「3Dプリントというと樹脂のイメージが強いかもしれませんが、実際はこの5年ほどで素材の幅が大きく広がっています」
そう話すのは、兵庫県西宮市の住宅メーカー「セレンディクス」代表の小間裕康さん(46)。
同社はこれまでに、10平方メートルの球体型と、水回りを完備した50平方メートルのフジツボ型の2種類の3Dプリント住宅を発表した。価格はそれぞれ330万円と550万円(税抜き)だ。
2018年創業のセレンディクスは、「車を買う値段で、家を買う」を掲げ、従来の1/10という価格帯に注目が集まる。3Dプリンターによるコスト削減は、同時に環境対策にも貢献できると、小間さんは言う。
高さ数メートルの建設用3Dプリンターでパーツをあらかじめ出力し、現地に運んで組み立てる。速乾性のコンクリートを使うことで、厚さ30センチで中が空洞の二重構造の出力を実現。壁だけでなく屋根までの一体成形が可能になり、強度や断熱性も兼ね備える。
施工時間は10平方メートルタイプで23時間、50平方メートルタイプで44時間。作業の大半を機械化したことで、人件費や工期を大幅に減らすことができた。
コンクリートだけの出力も可能
現行の建築基準法にあわせるため、現在は鉄筋や鉄骨を一部使っているが、構造上はコンクリート単一の素材で建設することが可能で、素材コストや複雑な建設工程もカットできるという。
鉄筋や内装材とあわせて使われてきたコンクリートは再利用が難しいとされてきたが、コンクリートだけで出力することで、解体後の可能性も広がる。CO₂を吸収するコンクリートなどの開発も進んでおり、新しい素材や技術を取り込みやすいのも特徴だという。
「3Dプリント住宅で、都市一極集中型の社会を変え、人々の暮らしをより豊かに変えていきたい」と小間さん。
建設用3Dプリンターのシェア上位は欧州や中国の企業が占め、3Dプリント住宅の開発も進む。