日本記者クラブ(東京都千代田区)で会見したのは、作業部会の議長のダミロラ・オラウィ(Damilola Olawuyi)氏と、アジア・太平洋地域メンバーのピチャモン・イェオパントン(Pichamon Yeophantong)氏の2人。
両氏は7月24日~8月4日の12日間、日本を初めて公式訪問。東京や大阪、愛知、福島などを訪れて、日本政府や地方自治体、労働組合、日本企業の人権順守の取り組み状況などについて調べた。
会見でオラウィ議長は、日本で「ビジネスと人権」分野でリスクにさらされている集団として「特に女性やLGBTQI+、障害者、部落、先住民族と少数民族、技能実習生と移民労働者、労働者と労働組合のほか、子どもと若者」に「明らかな課題がある」と述べ、「リスクにさらされた集団に対する不平等と差別の構造を完全に解体することが緊急に必要だ」と指摘。
その上で、「政府はあらゆる業界でビジネス関連の人権侵害の被害者に、透明な調査と実効的な救済を確保すべきだ。私たちは、日本に独立の国家人権機関(NHRI)の設置を求める」と述べた。
調査団は7月25日と28日に、ジャニー喜多川氏から性被害を受けたと訴えている元ジャニーズJr.らでつくる「ジャニーズ性加害問題当事者の会」のメンバーとも面会した。ジャニーズ事務所側の「代表者」(representative)とも面会したことを明かした。会見では質問がこの事案に集中した。
オラウィ議長は、「人権侵害があったという告発があった時は、どのようなものであれ真剣にとらえて、指導原則にのっとった形で適切な調査を行うことが重要だ。その際には、調査は透明性をもった正当なものでなければいけない。被害者に対しては謝罪であれ、金銭的な補償であれ、きちんと救済が提供されなければいけない。そしてすべてのステークホルダーがそのような救済へのアクセスを担保しなければいけない」と述べた。
イェオパントン氏は、「ジャニーズ事務所に限った話ではないが、日本全体で『ビジネスと人権』では大きな進展が見られるが、システミックな課題が残っている。深く根ざした不公正なジェンダー規範、社会規範に対応していく必要がある。日本の状況はチャンスもあれば課題もある」と述べた。
国連人権理事会は2006年に国連総会の下部組織として設立され、人権の緊急事態に対処したり、人権侵害を防いだり、国連加盟国の人権順守の監視や支援をしたりしている。国連総会で選出された47理事国による決議は拘束力を持たないが、国際社会の意思として尊重される。
作業部会は2011年に人権理事会によって設立され、同年に理事会で合意された「ビジネスと人権に関する指導原則」の普及・促進、実施を各国に促す役割を担う。指導原則の実施に関する評価と勧告も行う。国連や加盟国政府から独立した人権の専門家で構成され、今回、5人いるメンバーのうち2人が調査団として来日した。
作業部会は、今回の調査結果の報告書を2024年6月の人権理事会に提出する予定だ。
4日夕、国連の作業部会メンバーに続いて、「当事者の会」メンバー7人が同じ日本記者クラブで会見。代表の平本淳也氏は「国連(作業部会)の会見を(別室で)見ていた。あそこまで語ってくれるとは思わなかったので、逆にびっくりした。真摯に受け止めてくれたこと、僕たちに勇気をくれたという印象」と述べた。
また「まずはジャニーズ事務所が性加害を認めて謝罪をする、それがなされていない。もどかしさを感じるが、僕らの目的がそこにある以上、それを求めていく」と述べた。