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北欧言語を学ぶ。語学勉強に必要な「悔しい」気持ち

ノルウェー通信
雪で覆われているオスロの2月 Photo:Asaki Abumi

私がノルウェーに初めて引っ越したのが2008年。それまではノルウェーがどこにあるかも知らず、ノルウェー語も一言も話せなかった。現在はノルウェー語を話し、昨年末からスウェーデン語、今年からフィンランド語とデンマーク語の勉強を始めている。フランス語と英語も完ぺきではないが話せるため、語学勉強のコツを聞かれることがある。今回はどうやって自分なりに勉強してきたかを振りかえってみたいと思う。

オスロ大学入学、ノルウェー語の知識はゼロ

オスロ大学メディア学科に正規入学することが決まっていたが、そのための条件が、大学で1年間ノルウェー語の授業を受け、指定のレベルの試験を合格すること。本来、ほかの留学生であれば18か月かけて学ぶコースを、12か月で学べという厳しい指令だ。実際、1年後に試験に受からず、ビザが更新できずに泣く泣く帰国する人もいた。

当時のオスロ大学のノルウェー語クラスは無料で、教科書代を自分で負担するのみだった(物価が高い国なので、教科書や文房具代もばかにならない)。

今考えると不思議ではあるが、日本で発売されている日本語でノルウェー語を学ぶためのテキストを利用していなかった。唯一持参していた『旅の指さし会話帳』の後ろの文法解説ページを、ぱらぱらと見ていただけだった。日本語での教材があったほうがいいかは、人によって分かれるのだろう。

幸いなことに、先生には恵まれていた。当時の先生一人とは、今でも交流が続いている。先生との相性は、語学勉強のモチベーションに大きな影響を与えるので、先生が合わないとクラスを変える生徒もいた。

当時使っていた教科書の一部。ぼろぼろになっている表紙を見ると、当時の頃を懐かしく感じる Photo: Asaki Abumi

どうせなら楽しんで勉強する

語学勉強をする時に、私なりのルールがある。文法や単語のレベルが高いかは関係なく、「好きな文章」から丸暗記していくことだ。

結果、私が最初にいつも覚えようとする単語は、「私は猫が好きです」、「私はコーヒーが好きです」など。自分の故郷・秋田県のこと、日本での生活、家族構成、趣味、仕事など、よくある定番の自己紹介文や、話していてわくわくすることを、現地の人に教えてもらい、丸暗記する。

教科書の1ページ目を理解しようとするよりも、まずは自分が声に出していて、「楽しい」と思うことをペラペラ話せるようにしてしまうのだ。

だから、オスロ大学ノルウェー語クラスの時も、自分の生い立ちや、当時大好きだった化粧品の話などを、全部文章にして、先生に毎回添削してもらい、楽しんで覚えていた。

先日も、知り合いのフィンランド人に、「私、フィンランド語の勉強を始めるんだ。それでね、まず教えてほしい文章があって、『猫が好き』って、ここに書いて?」とノートを出すと、相手にきょとんとされて、笑われた。

「楽しんで勉強するのが一番」と思っているので、10ページのノルウェー語クラスの最後の試験レポートも、大好きなテーマに絞り、「日本とノルウェーの化粧品におけるコミュニケーション文化の違い」について書いていた。口頭試験も、自分がわくわくして話せるテーマにするために、会話の流れをよく変えた。

自分なりの勉強法があるか

語学勉強は、自分の勉強法が分かっていると、習得のスピードが速くなる。英語とフランス語をすでに勉強した後だったので、ノルウェー語の基礎的な習得は1年間でなんとかなるだろうと、ひょうひょうと構えていた自分がいた記憶がある。フランス語の文法に比べて、ノルウェー語はそこまで複雑ではなかったのも、「ラッキー!」と気持ちを楽にさせてくれた。

文法の間違いを繰り返して、少しずつ覚えていった Photo: Asaki Abumi

途中で挫折しないような環境をつくる

フィンランド語を学べる学校やクラスはオスロにはないようなので、今どうしようかと考え中だ。語学のクラスは、一緒に勉強する人たちがいるので、競争意識が良い意味で高まる。とりあえず、ノルウェーにある「フィンランド・ノルウェー協会」の会員になり、Facebookでフィンランド語を学ぶ人たちのグループに入ることで、やる気を維持。オスロで語学パートナーになってくれる人がいないか、知人らに聞いてまわっている。

スウェーデン語とデンマーク語に関しては、オスロにも両国出身の知り合いがいるので、会話の練習相手になってもらえる。特にスウェーデン語に関しては、スウェーデン人記者の知り合いもいるので、仕事先でもよく教えてもらえるようになった。

北欧といっても、スウェーデン語とデンマーク語はノルウェー語に近いので、なんとなくわかるのだが、フィンランド語は全く似ていないので、さっぱり分からない。分からなさ過ぎて、むしろ好奇心がうずうずする。

3言語の勉強を途中で放り出すことがないように、SNSや周囲の友人に語学勉強宣言をした。このように記事にしてしまうことでも、後戻りしにくくなる。

なぜ、北欧言語にチャレンジ?

