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私の家族はどこに 絶望の遺族が墜落現場でつかんだ土

世界報道写真展から――その瞬間、私は
An Ethiopian relative of a crash victim throws dirt in her own face after realising that there is nothing physical left of her loved one, as she mourns at the scene where the Ethiopian Airlines Boeing 737 Max 8 crashed shortly after takeoff on Sunday killing all 157 on board, near Bishoftu, south-east of Addis Ababa, in Ethiopia Thursday, March 14, 2019. About 200 family members of people who died on the crashed jet stormed out of a briefing with Ethiopian Airlines officials in Addis Ababa on Thursday, complaining that the airline has not given them adequate information.
ムルゲタ・アイェネ Mulugeta Ayene エチオピア photo: Mulugeta Ayene/ Associated Press

2019年3月10日、アフリカ東部エチオピアの首都アディスアベバ郊外に、乗員・乗客157人を乗せたエチオピア航空302便(ボーイング737MAX)が、離陸直後に墜落した。エチオピアの写真家ムルゲタ・アイェネ(35)は、AP通信の撮影で現場に駆けつけ、搭乗者の人影がまったくない「壊滅的な光景」を目にした。

荒野に広がっていたのは、焼け焦げた巨大な穴と、旅客機の残骸ばかり。そこに犠牲者の遺族らが到着すると「絶望と悲嘆の現場になった」とムルゲタは振り返る。

顔を覆い、崩れ落ちる遺族。ある女性はその場の土を顔にかけながら嘆いていた。現場に犠牲者に関するものが残っておらず、名残として手にすることができたのが、それしかなかったからだ。

現場に1週間近く通い、主に遺族らの悲しみにカメラを向けた。特に気をつけたのが遺族らのプライバシーだったという。家族との別れの邪魔にならないように、あえて近づかず、望遠レンズを使ってシャッターを切った。

一連の写真は「見た人が(事故の)恐怖や哀れみよりも、遺族らへの共感を覚えるように、その痛みなどを表現しようと努力した」という。「遺族は愛する人の残したものが何もない状況で、別れを告げた。写真を、その記憶をとどめるものの一つにしてほしい」とも語る。

エチオピアの社会や政治を撮り続けるムルゲタ。20年にわたって対立した隣国エリトリアとの国境紛争を終結させるなどして、19年のノーベル平和賞を受賞したアビー・アハメド首相による政治変革を追う一方、アフリカに広がる新型コロナウイルスの取材にも奔走する日々を送る。

■墜落事故とボーイング社

ボーイング737MAXは2018年10月にも、インドネシアで乗員・乗客189人が死亡する墜落事故を起こしており、エチオピアの事故後、全世界で運航が止まった。

エチオピア政府は19年4月、事故の暫定報告書で、機体の失速防止システムに不具合があったとの見方を示し、ボーイング社も一定の責任を認めた。同型機の運航停止の影響は大きく、同社は19年12月期決算で22年ぶりの赤字に転落した。