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「よりよく老いる」になぜウェートトレーニングが有効か

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ダンベルを使って施設内でトレーニングをするお年寄りたち=ドイツ・ヴァイセンフェルス、2017年7月26日、picture-alliance/dpa/AP
ダンベルを使って施設内でトレーニングをするお年寄りたち=ドイツ・ヴァイセンフェルス、2017年7月26日、picture-alliance/dpa/AP

高齢者がウェートトレーニングをすれば、体力や筋肉量を増強するだけでなく、運動を続けるモチベーションや自信を高められる可能性がある。ダンベルを使ったウェートリフティング(重量物の上下運動)が感情面にどのような影響を与えるか、新たな研究として調べたところ、こうした可能性が判明した。

筋力トレーニングを始めるには年を取りすぎているとか、不向きであると思い悩む人たちの体や心が、どう反応するか、この研究結果によって知ることができた。

もちろん、ダンベル体操がうまく年齢を重ねていくのに役立つことを示す根拠はすでにいくつもある。私たちのほとんどは、40代初頭までに10年間で約5%の割合で筋肉を失っている。筋肉量が減少することで、私たちはしばしば虚弱さと依存への下降線を突き進むことになる。

だが、ダンベル体操をする高齢者は、そうした降下を遅らせるか逆転させる可能性があることを研究は示している。複数の実験で、ダンベル体操を始めた高齢者は一般的に、筋肉量や体力が増し、優れた機動性や精神的な鋭さ、健全な代謝状態を得られることがわかった。

ただし、ダンベル体操は実際にそれをする人に効用があるが、統計によると、規則的にダンベル体操を行っている高齢のアメリカ人はわずか17%しかいない。

そこで、ウェートトレーニングと高齢者についての大規模な研究の一環として、フィンランドのユバスキュラ大学の科学者たちは、ウェートトレーニングをすると、それまでしたことのない人たちの心と筋肉組織にどのような変化をもたらすかを探究することにした。

まず、健康データベースをもとに、筋トレを始めることに同意した計81人の高齢者男女を研究対象にした。この被験者全員が65歳から75歳の年齢層に属し、多くのフィンランド人同様、いずれも健康で肉体的にも活発な人たちだ。しかし、以前はダンベル体操をしたことがなかった人たちでもある。

本格的な研究に向けて、まず被験者に適切なテクニックを習得してもらい、体力の基礎をつくるために、週2回、監督下での全身筋トレのプログラムを大学で始めた。

そして3カ月後、被験者をそれぞれ週1回、週2回、週3回ずつトレーニングをするよう無作為に割り当てた。これとは別に、比較のためにトレーニングをしないグループも設けた。研究者たちは定期的に被験者の筋力、フィットネス(健康状態)、代謝の健全度をチェックした。また、トレーニングに取り組む被験者たちの姿勢が消極的か、やる気をかき立てられているのか、時間を見つけてトレーニングに来ることをどの程度苦にしているのかといったことも調べた。

トレーニングを6カ月続けたが、終了するころまでには被験者たちは、週1回だけの人でも、ほぼ全員が体力を増し、健康状態を示すさまざまな指標が改善した。

監督下で何カ月にもわたるダンベル体操を行った後、その後どうするかは被験者各自に任せた。研究者たちは、被験者が大学の施設を今後使えないことを伝え、それぞれの居住地区にある安くて適当なジムに関する情報を提供。以後、トレーニングは各自が自分の意思で行うことにしたのだ。

こうして6カ月後、研究者たちは被験者とコンタクトを取り、ウェートリフティングを続けているか、どのくらいの頻度で行っているかを調べた。さらにその6カ月後、研究者たちは同じ質問を繰り返した。

研究者たちが驚いたのは、本格的な研究が終わって1年が過ぎても、被験者のほぼ半数が少なくとも週1回のダンベル体操を続けていたことが判明したこと。
「私たちは、(ダンベル体操の継続者は)30%と推定していた」とティイア・ケカライネンは言う。ユバスキュラ大学の研究者の一人で、今回の研究論文の上級著者サイモン・ウォーカーおよびその他の著者とともに心理面の研究を行った。

もう一つ、筋肉と(ウェートトレーニングをする)モチベーションの間には直接的な相関関係がほとんどないことが判明したのも研究者たちを驚かせた。研究への参加期間中、体力や筋肉量が最も増強したケースは、必ずしもトレーニングに一番熱心だった人たちではなかった。熱心だったのは、ジムに来て、最も能力がついたと感じられる人たちの方だったのだ。自信の度合いを測る自己効力感(self-efficacy)が研究参加期間中に実質的に増大した人の場合は、女性でも男性であっても、その後もダンベル体操を継続するというのが一般的だった。

実際、ケカライネンが言うには、ウェートトレーニングの研究への参加を楽しみ、やり遂げられるとわかった人たちは、研究者たちによる後押し、あるいは被験者仲間からの励ましや彼らとの交流がなくとも、その後も進んでジムに通うようになる。

「そうした人たちは、筋トレが好きなことがわかったのだ」とケカライネンは言う。

大半の被験者は研究者たちに、こうも語った。ウェートトレーニングは、ジムという場を超えて、自身の身体的能力に新たな自信を与えてくれたと。「彼らは、以前はできないと思っていたことができるようになった」とケカライネン。

確かに一方で、被験者の半数は「他の運動の方がいい」と研究者たちに語ったとケカライネンは言っている。そうした人たちは男性であれ女性であれ、その後はほとんどダンベル体操を続けていない。

ケカライネンや彼女の同僚たちは、ダンベル体操に魅せられる人もいれば、関心を持たない人もいるが、何がそうさせるのかについて、今後探究していきたいと思っている。また、どうすれば懐疑的な人にも訴求力のあるウェートトレーニングを構築できるかといった問題についても研究したいと考えている。
ただ、今回の研究で得た重要な教訓は、自分がウェートトレーニングについてどう思うかを知るには自分でウェートトレーニングをしてみる必要があるということ。ケカライネンはそう言っている。(抄訳)

(Gretchen Reynolds)©2019 The New York Times

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