北欧の3言語の勉強に乗り出すきっかけは、昨年のスウェーデン選挙の取材だった。いくら「北欧」とはいえ、違う国。スウェーデンやデンマークのニュースは前からチェックしているが、「住んでいない国での政治取材は大変だろう」、そう思い込んでいた。だが、思った以上にすいすいと全てがうまくいってしまった。

言語だけではなく、ノルウェーで政治や選挙の仕組みを理解していて、ある程度似ていたこと、政党への接触のコツの仕方などをノルウェーで体験していたことで、取材がスムーズに運んだ。

言語が似ているので、ノルウェー語話者とスウェーデン語話者同士でもなんとなく会話はできるので(たまに単語は全然違うこともある)、現地では子どもや英語が苦手な人とも知り合うことができた。

「私がスウェーデン語を話せたら、もっといろいろ聞き出せるし、資料も読み込めるんだろうなぁ!」という思いが強くなり、「久しぶりに、語学勉強するか!」と思う良いきっかけになった。自分が努力することで、相手とのコミュニケーションが少しでも円滑になるのであれば、喜んで勉強する。

宿題で日本の妖怪を紹介する自由文を発見。河童のことを先生に説明している Photo: Asaki Abumi

今はアプリでも勉強できる時代

今回、北欧3言語の勉強を始めての面白い発見が、スマホでのアプリを利用する勉強だ。

私が英語・フランス語・ノルウェー語を勉強していた頃は、アプリで勉強というのは普通ではなかった。だが、今は様々な語学勉強アプリがある。無料よりも、有料アプリのほうが個人的にはおすすめ。

今は、「Memrise」(フィンランド語・デンマーク語)、「Duolingo」(スウェーデン語・デンマーク語)、「Nemo」(フィンランド語)を利用している。「Babbel」も利用したが、1回のレッスン時間が15~20分かかることもあるので、途中でやめてしまった。最初に紹介した3アプリのほうが、レッスン時間が短くて、寝る直前や電車での移動時間にささっと利用できる。アプリは今後もいろいろ試していく予定だ。

電子辞書も今はアプリで使える素晴らしい時代。ノルウェー語・スウェーデン語は「ORDNETT」、英日は「ランダムハウス英和大辞典」を愛用している。

これに加えて、スウェーデン・ノルウェー・デンマークは、現地の新聞社やテレビ局のニュースアプリをチェック。

便利な時代だ。語学勉強の手段が広まっていていいなと思う。

英語とフランス語の勉強はこうした

英語の勉強にはまったきっかけは、中学校での親友が、とても楽しそうに英語を勉強していたからだ。加えて、公文と進研ゼミでの一番好きな科目も英語だった。結果、短期留学でアメリカでホームステイし、高校時代に1年間オーストラリアの高校で学んだ。

語学を話せると、ほかの国と人と直接交流できて、自分がそれまで考えもしなかった価値観や生き方を知ることができる。それが私の目を大きく開かせて、人生を楽しくしてくれた。

上智大学ではフランス語学科にいたのだが、サークル活動に没頭しすぎて、成績が下がる。「これはいけない」と思い、自分が語学レベルを効率的に一気に上げるなら、現地で暮らしたほうが早いと思い込んでいた。結果、フランスへ1年間留学し、会話ができるようになる。

柔軟な姿勢で、分かったふりをしない

スキーの試合の取材をしている途中で、盛り上がっていた観客の方々と。語学ができると、会話の輪も広がる Photo: Asaki Abumi

私は語学勉強に関しては、あまり完ぺき主義ではないほうだと思う。会話していて、文法や発音を間違えていても、あまり気にしない。それよりも、会話全体が成り立ったか、意思疎通ができたかのほうが大事。

ジャーナリストの仕事をしていると、外国語の会話中に、「わかったふり」、「わからないことを放置しておく」は危険だ、日本人読者のための記事が書けなくなる。そのため、「今のを分かりやすく、もう一度お願いします」とすぐに自分から言うことが多い。聞き取れなかった重要な単語や数字は、相手にノートに書いてもらうこともある。

モチベーションがあるか

語学勉強のコツを聞かれる時、相手に確認したいのはモチベーションだ。「学校や仕事のために、仕方ないから勉強するのか?」。「しぶしぶ」、「仕方なく」という姿勢があると、挫折しやすいだろう。

また、語学勉強で行き詰った時に、「誰かのせい」にする傾向がある人もいる。「相手の方言が分かりにくいから」、「教科書がアカデミックすぎるから」など。できない理由を誰かのせいにしていると、前には進みにくい。

「悔しい」という体験をしたか

「さっきの会話で、あそこが分からなくて……」など、相手から相談を受けた時に、「そこで悔しいと思えたんですか?よかったですね!」と答えることがある。

「悔しい」という体験は、語学勉強で人を成長させる、かけがえのない体験だ。お金を払えば、テキストは買えるし、留学もできるし、語学学校にも通うことができる。でも、「悔しい」というリアルな体験と記憶は、お金を払っても返ってこない。

「うまく交流できなかったな」、「伝わらなかったな」、「何も話せなかったな」という悔しい体験をした人は、それをマイナスに捉えることはない。あなたは、今後自分の背中を押してくれる、お金には代えられない貴重な体験をしたのだ。

語学ができると、世界が広がる。最近、また語学勉強を再開した私の毎日は、前よりも刺激が増えて、わくわくしている。

※最後に、この記事を書いている途中で、フィンランド語の先生が見つかった。Facebookで「フィンランド語の先生を探している」とつぶやいた後、ノルウェー人の友人がプライベートで教えてくれる人をすぐに見つけ出してくれた。レッスン1日目が楽しみだ。