2013年に放送され、社会現象となったTBSドラマ「半沢直樹」の原作、池井戸潤の小説がついに韓国で出版された。
半導体材料の対韓輸出規制をきっかけに韓国では日本製品の不買運動も起こっているが、書店に行けば相変わらず日本の雑誌が並び、日本の本の翻訳本が山積みになっている。その中で特に目立つのが、6月に発売された「半沢直樹」だ。
日本ではドラマ「半沢直樹」の原作となったのは「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」の2冊だが、これを韓国では「半沢直樹」のタイトルで1、2として2冊が翻訳出版された。
最終回は関西地区で瞬間最高視聴率50%を超えた大ヒットドラマが、お隣の韓国でも話題にならないわけがない。版権をめぐって著者の池井戸氏側に数々のアプローチがあったそうだ。
今回版権を獲得し、ドラマファン待望の韓国語版を出版したのは、「インフルエンシャル(INFLUENTIAL)」。出版をはじめ、著名人の講演企画など、幅広く文化事業を展開する知識コンテンツ企業だ。「嫌われる勇気」「幸せになる勇気」(岸見一郎・古賀史健著)の韓国語版を出版し、計160万部を売った実績を持つ。ムン・テジン代表は池井戸氏と同じく銀行員出身で、ご存知、「半沢直樹」も銀行員が主人公の物語だ。ムン氏は「多くの出版社が版権を断られた中で、もしかすると、同じ銀行員出身という部分で池井戸さんの共感を得られたのかも」と、話す。
韓国では村上春樹や東野圭吾の作品をはじめ、日本の小説が以前からよく売れている。村上春樹の「ノルウェイの森」を韓国語で翻訳出版し、日本小説のブームを引き起こした出版社「文学思想」によると、「ノルウェイの森」はこれまで100万部以上売れており、「文学思想」では村上春樹の著書30タイトル以上を翻訳出版してきた。
一方、日本では2011年に「下町ロケット」で直木賞を受賞し、ドラマ「半沢直樹」をきっかけに大流行した池井戸潤作品だが、これまで韓国ではほとんど紹介されてこなかった。今回の「半沢直樹」翻訳出版が韓国内で特に注目される理由だ。
さっそく読んだという30代韓国人女性は、「主人公半沢直樹の強い者に強いキャラクターにはまった。チャンスを逃さず、一つ一つ丁寧に論理だてて反論するのがおもしろい」と、その魅力を語る。女性は日本で5年間働いた経験があり、「なんでもマニュアル化して過程を重視する日本、その時々の状況に合わせて融通を利かせる韓国。このような日韓の違いも結局は人が作る組織から生まれたものだと、この作品を通して感じた」と話す。
私も改めて韓国語で読んだが、韓国の人たちにとっては「半沢直樹」の背景となっているバブル崩壊後の日本は、1997年のIMF通貨危機の後と重なって見えるかもしれない。韓国でもIMF後に銀行の合併が進んだ。それ以上に、「パワハラ」は日韓共通の関心事で、「倍返し」で上司に復讐するカタルシスは、韓国でも大いに受け入れられそうだ。
日本では2020年にドラマ「半沢直樹」の続編が放送されることが報じられた。半沢直樹シリーズの小説「ロスジェネの逆襲」以降の話が展開される見込みだ。インフルエンシャルでも、シリーズ後半の「ロスジェネの逆襲」「銀翼のイカロス」を「半沢直樹」3、4として今後翻訳出版する予定という。
これまであまり韓国で知られていなかった池井戸潤の小説が、村上春樹や東野圭吾のように韓国でもベストセラーになるのかどうか、反響が楽しみだ。