新型コロナウイルスのワクチン接種年齢がアメリカでも引き下げられました。5~11歳までの子ども約2800万人が新たに対象になり、11月初旬から始まっています。
インターネットによる接種予約をめぐっては今回も「情報を入れている間にセッションが切れた」「遠くの会場しか取れなかった」などの混乱がありました。
今は時間も場所も希望が通ることがほとんどだと思います。学校が臨時摂取会場となり、自分の学校で受けた生徒もいます。
ニューヨーク市では、子どもたちも摂取すると100ドルもらえます。それをインセンティブに接種が奨励されています。100ドルいいですね。
私が暮らすカリフォルニア州のギャビィン・ニューサム知事は、対面授業を受けるすべての生徒にワクチンの摂取を義務づけることを発表しました。
健康や宗教上の理由で対象外と認められることはありますが、子供たちも基本、全員がワクチンを受けていくことになると予測されます。ちなみにワクチンを受けない生徒はオンライン受講の選択も用意されます。
2020年の3月にパンデミックが始まって以来、サンフランシスコ・シリコンバレーの児童や生徒は1年以上、学校に行くことができずにオンラインラーニングを続けました。
保護者の中には「子どもは感染しても重症化しないから不要と思う」と考える人もいますし(無症状であったとしても感染していたらキャリアになり、他の人にうつす可能性もありますが…)、「5歳と11歳では全然体格が違うのに同じワクチンを受けさせていいのか」「十分な治験がされたのか不安」などの理由からワクチンを受けさせるのに抵抗がある保護者は大勢います。
しかしながら、「正直、登校しないあの状態に戻るのは勘弁」という保護者も少なからず存在している気がしています。
サンクスギビングが終わり、間もなくクリスマス、ニューイヤーの休暇中に家族で旅行に出かけたり、親戚や友人と集まったりする機会が増えます。
去年はこのホリデーシーズンで感染がさらに拡大したので、「子どもにも早めに受けさせたい」という家族もいます。これは大人の3回目ブースター摂取でも同様です。
シリコンバレーは複数のカウンティー(群)にまたがっていますが、それらの群の大半でワクチン摂取率は全米でも高く、早い段階で接種率70%に達しました。
私たちの地域ではなぜこのように摂取率が高いのでしょうか。人によっては「高学歴者が多く、ワクチンの安全性を冷静にきちんと調べて理解できる教養を持った人口層が厚い」と言います。
それはその通りなのかもしれませんが、知的階級が多いエリアは他州でも存在します。私はむしろ知り合いのエンジニアの次の指摘に納得しました。
「イノベーションの街だし、テクノロジーを信じている人が多いし、新しい技術の適応に抵抗が少ないのかもしれない」
「2021年はどこにいってしまったんだろう」というくらいあっという間に時が流れ、私が2回目のワクチンを5月に接種してから効力が切れる半年後が早くも近づいてきました。周囲でも年齢が上のグループを中心に3回目のブースターを受けた人が増えてきています。
私のところにも「インフルエンザの予防接種と同時摂取も可能ですよ」と医療機関からメールが届き始めました。
仕事と家事の生活の中で隙間時間を捻出(ねんしゅつ)し、病院や接種会場に2回出向くよりは、1回で済むなら済ませたい気持ちは山々です。どちらも必要だと感じているものの、私は間隔をあけて摂取しようかと思っています。
大規模イベントも感染対策を取りながら開かれるようになりました。「アウトサイドランズ」というアウトドアの大規模コンサートが2年ぶりにゴールデンゲート・パークにて開催され、3日間開催で約20万人が参加しました。
サンフランシスコ・マラソンやニューヨークシティ・マラソンといったマラソン大会も次々と開かれました。ただ、こうした大規模イベントでは、参加者はワクチン接種証明書もしくは72時間以内のCOVID陰性証明が求められます。
同じシリコンバレーの中でもカウンティにより遵守するガイドラインは異なりますが、サンフランシスコシティなどでは、レストランの屋内で食事をする場合も、やはりワクチン接種証明書と身分証明書の提示が求められます。
紙の証明書やスマートフォンのアプリで提示したり、iPhoneユーザーは接種証明の情報をウォレットに追加して見せたりして入店します。
西海岸で人気のイン・アンド・アウト・バーガーはワクチン接種証明の提示義務化に反対し、お客さんへの確認を拒否し続けたところ、とうとう閉鎖に追い込まれました。
