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セブで親子留学中にママが入院! 7カ月の娘を徹夜でみてくれたのは……

育休ママの挑戦~赤ちゃん連れ留学体験記~ 更新日: 公開日:
LINE機能を使って病院のジャパニーズヘルプデスクとやりとりしていた時のスマホ画面の一部=今村優莉撮影

1歳3カ月差の年子を育てるアラフォーママ(新聞記者に復帰)です。育休中、1歳半の長男(シンシン)と3カ月の次男(ルールー)を連れて敢行した親子留学の体験をあるがままに綴っています。小さな子どもを連れての留学で一番心配なのが「現地で病気になったらどうしよう」だと思います。子どもだけではありません。ママが病気になっても大変です。今回は、親子留学中に入院してしまったママについてのレポートです。

フィリピン・セブ島に親子留学していたと話すと一番よく聞かれるのが「子どもがケガや病気になったらどうするの?」「現地の医療体制は大丈夫?」という質問だ。実は、私もシンシンもルール-も、「豪運」なことに4カ月半ものあいだ現地の病院には一度もお世話にならなかった。第5回 にあるように、主治医からふんだんに常備薬を処方してもらったので、私も子どもも、発熱や咳、鼻水などの症状は処方薬を飲んで寝て治してしまった。

今回は、親子留学中に食あたりを起こしてしまったママメートへの取材をもとに、子連れ留学の際の医療編を2回(予定)にわたってお届けしたい。まずは、ママが病気になった編だ。

東京都内でIT関連会社に勤める内藤雅美さん(37)は、育休中だった今年2月、当時7カ月の娘ツムギちゃんを連れて4週間、親子留学した。学校は私と同じ、セブ島唯一の親子留学専門学校「Kredo kids(クレドキッズ)」。

4月に復職を控えていた内藤さんは大学時代に1年間の英国留学経験がある。だが、普段の仕事で英語を使う機会は多くない。「どんどんすたれていき、英語の映画をみても聞き取れなくて。留学したことがあるのに英語が話せないというコンプレックスを抱えていました」と振り返る。

セブでの親子留学中に入院したことを振り返る内藤雅美さん=今村優莉撮影

出産から1年未満の復職ではあったものの、IT業界は動きが速い。「自分だけ取り残されていくのではないか」「積み上げてきたものが全部なくなって、また一から信頼も実績も築いていくのか」という不安も大きかったという。

「復帰したとき、少しでもパワーアップしていたかった」

まとまって時間を作れる最後のチャンスだと思い、意気込んで臨んだ親子留学だった。

2月の第3週。まずはツムギちゃんと2人でセブ島入り。1週間後の土曜日には3連休をとった夫も日本から合流し、翌日曜日に他のママ友も誘って家族でホテルのランチビュッフェに出かけた。

異変が起きたのはその日の夜だ。突然始まった胃痛は、キリキリと身体の内部をえぐるような痛みをみせ、トイレから出られなくなった。食あたりのようだった。

翌月曜日、フィリピンは祝日で学校は休みだった。胃痛はいったんおさまったものの、朝から38度の発熱。帰国便の時間が迫る夫が空港へ向かうために部屋を出るのを横目で見送ると、学校から渡された「パンフレット案内一覧」のなかから、病院について書かれたページを開いた。

セブ島の大手総合病院セブドクターズホスピタルに直接電話した。日本語対応ができる「ジャパニーズヘルプデスク(以下JHD)」という部署につないでもらった。JHDは、海外で病気やケガを負った日本人が現地の病院で不安なく医療を受けられるサービスを提供する会社だ。2015年にマニラに設立され、フィリピンだけでなくインドやミャンマーなどにも展開している。

JHDの担当者は、LINEのお友達に追加すれば簡単にやりとりが出来ると説明してくれた。
さっそくお友達に追加すると、同時にメッセージが届き、名前や年齢、所属(学校名)、加入している保険会社名、症状を書き込むよう指示された。

