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サルがペットで何が悪い?

世界報道写真展から――その瞬間、私は 更新日: 公開日:
Photo: Jasper Doest

オランダの写真家、ヤスパー・ドュースト(38)は11年前に温泉につかるサルと出会って以来、日本を定期的に訪れ、サルを撮り続けている。愛らしい姿にも増して、興味をかきたてたのは、日本社会の人間とサルの関係だ。

ヤスパー・ドュースト

日本では古来、サルは神の使いとして大切にされていた。だが、やがて人間より劣ったものとして笑いものにされ、昨今は農作物を荒らす害獣として駆除されるまでになった。

ヨーロッパ人旅行者の肩にひょいと乗ったサル。この宇都宮市の居酒屋では、客におしぼりを運んだり、芸をしたりするサルが外国人観光客にうけている。

だが、初めて猿回しを見た時は、素直には笑えなかった。同時に、外国人の自分が「異なる文化を基準に判断してはいけない」とも感じた。家族にも見せてみた。ぞっとする妻をよそに、幼い2人の娘は大喜びだった。

ある家庭では、イヌとたわむれる子どものわきで、母親がサルを抱いていた。その自然さにペットに対する常識が揺らいだ。イヌが良いなら、なぜサルはだめなのか。「個人的な好奇心をたどる旅路から、社会に一石を投じることができる。これがフォトジャーナリストの面白さだ」

野生のサルが人間におもちゃのように扱われたり、農作物をめぐって敵対したりする状況は、何らか変えるべきだと感じている。ただ、「日本の社会を批判する気はない」。同じ問題は他国にもあり、作品がそれぞれの社会で動物と人の関係を語り合うきっかけになることを願っている。

 ■日本のサル

 国内でサルは九州から東北まで広く生息しており、青森県下北半島のニホンザルの群れは世界最北で、国の天然記念物にも指定されている。

古来、山神の使いとして神話に登場したり、あがめられたりしてきた。鎌倉時代には、「猿回し」のようなサルを使った芸があったことを示す記録もある。戦後の高度経済成長期から、観光や研究のため餌付けする施設も各地にできた。

ただ、近年はイノシシなどと同様、サルによる農作物への被害が問題になっている。電気柵などと併せて、多くは殺処分を意味する「有害鳥獣捕獲」が各地で行われている。環境省によると捕獲数は増加傾向で、2015年度は約2万5100頭だった。

世界報道写真展2018

6月9日から8月5日まで、東京都写真美術館で写真展を開きます。7月14日から3日間、プロを目指す人のワークショップもあります。詳しくは美術館のサイトで。