サンフランシスコ・シリコンバレーは気候が温暖で、11月でも屋外で食事を楽しんでいます。新型コロナウイルスの感染拡大により屋内での飲食が禁止され、アウトドアダイニングが始まりましたが、週末は道路を歩行者専用道路とし、テーブルを道路に設置するレストランもあり、気持ちよく盛り上がっています。
誰が道路や歩道の所有権を持つべきかという論争や、騒音が問題になっているエリアもありますが、コロナでさらに進化したアウトドアダイニングのカルチャーはコロナが収束したとしても続いていくと予測されています。
レストランやイベント、コンサートはそれぞれ盛り上がっていますが、サンフランシスコシティのオフィス街はかつての活気はまだ戻っていません。
コロナ禍まっただ中のときよりは多少人出は増えていますが、オフィス街の多くのレストランが閉店に追い込まれました。
私も毎日出社しているわけではないですが、オフィスに行くと「今日はランチどこで食べようかな」と悩みます。
再開したり、状況が悪化して閉鎖したり、出社再開の時期が数回延期になったり…。刻々と変わる中、多くの企業において出社方針が頻繁に変更されました。
現在では、Google、Uber、Salesforceなどのシリコンバレーの企業の多くでは、限られた従業員、もしくは出社を望む従業員を限定的にオフィスに復帰させています。
AppleはCEOのティム・クックが社内メールでオフィス復帰計画を来年2月まで延長することを全従業員に伝えました。
2月は週に1、2回の出社から慣らしていき、3月からは大多数の従業員に月、火、木の週3回出社を求めるハイブリッドワークプランです。
9月初旬から週3日の対面勤務に戻すことを発表した際には社内で大きな反発を招き、何千人もの従業員がSlackチャンネルに参加してリモートワークの提唱を議論があったと言われています。
個人的には、家で仕事することに飽きたのと、Zoom疲れをずいぶん長く感じています。外部とのミーティングも含めて対面での打ち合わせは効率がよく、エンゲージの高さも再確認しているので、Appleの週3日といのはちょうどいい着地点のように思っています。
企業に対する愛着やロイヤリティも一番高く保て、同時にリモートワークのよさを享受できるからです。
Apple以外でもマネージメント側が社員の出社を希望し、社員側は消極的な企業はあります。対面勤務強制していくと優秀なタレント(人材)が他社に流れていく懸念もあり、さまざまな会社が試行錯誤している状態です。
バイデン政権は、従業員が100人以上の企業に対し、従業員にワクチンを接種させるか、あるいは感染の有無がわかる検査結果を週1回、提出することを義務づける制度を来年1月から導入すると発表しました。
健康やプライバシーとの関係から、企業が従業員にワクチンを接種するよう指示したり、要請したりすることは難しい面がありましたが、政権の決定を機にワクチンを打っていない従業員に対して、「政府がこう言っているので、ワクチンを打ってください」とはっきりと発信できるようになります。
これに対して、共和党の知事がいるフロリダ、ジョージアを含む二十数州などは、義務化に強く反発しました。連邦裁判所に訴訟を起こした結果、一部の州を管轄する裁判所が、差し止めを一時的に認める命令を出しました。
ワクチン義務化においても賛否が別れており、アメリカの社会の分断の影響が感じられます。
サンフランシスコをはじめとして、オフィスやジムなど収容人数100人未満の屋内で、ワクチン接種証明を条件に、マスク着用の義務付けが緩和されつつあります。
私も対面のミーティングなどで「じゃあ、今日はマスクを外してやりましょう」と言われることがありました。
友達とレストランでマスクなしで食事をしたり、コンサートでエンジョイしている人たちを見ると「ああ、もうコロナもそろそろ終わるのかな」という錯覚に陥ることがあります。
でも、米国ではこの冬にインフルエンザが流行する恐れがあり(毎年言われている気がしますが)、コロナの新規患者数も数週間前には7万人であったのが執筆時点(11月22日)9万人以上になりました。
これからのホリデーシーズンに向けてまた旅行者も増えることから、感染増加、また、新たな変異株のオミクロン株が広がる可能性も懸念されています。
企業、学校、自治体、コミュニティの感染拡大防止と経済活動再開に向けてた試行錯誤は、しばらく続きそうです。