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寂しさがアメリカの分断を招いている

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シカゴのスカイラインと、凍ったミシガン湖を前に佇む男性=ロイター

How Loneliness Is Tearing America Apart

11月23日付 ニューヨーク・タイムズ紙

米国では最近、国民がpolarized(分極化され)、左か右かのtribe(トライブ、集団)に分かれてしまっている。各トライブはテレビで好みの評論家を見たり、自分と同じトライブの人とだけソーシャルメディアで会話したりする。

その結果、左右がsiloed(互いに連携のない分離した形)になり、political spectrum(政治的志向)で自分と反対のグループをcontempt(軽蔑)することで、自らのアイデンティティーを見いだすようになってきた。それについてこのオピニオン記事は、興味深い視点を紹介する。人は集団へのbelonging(帰属感)がないと、穴埋めに「怒りの政治」をよりどころとし、そのoutrage(激しい憤り)を通じて、実際にはないコミュニティーのsimulacrum(幻影)を見るというのだ。

シンクタンクを運営するこの筆者は、米国で「寂しさの疫病が蔓延している」とみなす根拠となる数字を紹介する。最近の世論調査で、大多数が強い孤独感を抱き、人間関係にsignificance(意義)を見いだせないと感じているそうだ。約半数が、時々あるいはいつも孤独を感じるか、left out(仲間外れにされている)と感じると回答。うち13%は自分のことを良く知る人がいないという。

米国で急増する自殺と薬物中毒死は、寂しさと関係している可能性が高い。寂しさの一つの原因は、仕事の変化だという。職場は一種のコミュニティーで、多くの友人や配偶者と出会うかも知れない。しかし近年、職場がattenuating(希薄になっている)。仕事が見つけにくくなる一方、ギグエコノミーが成長してジョブホッピングする人が増え、住む街を転々と替える人も少なくない。「精神的ホームがない」という意識がpervasive(広がり)つつあるのだ。

多くの米国人がthick(とても親しい)コミュニティーに属していないのは心配だ。そこでは互いをよく知り、look out for one another(助け合い)、transient(一時的)ではない人間関係に投資するものだ。記事では、どの街に住んでも隣人と仲良くすることを勧める。そうすることで私たち一人ひとりがより幸せになり、米国も立ち直り始めるのではないかという。米国が抱える問題には他の要因があるにしても、これは決して悪いアドバイスではない。