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ロシアのYouTubeは子供が主役? 独自のソーシャルメディア事情に迫る

迷宮ロシアをさまよう
「TOK」というロシアの動画サイト(https://tok.ria.ru)。国営情報機関「今日のロシア」が運営しており、問題を提起するもの、ほっこりするもの、ちょっと笑えるものなど、多数の独自動画を発信している

YouTube始めました

完全に個人的な話で恐縮ですが、筆者は昨年11月、個人のYouTubeチャンネルを立ち上げ、動画による情報発信を始めました。「週刊ロシア経済」、「2019年ウクライナ大統領選特報」といったプログラムをお届けしています。これまでもホームページ、ブログ等はやっていましたが、映像や音声での表現は自分にとって未知の領域であり、新たな挑戦です。

それで、筆者の場合、自分が何かに関心を持つと、「この問題は、ロシアではどうなっているのだろう?」と、調べたくなるクセがあります。今般、YouTubeをはじめとするロシアのソーシャルメディアの現状に関する情報を収集してみましたので、今回はこの話題をお伝えします。

ロシアのソーシャルメディア事情

「スタチスチカ」という国際的な分析会社の調査によれば、ソーシャルメディアのユーザーはロシア国民全体の47%に相当し、6,780万人に上るということです。その6,780万人に対する各SNSおよびメッセージアプリの普及率を示したのが、上のグラフです。ロシアで最も利用者が多いSNSは、YouTubeであるという結果が出ました。YouTubeについては後ほど詳しく語りたいと思います。

ロシアで特徴的なのは、Vkontakte(フコンタクチェ)、Odnoklassniki(アドノクラスニキ)という、世界的にはあまり知られていないSNSのユーザーが非常に多い点でしょう。はっきり言うと、フコンタクチェとアドノクラスニキは、フェイスブックのパクリのようなもので、ユーザーはロシアを中心とした旧ソ連圏に集中しています。このご当地SNSに市場を奪われているせいで、ロシアではフェイスブックの普及率があまり高くありません。

ちなみに、フコンタクチェとアドノクラスニキの違いは、前者が若者を中心として非常に活発な情報交換が行われる場であるのに対し、アドノクラスニキはどちらかと言うと大人が落ち着いたやり取りをする場である、といった感じのようです。

上のグラフを見ると、ロシアではインスタグラムが大して人気がないように見えてしまいますが、グラフは2017年第4四半期の状況であり、実はロシアでインスタは2018年に爆発的に伸びました。過去1年半ほどでアカウント数が3倍に増えたそうですので、現時点ではYouTubeと肩を並べるくらいの普及率になっているものと思われます。インスタのユーザー数で、ロシアはすでにヨーロッパ1位に、世界でも6位になったということです。

というわけで、現時点では、YouTube、インスタ、フコンタクチェが、ロシアの3大SNSということになっています。一方、日本などでは広く普及しているツイッターは、ロシアでは不人気。そのユーザー数は、YouTubeやインスタに比べれば数分の1にすぎないようで、上掲のグラフにも登場しません。ロシア人は概して大きなもの、リッチなものが好きなので、狭い枠組みに短文を書き込むツイッターなどは国民性に合わないのかもしれません。

モスクワの某商業施設のパソコン・デジタル用品売り場(撮影:服部倫卓)

ロシアのYouTubeおよび動画の世界

ある調査によれば、ロシアのYouTubeユーザー数は、アメリカ、ブラジルに次いで、世界で3番目に多いということです。また、YouTube以外でも、最近ではロシア国民がフコンタクチェ、アドノクラスニキ、フェイスブックに投稿する際に、動画形式の投稿が増えているそうです。ロシアは世界的な動画大国の一つになったと言っていいでしょう。

さて、日本ではYouTubeと言うと、面白動画などを配信して若者を中心に多くのファンを集めている「ユーチューバー」が主役となっている感があります。ロシアでは、どのようなチャンネルが人気なのでしょうか? ロシアのWhatStatというサイトに、ロシア発のYouTubeチャンネルの登録者数ランキングが出ていますので、これをチェックしてみましょう。

これを見て気付くのは、ロシアのYouTubeチャンネルで上位を占めているのは、幼い子供に関係しているものが多いことです。1位のGet Movies(2月15日現在のチャンネル登録者2,251万人)は幼児・児童向けアニメを配信するチャンネルで、2位の「マーシャと熊」(1,969万人)も同名のアニメ作品専門のチャンネルです。3位のKids Diana Show(1,912万人)、4位のLike Nastya Vlog(1,748万人)、7位のMiss Katy(1,245万人)などは、いずれも幼い子供が愛嬌を振りまく動画集であり、内容自体は微笑ましいものの、「可愛い子供で視聴回数を稼いで、親の懐に広告収入が入っているのか?」などと勘繰ると、複雑な気持ちになります。いずれにしても、ロシアのYouTubeで「子供が主役」というのは、なかなか興味深い現象だと感じました。

もちろん、YouTubeをはじめとするソーシャルメディアは、もっと上の年齢層のロシア国民の生活様式にも、変化をもたらしています。日本ほど極端ではないかもしれませんが、ロシアでも最近は若者がテレビをあまり観なくなり、YouTubeなどで情報を得るようになっていると指摘されます。たとえば、ユーリー・ドゥーチ氏というユーチューバーは、社会全体での知名度はほとんどありませんが、18~24歳くらいの若者層の一部ではカリスマ的なオピニオンリーダーとなっているようです。

もう一つ、最近知って面白いと感じたのは、ロシア自由民主党のウラジーミル・ジリノフスキー氏が、意外と若者層に人気があるという話です。日本では「極右」として恐ろしい政治家のように紹介されることの多いジリノフスキーですが、本人は自覚的に道化を演じているところがあり、国粋主義的な発言も庶民を笑わせるエンターテインメントと割り切っている感じがします。こうしたキャラクターは、YouTube的なものと親和性が高く、ジリノフスキーはそれゆえに旧世代の政治家の中で唯一と言っていいほど若者への訴求力があるようなのです。