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パパだって英語留学したい! 育休を使いセブ島で子育てする夫婦 Airbnbも活用

育休ママの挑戦~赤ちゃん連れ留学体験記~ 更新日: 公開日:
冬休みに家族で滞在した、民泊情報サイト「Airbnb」で見つけたコンドミニアム。滑り台などの遊具のほか、大人用と子ども用プールもあった。中央は滑り台で遊ぶシンシン=2020年1月10日、セブ島中心部で今村優莉撮影

私が今回、冬休みを利用して1週間通ったのは、CET(CEBU ESL & Travel Inc.)という学校だ。20184月に開業し、日本人とフィリピン人が共同経営している。学校名にも入っているようにESL(English as a Second Language, 英語を第2外国語として学ぶ人向け)のコースに力を入れている。

経営者の1人、菊地江梨子さん(37)によると、年間を通じて単身の学生が多いほか、20代後半から40代の社会人も通う。夏休みなどのピークシーズンには1020代の学生を中心に100人に上ることも。平日、午前820分から午後450分までの8クラスをとった場合、テキストを含む授業料や光熱費、食事、寮代含めておよそ4週間で123万円ほど。日本人が多いが、中東の国々に加え、中国や台湾からの留学生もいる。筆者が滞在した冬休みには、韓国から母親と子ども2人が滞在していた。

昨年10月には託児室を設け、生徒の子どもに限って02カ月から預かるベビーシッターサービスを導入。3歳以上の子どもを対象とした幼児向け英語教室も始めた。

「子供がいても親子で安心して学べる環境を提供したかった。現在は日本人の生徒さんしかいませんが、ゆくゆくは、現地の幼稚園のように、長期滞在しているご家族にも利用頂けるような環境に整えたい」と菊地さんは話す。

校内の食堂。寮に住む学生はここで朝食、昼食、夕食をとる=2020年1月、セブ市の語学学校CETで、今村優莉撮影

そこで私は、ある一組の親子に出会った。エリさん(仮名、35)と長男タツオちゃん(同、7カ月)。

関西地方の医療関連会社に勤め、職場結婚した夫マサヤさん(同、36)と親子3人でセブで生活しているという。

 もともと、英語留学に強い関心を抱いていたのはマサヤさんだ。新薬開発の国際共同治験でプロジェクトリーダーを務めるマサヤさんは、参加国の新規薬剤の申請などについて、英語で綿密なコミュニケーションをとることが常に求められているという。「英語がもっと出来れば、詳細なニュアンスを伝えることや、理解しあうことがスムーズになり、もっと大きなプロジェクトが出来ると考えていた」

 会社を辞めてでも単身で渡米する機会をずっと探しており「子どもが産まれたら育休を取って、1人でどこかに勉強しにいこうかな」と漏らしていたほどという。

「おい!って感じですけどね」とエリさんは苦笑するが。

ところが、昨年5月にタツオちゃんが生まれると、マサヤさんの人生観はかわった。仕事を出来るだけ早く切り上げ、育児を担い、休日もずっと一緒。「可愛すぎる。息子と一日も離れたくない」と思うようになったという。

会社は夫婦が同時で育休を取ることが認められているため、マサヤさんも昨年12月から今年3月まで育休を取得した。

だが、マサヤさんは英語留学の夢を諦めきれなかった。

「どこか、親子みんなで子育てしながら英語を学べる場所はないだろうか」。そんな一言がきっかけだったとエリさんは振り返る。

カナダやアメリカといった場所も検討した。だが「遠いし、うまく預け先が見つかるかわからない」という理由で、最終的にセブ島での親子留学をマサヤさんが見つけ、昨年12月から親子で生活している。

CETの託児室でベビーシッター(右)と遊ぶ長男タツオちゃんの様子を見守るエリさん(左)=2020年1月9日、今村優莉撮影

現在は、マサヤさんが朝9時から午後5時まで別の学校で、エリさんは午前中をタツオちゃんと過ごし、午後1時から午後5時までCETに来て英語を学んでいる。その間タツオちゃんを預かってくれるのは校内にある託児室だ。1時間約440円でベビーシッターが見てくれる。

 「最近はママの後追いが激しくなってきて、パパでもイヤー!となってしまっていたのですが、シッターさん以外でも休み時間などに先生方からも本当にかわいがってもらって。授業が終わったあと託児室をのぞくと、アレ、いない!と思っていたら別の先生たちが抱っこしてあやしてくれていたりすることもしょっちゅうです」

セブに来る前に一番心配だったのは、水と空気汚染。そのまま水を飲めないため、常に飲料水を買い備えておかなければならないといった手間はかかるが、それでもセブに来て本当に良かったと思っていることがある。

「うちの子、すっごく笑うようになったんです、こっち来て」

「コンドミニアムやスーパーなど、エレベーターとかに乗っているだけでも、必ず100%の笑顔を向けてくれるんです、こっちの人たちって。だから、息子も今では初対面の人にもニコって笑うようになったんです」

住まい選びも工夫した。CETに併設されている寮はシェアハウスのような作りで、冷蔵庫やウォーターサーバーは共有。洗濯機はなく、外注でランドリーサービスを使うことになる。小さな子どもがいる家庭には正直、不便な部分もあるだろう。エリさん一家は民泊サイト「Airbnb」(エアビー)を使って、ITパーク内のコンドミニアムの一室を借りることにした。

CET内の学生寮。ベッドと机、シャワーとトイレがある簡素な作りで、冷蔵庫などは共用だ=2020年1月、今村優莉撮影

ちなみに、そのコンドミニアムというのは、今回冬休みで筆者一家が借りたところと同じだった。筆者が借りた部屋は1BRで1泊平均4800円ほど。キッチンも洗濯機も自由に使えるうえ、敷地内には滑り台などの遊具とプールまで完備されていて、エアビー利用者も自由に使える。

自分たちで毎日ゴミ出しをしたり、掃除をしたりしなければならないが、ホテルよりも安いうえ、子どもが寝たあと別室で明かりをつけてテレビを見たり勉強したりすることが出来る。スイートルームでもない限り余分な部屋がないホテルとは違う。子連れには意外とこちらのほうが便利だと思う。

エリ・マサヤ夫妻がセブ島中心部で「Airbnb」を使って借りたコンドミニアムの一室。ハイハイ真っ盛りのタツオちゃんは、ビニールプールとクッションマットを使った手作りの「部屋」で過ごすことが多い=エリさん提供

エリさんは言う。「離れていると、その分子どもに早く会いたいって思うんですよね。だから、勉強が終わってからの夕方以降は、夫婦でたっぷり息子との時間を楽しんでいます。慣れない海外ではあるけど、2人一緒に育児が出来るのも嬉しいし、私はイライラがなくなりました」

「英語を学びたいと漠然とは思っていたけど、まさかこんな形で実現するとは思っていなかった」とも。

今日も、笑顔いっぱいのタツオちゃんを抱いて、元気に学校に通っていることだろう。

***次回は、再び医療編です。子どもが入院してしまった二組の家族をご紹介します。