セブ島・セブドクターズホスピタルにある「ジャパニーズヘルプデスク」事務所=留学情報館提供

やりとりを重ねているうちに、少し症状も落ち着いたこともあり、翌朝一番に受診予約を入れることにした。

火曜日の朝。内藤さんは自身の家政婦兼シッターのジェシカさんと、8時にタッチ交代して病院へ。事前にLINEから予約を入れていたおかげで診察までスムーズだった。フィリピン人の医師に加え、日本人スタッフ男女3人が付き添ってくれたという。「英語の書類への記入など、どこに何を書くかすべて日本語で教えてくれたのでとても助かりました」

検査の結果、便から菌がでていた。食べ物か水があたっただろう、と医師に言われた。完治のためには入院して点滴すべきだと言われ、内藤さんは真っ白になった。

「赤ちゃんがいるから入院はできません」

そう懇願するも、医師は「入院」の一点張り。子どもと一緒に入院できるわけもなく、内藤さんは、学校と相談するためいったん病院を離れ、学校に向かった。

「夜に子どもを預けたことはそれまで一度もありませんでした。本当に心配で、学校の受付で思わず泣いてしまったほどです」と振り返る。

学校のスタッフからは「いつもと同じベビーシッターさんに朝までお部屋で見てもらうことが可能ですよ」と言われた。ママ友にも「ツムギちゃんにうつったら大変だよ!」と懸念されたこともあり、内藤さんは泣く泣く、我が子を置いて入院する決心をした。

セブドクターズホスピタルの入院用個室=内藤雅美さん提供

学校からとんぼ返りで病院へ。案内されたセブドクターズホスピタルの入院用個室は、びっくりするほど広かった。部屋にはテレビもついていて、日本の番組も見られた。

テレビを見るような気分ではなかった。まだ授乳中だった内藤さんは、ツムギちゃんがいないことでパンパンにおっぱいが張ってしまい、自力で搾乳しなければならなかった。

何より心配だったのがツムギちゃんのことだった。「出産以来、夜だけは娘と離れたことがなかった。安全な状態で過ごせるだろうか」などと案じた。ただ、そんな内藤さんの心配を感じ取っていたジェシカさんは「いまぐっすり寝ているよ」「いまミルク飲んだよ」などと、こまめにメッセージアプリで写真とメッセージを送ってくれた。やりとりは、ほとんど夜通しで行われた。

入院中も、シッターのジェシカさんが夜通しで娘の状況を知らせてくれたため、安心して入院出来たという=今村優莉撮影

朝7時。ほぼ徹夜で見ていたジェシカさんは、別のシッターさんとバトンタッチ。引き継ぎの様子もメッセージアプリで送ってくれた。丸一日の入院を経て、再検査の結果、その日の午後に無事退院できることになった。

入院費用は、約33000ペソ(約7万円)。日本で加入していた保険会社を通じての入院だったため、キャッシュレスで済んだ。

ツムギちゃんを抱く内藤雅美さん(左)とシッターのジェシカさん=内藤さん提供

ところで、なぜ内藤さんだけが食あたりを起こしたのか。

ホテルのビュッフェは、夫もママ友も、ツムギちゃんも利用したが、あたったのは内藤さんだけだったという。

「たぶん、ビュッフェのあとに寄ったスーパーのジュースに入っていた氷じゃないかなあ。ジュースを飲んだのは私だけだったから」

そのスーパーというのは、セブの「成城石井」と呼ばれる高級スーパーで、取り扱うものは輸入品など「安心安全」と言われているものばかりだ。

あらためて、発展途上国では水、いや氷に要注意だ。

内藤さんは今年春から職場復帰し、忙しくも充実した日々を送っているという。都内のカフェで取材に応じてくれた時、彼女はこう話した。

 「改めて振り返ると、本当に大変な思いもしたし、入院と聞いたときは不安しかなかった。でも、いつも見てくれているシッターさんだったから、ツムギの離乳食のくせも、ミルクのタイミングもばっちりだった。その後に代わったシッターさんからも、寝ている間も含めて絶え間なく写真付きでメッセージが届いたから、本当にありがたかった」

 そして「また行きたいな、セブ。もうジュースは飲まないけれど」と言って笑った。