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世界一孤独なカエルに、ついに恋の相手が きっかけはマッチングサイト

ニューヨークタイムズ 世界の話題
セウエンカス水生カエルのロミオ=Robin Moore/Global Wildlife Conservation via The New York Times/©2019 The New York Times。「世界一孤独なカエル」だったが、ようやくお相手のジュリエットが見つかった

生き物には、恋の季節がある。ロミオだって、そうだ。ところが、その季節にめぐり合えないできた。

別に、ロミオに欠陥があるわけではない。確かに、気が弱く、ミミズの類いを食べ、まつげもない。それでも、順調に年を重ね、10歳になった。言ってみれば、「ちょっと特別なやつ」なのだ。

ロミオはカエル。一生水から出ない水生カエルで、南米のボリビアにすむ。生息地にちなんで「セウエンカス水生カエル(Sehuencas water frog)」と呼ばれ、「アルシド・ドルビニ自然史博物館」(訳注=同国第3の都市コチャバンバにあり、19世紀に南米を訪れたフランス人博物学者の名が付いている)の水槽で孤独な日々を過ごしてきた。年がたつごとに、「地球上の最後の一匹」との危惧が深まっていた。

霧が多く、湿度の高い山中の常緑樹林でロミオが見つかったのは、10年前のことだった。折しも、致命的な感染症であるカエルツボカビ症が猛威をふるうようになり、この地域のカエルにも深刻な被害をもたらしていた。

研究者がロミオを博物館の生物保護・繁殖センターに連れてきたときは、いずれ恋のお相手が見つかるはずだった。しかし、小川という小川を探し回っても、空振りの連続だった。

ついに、ロミオは「世界で一番孤独なカエル」とされ、寂しい胸の内を多くの人間とツイッターでシェアするようにまでなった。それほど状況は、絶望的になっていた。

その鳴き声がついえてしまう前に、ぜひともお相手を探さねばならなかった。いくつかの自然保護団体は話し合い、2018年に恋愛・結婚の大手マッチングサイトMatch.comにロミオのプロフィルを出した。

ボリビアの博物館で飼われているセウエンカス水生カエルのロミオ=D.Alarcol and D. Grunbaum/Global Wildlife Conservation via New York Times/©2019 New York Times。おなかの色に特徴がある

それが、共感を呼んだ。ジュリエットを見つける探検隊を派遣するために、バレンタインデーに2万5千ドルもの寄金が集まった。

結論から言うと、ジュリエットはめでたく見つかった。ロミオは、もうすぐ哀れな独身者ではなくなりそうだ。この「悲運の恋(と科学)の物語」に、自然保護に携わる関係者は大きな希望を見いだすようになった。2匹が出会い、首尾よくいけば、子孫が生まれ、いずれ自然に戻される。生息地が復活し、感染症にかからずに種が継がれていくかは、時が語ってくれることになるだろう。

「ハッピーエンドを見つけ出すことを、絶対にあきらめないでほしい」

ロミオのような問題を抱える人々すべてに、ジュリエットを見つけたテレサ・カマッチョ・バダニはこう伝えたいと言う。ロミオがいる博物館の爬虫(はちゅう)両生類学者だ。

18年に、探検隊とともにジュリエット探しに出た。かつての生息地セウエンカスには巨大なダムができていて、これまでの資料はほとんど役に立たなかった。地元の案内人は、人の手が入っていない小川を選んでくれた。しかし、以前なら数十種ものカエルがいたところに、その姿はもうなかった。ましてや、ロミオの仲間はとくに見つけにくかった。標高の高い場所の大きな岩がある水の中にいて、出てこないからだ。

びしょぬれに、寒さの追い打ち。霧深い、密生した森の中での骨が折れる作業。もう断念するつもりで、最後の小川を調べた。そのとき、カマッチョ・バダニは、小さな滝から流れのよどみにカエルが飛び込むのを見た。

かけ寄って、飛び込んだところを手で探り、カエルを引き上げた。それが、ジュリエットだった。

「ついに、見つけた」。カマッチョ・バダニは、思わず叫んだ。

一行は、そこでさらに4匹を捕まえた。メスが1匹とオスが3匹だった。

ジュリエットに病気の様子は見られない。それでも、まだ隔離して観察を続けている。ロミオと会うのは、健康が確認されてからになる。「会ってすぐに感染するということのないように」とカマッチョ・バダニは慎重だ。

2匹は、性格が正反対のカップルの典型になりそうだ。ジュリエットは、気性が激しくて活発。ロミオが避けるカメラだってへっちゃらだ。共通点は、ミミズの類いが好きなことだろうか。

相性が合えば、2匹の子孫を野生に戻すことにしている。ただ、その前に病気のない、すむのに適した環境をよく研究し、生息地となる地元の協力も取りつけねばならない。

それに、マッチングサイトのロミオのプロフィルも消さないといけない、と探検隊のカメラマンを務めたロビン・ムーアは笑う。米野生生物保護団体グローバル・ワイルドライフ・コンサベーションの広報責任者でもある。

「あきらめて、『このカエルはもういなくなった』と言うようになることは簡単」とムーアは語る。「『もう少しでロミオが最後になるという話になっていたんだ』と言えるようになることと比べれば、大違いだ」(抄訳)

(Joanna Klein)©2019 The New York Times

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