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「ジオゲッサー」が人気沸騰 Googleストリートビュー使い、世界のどこか当てるゲーム

ニューヨークタイムズ 世界の話題
地理推測ゲーム「ジオゲッサー」の象徴的な存在になったトレバー・レインボルト
地理推測ゲーム「ジオゲッサー」の象徴的な存在になったトレバー・レインボルト=2022年7月1日、ロサンゼルス、Jack Bool/©The New York Times

グーグルマップのストリートビューで見たような平凡なハイウェーや木々が画面に現れた。そこはオーストラリアのタスマニアかもしれないし、米国のテキサスかもしれない。世界津々浦々、どこであっても不思議はない。

「ここはフィリピン南部に向かう途中の、どこかの道だ」。トレバー・レインボルトは即座に答え、その地点から11マイル(約18キロ)以内の世界地図上の場所をクリックした。

次は森林の中を曲がりくねった道路だった。タホ湖(米国)? それともシベリア? 「日本でなければ、スイスのどこかに向かっているようだ。そう、ここは日本に違いない」。レインボルトは、その国を正確に特定した。

レインボルトは、GeoGuessr(ジオゲッサー)と呼ばれる推測ゲームを楽しむ地理マニアの象徴的な存在になっている。急速に仲間が増えている集団だ。

ゲームのやり方は単純だ。パソコンかスマホに目を凝らすと、グーグルのストリートビューで世界のある場所に放り込まれる。その場所はいったいどこなのか、できるだけ早く正確に特定するのだ。

クリックして、道路を行き来したり都市を抜けたりして、識別出来るランドマークやそこで使われている言葉を調べる。推測が正解に近いほど、ポイントを多く稼げる。

レインボルトの素早い推理が魔術のように見える人もいる。しかし、彼にしてみれば、それは長期にわたる練習と地理の知識に対する飽くなき探究心の結果にすぎない。

「自分が天才だなんて思わない」とレインボルトは言う。23歳で、ロサンゼルス在住のオンラインビデオのプロデューサーだ。「マジシャンのようなもの。手品師にとっては、トリックは簡単だけど、他の人にはすごく難しくみえるのかもしれない」と彼は言う。

レインボルトはジオゲッサーのトッププレーヤーではない。世界最高のプレーヤーといえば、Geostique(ジオスティーク)の名で知られるオランダ人の若者や、Blinky(ブリンキー)という名前のフランス人が挙げられることが多い。

ところが、今年初めごろからレインボルトがジオゲッサーの旗手になった。ソーシャルメディアへの彼の魅力的な投稿のおかげだ。彼の投稿は、TikTok(ティックトック)などのプラットフォームで82万人のフォロワーが共有している。

レインボルトはパーカを身にまとい、時にはヘッドホンをつけて登場し、ドラマチックなクラシック音楽をバックに、空の様子や木々をちらっとみただけで、そこがどこの国かを特定してみせるのだ。

ストリートビューの画像を10分の1秒だけ見て、あるいはモノクロで見て、あるいは画素化されたものを見て、彼はその場所を正確に言い当てる。上記全部の条件を重ねても特定できる。その他にも、彼は目隠し状態で、誰かから提供された説明をもとにして正確に推測してみせる。

一番衝撃的だったのは、レインボルトが地形探査法を使ってミュージックビデオが撮影された場所を正確に特定した動画だ。

あるバイラルクリップでは、カピバラと一緒に車を運転している人物の動画をもとに、彼はそこがネバダ州の道路であることを正確に突き止めた。「もし私が行方不明になったら、私を探し出すために、この人を雇ってほしい」。これは、あるツイッターユーザーの書き込みだ。

