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プラスチックを追放した女性が披露する、「脱プラ生活」のノウハウ 

ニューヨークタイムズ 世界の話題
ダイアナ・コーエンの家の冷蔵庫にはプラスチックフリーの食品が詰まっている=Adam Amengual/©2019 The New York Times

ベス・テリー(54)は、捨てられたプラスチックでアホウドリのひながどのように殺されたかという記事を読んで、ひらめいた。日々の生活から、プラスチックを追放すべき時が来たのだ、と。

まず、台所に目を付けた。買い物袋、電子レンジ対応の冷凍食品Stouffer'sのマカロニとチーズ、栄養補給食品のClifエネルギーバー、プラスチック製のチューブに入った洗浄済みサラダを処分した。

その次は浴室だ。シャンプーはボトルから固形のシャンプーバーに切り替え、りんご酢で自分用のヘアコンディショナーをつくった。プラスチック容器に入っていない練り歯磨きを見つけるのはとても難しかったので、これまた自分用を重曹でつくった。

プラスチックとの個人戦は、時にやっかいなことにぶつかる瞬間もあった。ハーフマラソンに参加するためカリフォルニアのディズニーランドに休暇をとって行った時、テリーと夫は、再利用できる布製のバッグをホテルに置いてきてしまったが、地元のスーパーではプラスチックバッグしか使っていないことがすぐにわかった。りんごやオレンジ、アボカド、メロンをどうやって運べばいいの?

「そこで、私たちはTシャツの裾を巻き上げて運んだんです」とテリー。原則を曲げず、ホテルまでカニ歩きで帰ったことを振り返った。「ここで甘えてしまったら、次は難なくプラスチックに手を出してしまうでしょう」

プラスチックの使用を追放するべきというライフスタイルへの誓いは、ますます多くの消費者が共有するようになっている。世界中で毎年3億トン近くのプラスチックがつくられ、その多くがストローのような使い捨て製品で、埋め立て地や海に捨てられていることにショックを受けた消費者たちだ。

マーケティング用語としての「plastic-free(プラスチックフリー=脱プラスチック)」は、従来の用語「no carbs(ノーカーブス=炭水化物なし)」の新版として浮上している。プラスチックゼロを誇る商店が米ニューヨークのブルックリンや英ロンドンにオープンした。そうした店では、シリコン製のウォーターボトルや段ボール製のプープスクーパー(訳注=犬や猫などのフンを拾うスコップ)、亜麻布製のiPhoneケースといった品々を売っている。

デザイナーたちは、それがプラスチックを使わないスーパーの売り場であれ、未使用のプラスチックを含まない環境にやさしい服であれ、新しい挑戦としてプラスチックフリーを受け入れてきた。米国の俳優ジェフ・ブリッジスやアーティストのSZA(シザ)ら有名人もプラスチック撲滅運動に加わっている。それに、(脱プラスチックの)手引きを提供するブログや書物もたくさんある。

Procter & Gamble やPepsiCoといった「Fortune500」にリストアップされている企業でさえ一口かみたいと願っている。そうした企業が今年の夏、ガラス瓶入りのTropicanaのオレンジジュースやアルミ缶入りのPanteneのシャンプー、その他の詰め替え可能な非プラスチック容器入り製品の試験販売をする。 「認識は高まっています」とスーザン・フラインケルは言う。サンフランシスコ・ベイエリアのジャーナリストで、「Plastic: A Toxic Love Story(プラスチック:毒性ラブストーリー)」の著者だ。「日常のプラスチックを一掃する運動は口火が切られました。人々の意識はクリティカルマス(訳注=爆発的に普及するための最小限の必要量)にあります」

脱プラスチック生活に布製のショッピングバッグは必須アイテム=Adam Amengual/©2019 The New York Times

しかし、その目標は高貴ではあるが、プラスチックなしの現代生活は現実には不可能だろう。テリーがしたように、プラスチックの廃棄物を毎週かき集めるとしたら、床には巨大なごみの山ができてしまう。さて、どこから始めようか?

「みなさんに、一つ私が強調しておきたいのは、一歩一歩進めることです」とテリーは言う。彼女はメリーランド州のグリーンベルトに暮らす会計士で、「Plastic-Free:How I Kicked the Plastic Habit and How You can Too(プラスチックフリー:私はいかにプラスチックを追放したか、どうすればあなたも追放できるか)」という本の著者でもある。「一度にすべて排除しようとしてはいけません。そうやって、すべてに圧倒されないようにするのが私のやり方です」

言うはやすく、行うは難しだ。ひとたびプラスチック問題に目覚めるや、それは至る所に目に付く。ピーナツバターの瓶、ぶどうの袋、練り歯磨きのチューブ、Tupperwareの容器、Dawnの食器洗剤、Tideの洗濯洗剤、Doritosのチップス、牛乳パックの内側……。

「私が消費しているインスタント食品は何であれ、プラスチックフリー版を見つけることができると思っていたんです」とテリー。「プラスチックを使っているからこそ、そうした即席食品が可能になっていたなんて気づいていませんでした」と彼女は言うのだ。

食料品店に行ってみると、まず、高さ10フィート(約3メートル)の棚に各種ヨーグルトが並んでいるのが目に入るが、ガラス瓶入りは1種類、YoplaitブランドのOuiだけ。でも、あなたはYoplaitのOuiが嫌いだとする。それに、その商品は値段がずっと高い。さて、どうしよう?

