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アングル:ロシア産石油輸出、大半が価格上限回避へ G7計画の限界露呈

World Now 更新日: 公開日:
ロシアのナホトカ港
10月21日、ロシア産石油に価格上限を設ける主要7カ国(G7)の措置について、ロシアはおおむね回避できる見通しだ。ロシアのナホトカ港で6月13日撮影(2022年 ロイター/Tatiana Meel)

G7は先月、ロシア産石油の輸入価格に12月5日から上限を設定することで合意した。しかし、業界大手からは石油貿易が世界規模でまひする恐れがあると悲痛な声が上がった。

計画を主導する米国が保険や貿易、海運などの企業と数カ月間にわたる話し合いを行った結果、こうした企業が制裁の影響を被るとの懸念は和らいだ。

だが、ロシアは自国の船舶やサービスを駆使して価格上限措置をほぼ回避できると、今では全ての関係者が認めている。

G7の措置に対するロシアの石油貿易に関する耐性についての見通しや、米政府の石油・サービス業界との協議の詳細は、これまで報じられたことがなかった。

米財務省筋は、ロシア政府が制裁回避を模索すれば、同国産石油輸出の最大80―90%が価格上限措置の枠外で継続できるとの試算について、不合理ではないと認めた。

同筋によると、今回の措置で日量100万─200万バレルのロシア産の原油と精製品の輸出が止まる可能性がある。これは考え得る複数のシナリオの1つであり、ロシアが上限措置に従うかどうかは不明だという。

ロシアの9月の輸出は日量700万バレル。

ロシアはこうした規模で石油輸出が止まれば財政的、実務的な面で困難に見舞われる可能性がある。

一方で諸外国もインフレが進み、不況が迫っているタイミングで、世界の石油の全供給量の1─2%を失うことになる。

先の米財務省筋は、この措置を回避するために一部の船舶が国籍を変更したり、取引主体が上限措置回避のためにG7の枠外にシフトしたりといった動きを認識していると付け加えた。

ロシアは船舶の航行距離が伸びる、保険と融資の条件が悪化する、といった形でコストを負うことになると同筋は指摘。米国はロシアが時間の経過とともに価格上限内で石油を販売せざるを得なくなることを楽観視していると述べた。

インドと中国はこの数カ月間、ロシア産石油を大幅に割安な価格で購入しているが、どちらも価格上限措置に合意していない。インドは最近、この措置を検討する方針を示した。

影の船団

資源商社大手・トラフィギュラの液体貨物部門グローバルヘッド、アンドレア・オリビ氏は「理論的には12月5日以降もロシア産石油の流れを継続させるのに十分な規模の『影の船団』が存在する」と述べた。こうした船舶の多くは自家保険に入るか、ロシアの船主責任(P&I)保険に加入することができる見通しだという。

米JPモルガンは、ロシアが中国とインド、さらには建造から20年近くと業界基準では比較的古い自国の船をかき集めて、価格上限措置をほぼ完全に回避すると予想。影響は軽微だと見込んでいる。ロシアの今年12月の石油輸出は9月実績比の落ち込みがわずか日量60万バレルにとどまる見通しだという。

スイスの資産運用会社ジュリアス・ベアの経済・次世代リサーチ部門責任者、ノルベルト・ラッカー氏は、船舶だけでなく、船舶や石油貨物の流れを維持するために必要なサービスにも動きが見られると指摘した。ロシア産石油は今ではジュネーブやロンドンではなく中東のトレーダーが扱っているという。

自分の足を撃つ

欧州連合(EU)の法律に従う損保会社は世界の外航船舶の約90%の保険を扱っており、EUの政策次第でロシア産石油輸出の大半が止まる可能性があった。

EUは今月、価格上限措置を批准したが、詳細はまだ決まっていない。

米当局者によると、今回の措置は価格が上限以下で販売されたことを企業が簡単に実証できるように「オーダメード」方式になっている。

また、業界に懲罰を与える措置にはならないように設計されており、証明書を集中的な登録機関に提出するよう義務付けることはしない方針だという。

事情に詳しい業界関係者は証明書の扱いに関するこうした方針を「前向き」と評価し、保険会社自体が措置を実行するのは無理だということを米政府が理解したとの見方を示した。

ウッドロー・ウィルソン国際学術センターのグローバルフェローで米国務省のエコノミストだったダニエル・アーン氏は、対ロシア制裁に加わった国は石油貿易に対する自らの支配力を過大評価しており、自分たちが被る悪影響を減らすために政策の変更と明確化を行ったと指摘。価格上限措置は「船舶輸送による輸入の完全停止よりもダメージの小さいものになるだろう。自分で自分の足を撃ち、今になってちょっと包帯を巻こうとしているようなものだ」と述べた。

(Noah Browning記者、Dmitry Zhdannikov記者、Jonathan Saul記者)

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