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暑い土地にガラス張りの建築は時代遅れ フランシス・ケレ氏「大地に戻るときが来た」

World Now 更新日: 公開日:
ブルキナファソ出身でベルリン在住の建築家フランシス・ケレさん=Astrid Eckert氏撮影
ブルキナファソ出身でベルリン在住の建築家フランシス・ケレさん=Astrid Eckert氏撮影

その土地の環境に合わせた素材と構造の建築

鉄筋やコンクリートを大量に使う近現代の建築は、比較的寒冷な西洋の文化圏で生み出されたものです。にもかかわらず、アフリカでも広がってきました。土や泥といった地元の素材を使った、アフリカの気候に適した建築法が古くから存在してきたにもかかわらず、西洋式を模倣してきたのです。適材適所でないこの方法は、間違っています。

私は、土や石など自然の素材を好んで使いますが、必要があればガラスや金属も使います。単純に、コンクリートが悪い、土が優れている、というわけではありません。

例えば粘土を使うなら、濡れて壊れないように、セメントを混ぜたり、岩やコンクリートなどで基礎を固めたりする必要があるでしょう。重要なのは、その土地の気候や土壌、地盤など環境に合わせて素材を選び、構造をつくりあげることです。

最も大切にしているのは、人々が快適に過ごせる空間を生み出すことです。玄関のドアを開けて「あぁ、家に帰ってきた」とほっとする。朝、目が覚めて「よく休むことができた」とエネルギーに満ちた一日を迎える。住人や利用者にとっての快適さだけではありません。隣人を含めた周りの環境や、その未来まで、考える必要があります。

フランシス・ケレさんが設計した故郷ブルキナファソ・ガンド村の初等学校=Erik-Jan Ouwerkerk氏撮影
フランシス・ケレさんが設計した故郷ブルキナファソ・ガンド村の初等学校=Erik-Jan Ouwerkerk氏撮影

私が生まれ育ったブルキナファソは、経済的に豊かな国ではありません。故郷の村では、いまも多くの人々が自然の素材を使って家を建てています。大工の専門学校を経て、ドイツで建築を学び、建築家となってからも、自然と調和した建築を考えることは、私にとって、ごく当たり前のことでした。

基本的なことですが、常に、入手可能な材料を使い、環境に負担をかけない方法をとるように心がけ、また、特別な技術がなくても、地元の人々の力だけで維持できる素材や構造を採り入れてきました。快適な空間をもたらす優れた建築は、決して、経済的に豊かな人だけのためのものではないのです。

ただ、残念ながら今日でも、アフリカの多くの地域で、土や泥を使った建築は「前近代的で、貧しい」とみなされています。人々の意識を変えるのは、簡単ではありません。しかし、暑い地域にガラス張りの建物を建て、冷房のために無駄なエネルギーを消費するのを「近代的だ」とするのは、もはや時代遅れです。

コミュニティーに技術伝えながら建てる学校

フランシス・ケレさんが設計した故郷ブルキナファソ・ガンド村の初等学校=Siméon Duchoud氏撮影
フランシス・ケレさんが設計した故郷ブルキナファソ・ガンド村の初等学校=Siméon Duchoud氏撮影

1999年にベルリン工科大学の卒業設計として始めた故郷ガンド村の初等学校のプロジェクトは、いまも進行中です。外国から輸入した金属やコンクリートを使い、外からやってきた職人が建てておしまい、ではなく、地元の土を使い、住民らに技術を伝えながら、コミュニティーとともにつくりあげてきました。

これまでに200人以上の若者たちに技術を教えました。彼らは地元で職を得ることができ、村を出て行く若者はごくわずかです。建物だけでなく、地域の社会や経済に大きな循環を生み出しています。

しかし、グローバルサウスと呼ばれるような世界の多くの地域で、若者たちがよりよい仕事や生活を求め、故郷を離れています。ヨーロッパを目指して砂漠を歩いて越えようとしたり、海をボートで渡ろうとしたりして、大勢が命を落としている。

私の夢は、ガンド村でのプロジェクトを、西アフリカ、さらにはアフリカ全体のための建築技術のトレーニングセンターにすることです。

ブルキナファソ出身でベルリン在住の建築家フランシス・ケレさん=Erik Petersen氏撮影
ブルキナファソ出身でベルリン在住の建築家フランシス・ケレさん=Erik Petersen氏撮影

建築は、非常に多くの資源を消費し、CO₂排出の多くを占める分野です。私たち建築家は、この問題の中心にいます。気候危機を回避するために、行動しなくてはなりません。

西洋的な都市は、上へ上へと建物をつくることで、人口密度を高めてきました。しかし、建物が高くなればなるほど、コストもエネルギーもかかります。高層ビルは、あまりに多くの資源を消費しています。

気候変動の解決策として、西洋のコピーではない、伝統的な素材や建築を再評価する新しい動きが、アフリカのあちこちで起きています。大地に戻るときが来た。そう考えます。