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川澄奈穂美が感じた日米女子サッカーの「違い」 待遇向上のための闘い、間近で見た

People 更新日: 公開日:
女子サッカーのW杯でボールを追う川澄奈穂美選手
女子サッカーのW杯でボールを追う川澄奈穂美選手=2015年7月、エドモントン、高橋雄大撮影

試合のライブ配信 知ってもらうきっかけに

NWSLは昨年、総観客数が100万人を超えた。10月の昨季のプレーオフは平均視聴者数も前年比71%増の91万5000人と記録を更新した。

これらは男子のMLSと肩を並べ、今後は、配信権の大幅な増額が期待されている。川澄選手も配信サービスの可能性を強く感じている。

「ネット配信ではどのくらい見られたかが分かる。それは市場にアピールしていく上でいい指標になる。これだけ見られたというのは、インパクトがありました」

川澄奈穂美選手
川澄奈穂美選手。2023年も米国のNWSLでプレーする=インフィニティ提供

アメリカでは、NWSLの試合は、「Paramount+(パラマウントプラス)」という有料動画配信サービスで流されている。自身も、それを見ながら研究している。試合が多い日は、3画面で見る時もある。

日本からは、NWSLの試合はストリーミングサービスの「Twitch(ツイッチ)」で見られる。

「ファンの方は早朝でも見てくださっている。リーグが海外に向けて、無料でライブ配信してくれるのはありがたいです」

アメリカでは、365日24時間、サッカーやテニス、バスケットボールなど女子スポーツを配信するビジネスも立ち上がっている。

「女性でもこういうスポーツがある、ということを知ってもらうきっかけになる。ライブストリーミングの発達や発展はすごく重要なこと。女性のスポーツはすごく伸びしろがあります」

NWSL(全米女子サッカー)の試合=ロイター

日本に比べ環境充実 それでも存在する男女格差

アメリカは日本に比べて環境も充実している。練習は天然芝のグラウンドだ。ロッカーやミーティングルームも備え、スポーツジムも使える。それでも、男女の格差はあるという。

米女子代表チームのメンバーの一部が16年に、男女間の代表の待遇差について、雇用機会均等委員会に不服を申し立て、19年には代表選手らがサッカー連盟を相手に訴訟を起こした。

22年5月、米国サッカー連盟は男子と女子の代表チームの待遇を同じにする協約を両チームと結んだ。そうした動きを、間近で見ていた。

ロンドン五輪のカナダ戦で、先制ゴールを決めて喜ぶ川澄奈穂美選手
ロンドン五輪のカナダ戦で、先制ゴールを決めて喜ぶ川澄奈穂美選手=2012年7月、矢木隆晴撮影

「W杯の11年大会のアメリカ代表で、決勝で対戦したアリー・クリガーという選手がチームメート。彼女はもう、代表じゃないけど、下の世代に何を残していくかというところを強く発言していました。昔、W杯で何回優勝しても男子と同じ待遇ではなかった選手たちが、後輩や女性のために闘っていたのが、印象的でした」

女子サッカーが〝闘い〟に勝てたのは、人気、実力を備えていたからだと思っている。

「米国は女子スポーツというと、サッカーが出てくるぐらい人気。競技人口は180万人くらい。日本ではW杯で優勝した時、10万人を目指そうと言っていた。米国では、スポーツを見るのが文化になっています」

一方、21年に始まった日本初の女子サッカーのプロリーグ「WE(ウィー)リーグ」は、観客動員数が伸び悩み、苦戦が続く。日本と米国でプレーした経験を持つからこそ、こう思う。

「アメリカは、試合の演出もスタジアムの雰囲気もいい。道具の手配や練習着の洗濯をしてくれるスタッフさんもいる。日本ではありえないことが、全チームで当たり前。(日本でも)努力して、価値を作り上げ、選手から見ても、魅力的なリーグにしないといけないと思います」

今季もアメリカでプレーする。

「日本でやっていた時よりも、感情的にサッカーができています。楽しいが爆発している感じ。スタジアムでファンの方と一体となれます。それが米国の魅力。チーム内の競争で勝って、試合に出続けて、得点に絡んでいきたい。まだまだ現役をやりたいなという気持ちがある。やり続けていきたいと思います」