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ポルトガルといえば煮込み料理とポルトワイン でも実はチョコもすごい

マイケル・ブースの世界を食べる
北村玲奈撮影

ヨーロッパの料理は伝統的に売り込みがうまい。最初は19世紀後半、気品と優雅さで世界を制したフレンチだった。レストラン構想を掲げ、厚みのある白いリネンのテーブルクロス、銀のナイフやフォーク、気取ったウェーター、そして高価なワインを通して、フランス料理は高級で洗練されているという印象を世界に植え付けた。

次はイタリアン。見た目はシンプルながら、おいしく健康的な料理に私たちは魅了された。粉チーズと黒コショウをからめたパスタ「カチョエペペ」、あるいは単にトマトソーススパゲティをつくるほうが、「スープ・オ・トリュフ(黒トリュフのスープ)」や「ブランケット・ド・ヴォー(仔牛のクリーム煮)」よりはるかに手早く簡単だ。そして、もちろんピザは、ファストフード界の覇者となった。

今世紀、「高度な技術」や(化学的に解析した)「分子ガストロノミー」が高級料理の関心事になると、スペイン料理が上座を主張する。のちに北欧勢が「ニューノルディック」で注目されるまで、スペイン人シェフのフェラン・アドリアらによるジェルや泡や球体状の料理が有名だった。

最近ではイギリス料理でさえ、ジェイミー・オリバーやゴードン・ラムゼイらテレビで人気となったシェフにより食の世界に名をはせつつある。私のヒーローの一人であるファーガス・ヘンダーソンもまた、ロンドンで「(食材を)鼻先から尻尾まで」料理するレストラン「セント・ジョン」のシェフとして世界的な名声と称賛を手にした。

さて、ポルトガル料理は? リスボンを何度も訪問した私は、新婚旅行でも行ったのに、よく知らなかった。昨年の今ごろ、ポルトにいた。ポルトガル第2の都市で出合ったものは? もちろん、多くのポートワインだ。やけに甘ったるくてアルコール度数が高く、赤いズボン姿で鼻の血管が浮き出た太った白髪頭の男たちが飲む酒だと思っていた。でもポルトのよく冷えたポートワインは異なり、全てを変えた。

■1日6個、やみつきタルト

ポルトガル人は、硬い肉を使ったシチューやキャセロールなどの煮込み料理の専門家であることも発見した。格別においしいヤギのチーズもつくられる。デザートのカスタードタルトは知っていたが、ポルトで食べたものは生地がそれはもうパリパリで、カスタードも豪華。1日6個も食べてしまった。

最大の驚きはチョコレートだった。この国に偉大なショコラティエがいるとは思わなかったが、ポルトは(カカオ豆から板チョコまで一貫して作る)「Bean to Bar」の工房「ショコラタリア・エクアドル」の地元。様々なものを詰めた絶妙な板チョコは、長年食べてきた中でも最高級だった。

始まりは、グラフィックデザイナーのセレスティーノ・フォンセカと妻で彫刻家のテレサ・アルメイダが2008年の金融危機後、人生の大きな転換を決心したことだ。おいしいチョコをつくれるのに世界への売り出し方がわからないという職人と出会い、提携して1940~50年代を想起させる新ブランドを立ち上げた。

歯切れのよさ、余韻、ほのかな酸味、複雑な味わいといったチョコレートの質は、「ハリー・ポッター」のような古風な雰囲気の店舗や、思わず手に取りたくなるレトロなグラフィックの包装紙ともマッチ。これほど素敵なパッケージに商品が恵まれることは驚くほどまれだ。ショコラタリア・エクアドル(赤道の意味)は、その名の通り、カカオ農場を赤道直下のブラジルに所有。今では支店がスペインやカタールにある。次は東京?

良質なオリジナルチョコの市場が日本にあるのは間違いない。

私はスーツケースに収まる限りの板チョコを詰め込んだ。マンゴーにラズベリー、地元産のオリーブオイル、今やどこでも見かける塩キャラメル……。私のお気に入りの味は? もちろん、もう一つの特産品のポートワインだ。(訳・菴原みなと)

■マイケル・ブース氏の新著発刊を機に、オンラインでインタビューしました。こちらでお読みいただけます。

日本中を食べ歩いた英国人ジャーナリスト、マイケル・ブース 新著のテーマは日中韓