「ミッチを見捨てよう」
“Let’s Ditch Mitch”
6月5日付 ニューヨーク・タイムズ紙
昨年の米中間選挙で、民主党が下院の過半数を取り戻した時、これまで滞っていた数々の重要法案がいよいよ通って実施される、と多くの米国人が期待した。実際、下院は今年1月から多数の法案を通した。だが、上院でストップしている。
記事によると、下院を通った100本以上の法案が上院でin limbo(たなざらしになっている)という。移民制度改革やpreexisting conditions(既往症)のある市民も保険を失わないようにする制度、処方薬の値下げ、選挙のセキュリティー保護、net neutrality(インターネットの中立性、ネット上に流れるコンテンツを平等に扱うよう通信会社に義務付ける規制)の回復、銃購入者の犯罪歴などを確認する「バックグラウンドチェック」の強化といった政策が、両党の支持にもかかわらず実施されないままだ。
ある人物の存在が影響していると記事は指摘する。共和党のミッチ・マコネル上院院内総務だ。上院多数党はどの法案を投票にかけるかを決める立場で、自党の主張に合わない法案はsmother(絞め殺す)ようsit on(決定を遅らせる)ことができる。そのためマコネルは自らをThe Grim Reaper(死に神)と呼ぶほどだ。
民主党が上院多数だった時も同様のことがあったが、マコネルほどではなかったという。どの法案を採決するかはマコネルの腹一つなのだ。
彼がひときわ執着するのが連邦裁判所の判事人事で、保守派をcram with(詰め込む)ことだという。特にオバマ政権2期目に最高裁判事に指名された人物について、マコネルは「任期終了に近すぎる」と審議に応じなかった。結局、トランプ大統領が保守派判事を指名した。
だが、2020年の選挙前に最高裁判事に欠員が出た場合、マコネルは「私たちが埋めるよ」とchortled(うれしくて声を立てて笑った)そうだ。こんな図々しさは前例がない。それだけではない。彼の妻で運輸長官のエレーン・チャオが、運輸長官でありながら親戚の運送会社を手伝っている疑惑も浮上した。
民主党内では、マコネルはトランプより問題だとして再選を阻む動きも出てきた。ミッチ・マコネルのこうした行動を見ればditch(見捨てる)人も増えるのではないだろうか。