ジオゲッサーは2013年、スウェーデンのソフトウェアエンジニア、アントン・ウォーレンが作成したゲームである。米国横断のトレッキング中に着想を得たという。

そして、英国のユーチューバー、GeoWizard(ジオウィザード)のようなインフルエンサーたちが当初、このゲームの普及に一役買った。

また、多くのプレーヤーが同時に戦うバトルロワイアル方式が導入され、パンデミック(感染症の世界的大流行)の間に人気を博した。

レインボルトのソーシャルメディアへの投稿が、ゲーム人気をいっそう後押しした。彼は6月の宣伝キャンペーンで、ルドウィッグ・アーグレンと一緒にライブ配信をした。

アーグレンは元Twitch(ツイッチ=動画配信用プラットフォームの一つ)の有名人で、現在はユーチューブで300万人のフォロワーに向けて動画配信を展開している。

ジオゲッサーはスタッフ25人を抱えるストックホルムの会社で、コンテンツの配信を統率しているフィリップ・アンテルによると、同社のサイトのアカウントは4千万件を数える。

月2ドルで無制限にゲームができる加入者もいるという。アンテルの話だと、その収益はゲームの開発者やグーグルへの支払いに充てられる。グーグルへはソフトウェア使用料として。

レインボルトは地球規模の地理の知識を有するけれど、米アーカンソー育ちで、北米の外へは出たことがない。しかし、バケットリスト(訳注=死ぬまでにやっておきたいことのリスト)には、ラオスやアラスカのアリューシャン列島など訪ねたい場所がたくさんある。

Trevor Rainbolt, who has become the face of a fast-growing community of geography fanatics who play a quirky game called GeoGuessr, in Los Angeles, July 1, 2022. In  GeoGuessr, competitors can tell you what road in the Philippines a music video was filmed on and distinguish Latvia from Lithuania while blindfolded. (Jack Bool/The New York Times)
レインボルトが楽しむジオゲッサーの愛好家は、このところ急速に増えている=2022年7月1日、ロサンゼルス、Jack Bool/Ⓒ2022 The New York Times

レインボルトについて、周りの人たちは、彼の入れ込みようは理解不能なほどスゴイと言っている。友人たちがいつもよく尋ねる。「あれって、うそ偽りなし?」と。

レインボルトは、もちろんだと答え、絶対に動画を偽造したことはないと言っている。彼でさえ、時には国を間違えることがある。米国をカナダと誤ったり、チェコとスロバキアを取り違えたりする。これは、最高のプレーヤーでもよくやる代表的な二つのヘマだ。

彼は、ソーシャルメディアには時々犯すミスよりは目玉になる見せ場だけを投稿していることを認めた。

では、レインボルトはどうゲームを展開するのか?

言うまでもなく、基本は練習だ。彼はパンデミックの間にジオゲッサーにハマり、他の人がライブ配信しているのを見て地理愛好家たちが集めた学習指南書を熟読した。毎日4時間から5時間を勉強に費やしたと言っている。

特定の国々について、ジオゲッサーを繰り返しプレーして地形の感触をつかみ、道路標識や電柱など国によって異なるランドマークの違いを頭に入れた。

「率直に言って、この1年間、私は社会生活を送ってこなかった」とレインボルトは振り返る。「でも、その価値があった。面白いし、学ぶことを楽しんでいるからだ」

レインボルトによると、彼が国を識別する際によく活用するのは、道路わきのボラード(車止め)や電柱、車のナンバープレート、車が道路のどちら側を走行しているか、土の色などだ。

ほかにも見るべき手掛かりがある。グーグルが地形を記録するために使っている車体の色もそうだし、画像の質も重要だ。グーグルはさまざまな国でさまざまな時代につくられたカメラを使っているからだ。

たとえば、南米で白い車がちらっと見えたら、そこはペルーかボリビアかチリである、とレインボルトは言うのだ。

オーストリアのインスブルックに住む24歳のルーカス・ツィルヒャーは、インスタグラムへのレインボルトの投稿を偶然目にし、ジオゲッサーのとりこになった。そして、彼もゲームの第一人者になりたいと思った。

「上達するのは難しい、本当に上達するのは」とツィルヒャーは言う。

彼はいま、時間さえあればボラードについての勉強や南アフリカの土壌の色合いを記憶することに没頭している。「アフリカの国々はどこであれ数葉の写真を見れば識別できるけれど、私はまだスゴイというレベルではない。東欧諸国については、みんな間違ってしまう」と彼は言っている。(抄訳)

(Kellen Browning)Ⓒ2022 The New York Times

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