現状と課題をどうとらえているのでしょうか。日本が改善すべき点は何でしょうか。

国際NGO「透明性インターナショナル」(本部=ドイツ・ベルリン)が毎年発表する汚職認識指数(CPI)は、各国の汚職や腐敗の状況を他国と比較でき、改善や悪化の経年変化を分かりやすく示す指標として知られる。欧州評議会など、多くの国や国際機関、企業などが注目する。

2023年の指数は、公共部門における透明性や腐敗について専門家に尋ねた世界銀行の調査など、13の調査データを総合して今年1月末に公表した。180の国・地域を0点(汚職が非常にはびこっている)〜100点(非常にクリーン)で採点し、3分の2以上の国が50点未満で、大多数の国は過去10年間進歩していないか後退していると総括した。23カ国は過去最低のスコアにとどまったという。

デンマーク(90点、1位)、スウェーデン(82点、6位)など北欧諸国が上位を占め、ドイツ(78点、9位)、日本(73点、16位)、米国(69点、24位)などが続く。主要7カ国(G7)ではイタリア(56点、42位)が最下位だ。アジアではシンガポール(83点、5位)が最高で、韓国(63点、32位)、中国(42点、76位)などとなっている。

国境越えるカネ、揺らぐ「法の支配」

西欧などの先進国が高く、アフリカなどの途上国が低い傾向は変わっていない。だが、本部で政治家の誠実さの問題を担当するヨン・ブルシ氏は「歴史的に比較的清廉だった西欧も、マネーロンダリングなど国境を越えた不透明なカネの流れの増加や、法の支配を揺るがす強権的な政治の台頭と苦闘している」という。スウェーデンやオランダ、アイスランド、英国などのスコアは過去最低だった。

2023年の汚職認識指数(CPI)の世界地図。色が濃い国・地域ほど汚職や腐敗が目立っている=透明性インターナショナル作成

透明性インターナショナルは汚職を私的利益のために委託された権力を乱用することと定義し、汚職は信頼を損ない、民主主義を弱体化させ、経済発展を妨げ、不平等、貧困、社会分裂、環境危機をさらに悪化させると主張する。

「政治とカネ」に関して、世界、特に先進国はどんな課題を抱えているのか。

ブルシ氏は「裕福な実業家や企業が政党の選挙運動に資金を秘密裏に提供していたら、こうした政党の政策が一般市民のためになるかは分からない。政治における誠実さというだけでなく、民主主義にとって、意思決定者が公益のために行動しているか知るのは重要なことだ」という。

昨年末に分析したところ、2024年に国政レベルの選挙がある約70カ国のうち、政治資金について十分な情報開示が義務づけられているのはわずか8、9カ国に過ぎなかったという。「政治に使われる資金を報告すること、さらに監督機関や外部専門家によって管理されていることが必要だ」

本部のあるドイツでは、ある政党の支持者が政党に直接寄付する代わりに、選挙ポスターの印刷費として印刷会社に数百万ユーロ(数億円)を寄付していたことが問題になっているという。こうした第三者からの間接的な資金提供も計上させるようにしなければならないと話す。

より危険な地政学的要素もある。外国の政府が政治に影響を与えようと、出どころを隠して政治資金を提供することができれば、知らぬ間に民主主義が乗っ取られる恐れも生じるからだ。

「献金や選挙費用には制限が要る」

企業や団体、個人が政府などの政策や決定に影響を与えるために行う「ロビー活動」は、誠実さと透明性があれば正当な手段になる。一方で、献金が大きすぎると政策をゆがめかねない。だから、企業献金などには一定の制限が必要だとブルシ氏はいう。「例えば、国と取引関係がある企業の献金は禁止されるべきだ。一個人や一企業の献金が、一般市民の平均的な献金レベルをはるかに上回るのは健全でない」

同様の理由で選挙費用の制限も必要という。「私たちは資金の多寡で選挙結果を左右されたくない。より良いアイデア、人柄などで政治家を選びたい。一般的に女性やマイノリティーは資金集めが難しく、選挙費用に制限がないとさらに不利になる」

日本は政治資金データの電子化が課題

ブルシ氏は「政治資金規正法や公職選挙法がある日本は、世界の多くの国より優れている」としつつ、報告データが電子化されず、市民やメディアのアクセスが容易でない点が大きな課題と指摘する。政治活動の支出の詳しい公開が義務づけられていない点にも批判的だ。「政治家が集めたカネは、私的なお金でも彼らが権利を持つお金でもない。こうしたカネについて、プライバシーや秘密主義は許されない。自民党のパーティー券問題のように、国民の政治不信を招く」

30年近く前、日本で政党助成法が導入された際には、政党の活動を税金で支援する代わりに企業・団体献金は禁止する方向だったはずだ。それが今に至るまで温存されてきた。お金を持たない人や若い企業をないがしろにする「カネで動く政治」が、社会の歩みや経済の新陳代謝を遅らせてきた面はないのだろうか。「失われた30年」を考えずにはいられなかった。