プラスチック追放を実践する消費者が危険を回避するには、買い物ができる商店の地図を頭に描いておく必要がある。それには数カ月かかるかもしれないが、ガラス容器入りのミルクはどこで買えるか、ピーナツをすり砕いて自分用のバターをつくれる健康食品の店はどこにあるのかといったことを知るようになるだろう。

そうした消費者たちは、脱プラスチック生活を大いなる不便ととるのではなく、それを楽しみとして受けとめている。

「目が覚めて、考えるんです。『どうしたら、この日をプラスチック製品なしで過ごせるか』って」とダイアナ・コーエン(53)は言う。カリフォルニアのサンタモニカに暮らすアーティストで、脱プラスチックの支援団体「Plastic Pollution Coalition(プラスチック公害連合)」の創設者だ。彼女は「ちょうど今、浴室で使っている歯ブラシをどうするかという課題に直面しています」とも言っていた。

彼女にとって、答えはしばしば農場の産直マーケットでみつかる。そのマーケットは南カリフォルニアにあり、一年中開かれていて、彼女は自分のバッグをもって出かける。「私はバスケットや布製のバッグが大好きで、野菜を詰め込みます。ガラス製のジャムの瓶も持っていくつもりです」

農場の直売マーケットで売られている新鮮な品々=Adam Amengual/©2019 The New York Times

脱プラスチック生活を目指す人たちの多くがそうであるように、コーエンは外出する時にはエコ・サバイバルキットを必ず持っていく。それにはスチール製のコップ、竹製の台所用品あるいは金属製の先割れスプーン、ステンレス製のストロー2本、布製のバッグなどが入っている。彼女にとって、家から出る際、準備に数分よけいに費やすことは価値があることなのだ。「前もって、とても慎重にしておく必要があるのです」と言う。

実際、プラスチック追放を目指す人たちは、その障害になる物資を遠ざけて暮らすように生活を組み立て直す必要がある。そのレストランではプラスチックの皿しか出さないとしたら、そこへは食べに行かない。ファストフードはどうか?

大半がプラスチックで包装されている。ジュースバーのスムージーは?

ステンレス製のコップを使わないのであれば、よそへ行くか、自宅で手づくりする。パンは?

プラスチックの袋に入ったパンを避けて、地元のパン屋で買うこと。

農場直売の店で、コーエンはガラス瓶入りの野菜の漬物を買った=Adam Amengual/©2019 The New York Times

とはいえ、時にはプラスチックを回避できない場合もある。プラスチック製の注射器や点滴バッグを使わずに医療を受けられるか。自然災害に遭えば、飲み水にはプラスチック製ボトルが不可欠だ。

脱プラスチック生活を目指す人たちはみな、懸命な努力にもかかわらず、自分たちの暮らしからプラスチックを一掃することはできないと言っている。コーエンには、何十年も使っているヘアブラシがある。テリーは、薬局に行くたびにプラスチック一掃の限界に直面する。そこにはMasonブランドのガラス瓶に薬を入れてくれる薬剤師がいないからだ。

「毎日がチャレンジです」とコーエン。「でも、ラクにはなってきています。新たな振る舞い方を学んでいるところです」と彼女は言い添えた。

ロサンゼルスの農場直売マーケットに買い物に来たコーエン=Adam Amengual/©2019 The New York Times。脱プラスチック生活を目指す彼女は、いつもお気に入りのかごを持っている

最近は、脱プラスチック生活をしやすくなってもきている。認識が広がり、代用品も登場してきているからである。今は、シルク製のデンタルフロスや豚の毛を使った木製の歯ブラシ、ステンレス製の製氷皿。蜜蝋で表面を加工した綿製の食品包装用品、その他の非プラスチック製家庭用品が店で売られている。
しかし、プラスチック製品に代わるステンレス製品や木製品、あるいは包装していない新鮮な食料品などは一般的に値段が高い。それに、貧困地域ではプラスチック製品を回避するのが難しい。誰もがいつでも農場の産直マーケットに行けるわけではないし、そこで買える資力があるわけでもない。

環境学者で、脱プラスチック生活運動団体「Bahamas Plastic Movement」の創設者のクリスタル・アンブローズ(29)は、日々、難問と向かい合っている。島国のバハマで売られている商品の多くは輸入品であり、プラスチックで包まれて船積みされている。

「私は、自分で制御できる場所ではプラスチックを避けています」とアンブローズは言う。彼女はいつも竹製の食卓用品と再利用できるボトルを持ち歩いている。「私には、プラスチックのバッグを使わないことに大きな意味があります。でも、仕事や子どもの世話、その他の雑事をこなす母親にとっては、優先すべきことが私とは違います」

プラスチックを回避するのにカネ持ちである必要はないということを示してやるのが、アンブローズの使命の一つだ。「竹製品の食卓用具キットを買える余裕のない人もいます。でも、それなら家からフォークを持ってくればいいのです」と彼女は言う。「パスタのソースが入っていた古い瓶だって、何かに再利用できるんです」(抄訳)

(Steven Kurutz)©2019 The New York Times ニューヨーク・タイムズ

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