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小樽で撮影の韓国映画「ユニへ」イム・デヒョン監督インタビュー

現地発 韓国エンタメ事情
「ユニへ」の主人公ユニ(キム・ヒエ) © LITTLEBIC PICTURES / kth ALL RIGHTS RESERVED.

11月21~23日に大阪・梅田で開催される大阪韓国映画祭(駐大阪韓国文化院主催)で、北海道の小樽で撮影された韓国映画「ユニへ」が上映される。キム・ヒエと中村優子が主演し、韓国では昨年の釜山国際映画祭クロージング作品としても上映された。ある日ユニ(キム・ヒエ)のもとに届いた一通の手紙をきっかけに、ユニと娘セボム(キム・ソヘ)の小樽への旅が始まる。イム・デヒョン監督に小樽での撮影や作品に込めた思いなどを聞いた。

――監督は「ユニへ」を撮る以前に小樽に行ったことがあったと聞きました。どんなきっかけで小樽に行ったのか、どんな印象だったのか、そしてロケ地に選んだ理由を教えてください。

2017年1月の終わりごろ小樽を旅しました。岩井俊二監督の映画「Love Letter」が好きな友達に強く勧められたためです。あんなにもたくさん雪が降る所は初めてで、特別記憶に残りました。中でも記憶に残ったのが、私が満月を撮ろうとカメラを夜空に向けていたら、酔っ払った中年男性が「何かあるのか?」と言いながら私と一緒に夜空を見上げ、「満月か」と言ったこと。それだけの会話でしたが、長い会話を交わしたような気分になりました。その晩宿へ戻って、あのおじさんはどんな人だろうと想像しました。小樽を「ユニへ」のロケ地に選んだのは、そんな理由です。下の写真は当時私が小樽駅のプラットホームに降りてすぐに撮ったものです。

小樽駅のプラットホーム=イム・デヒョン監督提供

――私も雪の多い地域に住んだことがありますが、雪をかいてもかいても降り積もるもどかしさがありました。ユニが小樽まで来て旧友のジュン(中村優子)に会う勇気が出せずもどかしい様子と、降り積もる雪が重なる様に見えました。

その通りです。ジュンのおば(木野花)が「雪はいつやむのかしら」というセリフには不思議な力がある気がします。雪がたくさん降る地域に長く住む人が、雪はやまないことを知っていながら言うセリフだからです。私たちは皆、もどかしい気持ちを抱えながら生きています。

――監督は小樽で撮影しながら、雪景色をどう感じましたか?苦労した点も含めて教えてください。

撮影中にはいろんな出来事があって、変更点が生じたり、紆余曲折を経て大変でした。空間の美しさに酔いしれる余裕はありませんでしたが、確かに美しい空間でした。雪の積もった場所での撮影では俳優に反射板を当てる必要もありませんでした。最も記憶に残るのは、毎晩のようにコンビニで買って飲んだ小樽のワイン。私の好みのワインでした。

――主演のキム・ヒエさん、中村優子さんのキャスティングについて教えてください。日本の俳優の演出にあたって、言語の面で難しいことはなかったのですか?

キム・ヒエさんは韓国では文化のアイコンと言っていいほど、影響力絶大の俳優です。演技力については言うまでもなく、特有の強力な存在感が画面を突き抜けて観客や視聴者を圧倒します。中村優子さんは、「ストロベリーショートケイクス」などの映画で見ていて、ジュン役に合いそうだと思ってオファーしました。映画を作る過程で、中村さんが配慮もあり、知性豊かな人だと感じました。ジュンのキャラクターは中村さんでなければ成立しなかったと思います。

ユニの旧友ジュン(中村優子) © LITTLEBIC PICTURES / kth ALL RIGHTS RESERVED.

意外にディレクションで難しいことはなかったです。日本語のセリフをできる限り私が覚えるようにしたのもあり、不思議なことに聞き取れました。韓国語と日本語は語順が同じだからかもしれません。もちろん通訳してくれるスタッフの存在は大きかったです。

――小樽へ行く前、韓国での生きる意欲を感じられないユニの表情と、小樽に着いてからジュンを思う時の目を潤ませた表情の差が印象的でした。監督としてキム・ヒエさんの演技はいかがでしたか?

キム・ヒエさんのおかげでユニは私が想像していた以上に豊かな感情を持つ人だということを現場で感じることができ、刺激と衝撃を受けました。

――日本では近年LGBTら性的少数者について社会的に受け入れる動きが続いています。偏見も以前に比べると減り、カミングアウトする人も増えました。韓国ではどうでしょうか? この映画を作りながら、あるいは韓国で公開して感じたことはありますか?

日本では一部の地域で同性間のパートナーシップを認める制度があること、国会議員の中でもカミングアウトした性的少数者がいることは知っています。韓国でもやはり声を上げる人たちはたくさんいますが、韓国社会が日本社会に比べてこのイシューではまだ停滞している印象はあります。韓国では性的少数者を嫌悪する集団が政治勢力となっているためかもしれません。

この映画を公開し、韓国のLGBTコミュニティーから支持されました。特にL(レズビアン)のコミュニティーの支持でした。私はこの映画を通して今よりももっと大変だった過去を過ごしてきた世代の性的少数者について考える機会を作りたいと思いました。

ユニの娘セボム(キム・ソヘ) © LITTLEBIC PICTURES / kth ALL RIGHTS RESERVED.

――個人的に一番好きな場面はユニと娘のセボムが雪だるまを作りながら互いの心の内を少しずつ話し始め、親子が近づいていく場面でした。監督が特に好きな場面があれば教えてください。

すべての場面に愛着はありますが、最近自分の中でよく思い浮かぶ場面は最後の場面です。ユニが緊張した状態で履歴書を持って食堂の前で娘に向かってほほ笑む場面です。この映画のエンディングですが、ユニにとっては自分の意思で人生を再スタートさせる部分です。

――日本の観客にメッセージをお願いします。

この映画は特に日本の観客に見てもらいたいと思っていました。私たちは互いに違いますが、映画という世界共通語を通して互いの悲しみについて共有することができます。私は運よく日本で映画を撮る時にたくさんの援助をいただきました。今も現場で奔走するスタッフの姿が目に浮かびます。みんなに会いたいです。

――コロナの影響も含め、今後の計画を教えてください。

特に影響は受けていません。映画を作ることはいつも新しいことだからです。私は創作者として、映画監督として、まだ未熟だと思います。心を込めていい映画が作れるよう精進したいと思います。コロナがいろんなものを変えてしまいましたが、映画は続きます。