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ロコなのにサスペンス、ドラマ「椿の花咲く頃」視聴率23.8%

現地発 韓国エンタメ事情
「椿の花咲く頃」ポスター。主演のコン・ヒョジン(左)とカン・ハヌル=KBS提供

「ロコ(ロマンティックコメディー)なのにサスペンス」。そんな風変わりなKBSドラマ「椿の花咲く頃」が、最終回23.8%の高視聴率で幕を閉じた。韓国での話題沸騰を受け、日本でも「早く見たい」という声が高まっていたが、Netflixで公開された。

シングルマザーのトンベク(コン・ヒョジン)と田舎者の警察官ヨンシク(カン・ハヌル)のロコのようで、背景には不気味な連続殺人事件が起こっている。「誰がなぜ?」という謎解きも気になりつつ、トンベクやヨンシクの家族の物語にも感動の涙が止まらない。こんないろんな要素のつまったドラマも珍しい。

ドラマを貫くテーマは、「人は人の奇跡になれるか?」だ。タイトルにある椿は、韓国語でトンベクという。トンベク(椿)がヨンシクの愛を受けて咲いていくドラマともいえる。母に捨てられた痛みを抱えて育ったトンベクだが、妊娠を告げないまま恋人と別れ、一人で食堂を切り盛りしながら息子を育てている。不幸を背負い続けてきたようなトンベクの前に現れた「奇跡」はヨンシク。方言丸出しのダサい男だが、トンベクへの愛はひたむきそのもの。悲観的で自信のなかったトンベクが、ヨンシクの愛を肥やしにどんどんたくましくなっていく。視聴者の多くの女性は「トンベクみたいに愛されたい」と思ったはずだ。

人気の理由はいくらでも挙げられるが、個性的な役者たちの演技だけでも見ていて楽しかった。コン・ヒョジンは映画もドラマも主演で出続けているが、「失敗なし」と言われるほど安定的な人気を誇る。作品ごとに違った魅力を見せてくれる女優だ。

「椿の花咲く頃」ポスター。主演のコン・ヒョジン=KBS提供

カン・ハヌルも個人的には映画「空と風と星の詩人 尹東柱の生涯」の主人公東柱(ドンジュ)役などで好きな俳優だったが、今回のヨンシク役は韓国中で愛されるキャラクターとなった。最終回を迎え、あのヨンシクの方言が聞けなくなると思うと、寂しくて仕方ない。

トンベクの息子役や母役など、脇役たちの演技も光った。それこそ奇跡のような共演だった。

ところで、このドラマの中で何度か出てくる「欠損家庭」という言葉が気になった。シングルマザーのトンベクと息子は、「欠損家庭」と表現される。父親がいないのは欠損なのか?確かに日本語にもある表現ではあるが、私には偏見を生む表現に感じられた。

実際、一緒にドラマを見ていた韓国人の友人が「欠損家庭って、やっぱり子どもの教育に良くないのかな」と、考え込んでいた。最近離婚したばかりで、子どもを元配偶者が育てることになった友人だ。私の考えでは、生き別れも死に別れもすべての家族につきもので、そのタイミングが早かったり遅かったり、というだけだ。父の不在を「欠損」と言ってしまうのは残念だったが、その偏見をはねのけるドラマだった。

ドラマに出てくるトンベクの息子ピルグは、全然かわいそうには見えない。トンベクの愛情をたっぷり受け、ヨンシクをはじめ周りの大人たちにも可愛がられている。母がシングルマザーという理由で子どもなりに悩んではいるが、一生懸命母を守ろうとする姿を見ていると、トンベクもピルグも父親がいなくても十分幸せな家族だと思った。

「母」の存在が際立ったドラマでもあった。かつて娘を手放したトンベクの母が、老いてトンベクのもとへやってくる。自分を不幸にした母を受け入れられないトンベクだったが、母の愛を徐々に知ることになる。一方、ヨンシクをやはり女手一つで育てたヨンシクの母は、息子の相手として子持ちのトンベクが気に入らず、何度も別れさせようとする。

主人公二人のラブストーリーに家族のゴタゴタ、さらに連続殺人事件が絡まって展開する。サスペンスとしても、最後の最後まで引き付けられた。そんな盛りだくさんのドラマが終わり、しばらくは「椿ロス」から抜け出せそうにない。