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「欧州グリーン首都」オスロが始動! 最先端の環境の取り組みを世界に発信

ノルウェー通信 更新日: 公開日:
オスロフィヨルド沿いで進む都市開発。左から開発中のダイクマン公立図書館、人気の観光スポットであるオペラハウス、2020年オープン予定の新ムンク美術館 Photo: Asaki Abumi

ヨーロッパの各都市が、受賞したいと思っている賞のひとつといえば、「欧州グリーン首都賞」(European Green Capital Award)だ。EUの欧州委員会によって2010年に選考が開始され、環境・気候変動対策に考慮した都市開発を進める自治体に毎年授与される。

受賞都市は毎年変わり、2019年度の自治体として選ばれたオスロ。1年かけて、持続可能な都市環境の在り方を提案していく。

欧州グリーン首都の1年間は、オスロのグリーンな取り組みが国際的に注目を浴びるだけではない。個人では無力な感じがする気候変動対策だが、受賞したことで、その都市の住民にも自信とやる気を起こさせるきっかけになる。

520万人しかいないノルウェーで、首都オスロの人口は67万人。「小さな国でも、環境に対する取り組みで世界に影響を与えることが可能だ」と、自分の住む街に誇りを覚えるだろう。

オスロでは、年内に180以上のパートナー(団体や企業)が無償ボランティアとして協力し、350以上の緑の催し物が開催予定!

グリーン首都として始動したオスロは1月4~7日にかけて、お祝いのためのオープニングウィークを迎えた。

ノーベル平和賞の授賞式も開催されるオスロ市庁舎で、オープニングセレモニーが行われた Photo: Asaki Abumi
マリアンネ・ボルゲン市長(手前の黒い民族衣装を着た女性)の奥に座るのは、ノルウェーのソニア王妃(青い服の女性)、ホーコン王太子Photo: Asaki Abumi

なぜ、オスロ?

ノルウェーといえば、電気自動車EV普及の先進国として注目を集めるが、グリーン首都に選ばれた理由はほかにもある。

オスロ市議会は、毎年発表される自治体の予算案で、「お金」だけでなく、各機関が減らさなければいけない「二酸化炭素量」も数字として予算案で計上。

2020年までには1990年度と比較して、排ガスを50%減少させ、2030年までに95%減少、2050年までにはカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量と吸収量が同じ)となることを目標としている。

オスロでの新車の30%は、電気自動車EV! 同時に、車よりも交通機関・徒歩・自転車で移動したくなるような都市開発をしている。ゴミのリサイクルのほかに、バイオガス燃料や電気を利用した公共バスなどが増加。

綺麗で使いやすい交通機関。冬にはクロスカントリスキーやスノーボードをする住民が、地下鉄などで近くにある自然へと楽々とアクセス Photo: Asaki Abumi

オスロ中心部の車の出入りを規制するために「カーフリー」ゾーン政策を2015年に発表。車を「ゼロ」とすることではなく、EVも含めて(道路のスペースを占領しすぎるため)、車の数を今よりも減らす。独特の地形が問題で、冬は大気汚染問題が発生するため、車の数の規制は、住民が安心して息をするこためにも重要となる。

茶色い建物が自治体議員が仕事をするオスロ市庁舎。市庁舎周辺はカーフリーゾーンのモデルとして、すでに車の出入り禁止。駐車場だった場所は市民の憩いの場に Photo: Asaki Abumi

ほかにも、綺麗な水、街から簡単に自然へとアクセスできる環境などが大きな評価を得た。

オスロフィヨルド沿いにあり、サウナ会場としても有名なSALTでオープニングウィークを迎える Photo: Asaki Abumi
右から、オスロの政策の最高責任者であるレイモン・ヨハンセン知事、カルメヌ・ベラ欧州委員会・環境委員、欧州グリーン首都2018年に選ばれたオランダのナイメーヘンのブルルス市長、2020年の首都に選ばれたポルトガル・リスボンのメディナ市長、オスロの環境・交通政策の責任を担うバルグ局長 Photo: Asaki Abumi

欧州グリーン首都に選ばれてきた自治体は交流を続け、自分たちの活動や取り組みを互いにシェアして学びあうネットワークを築く。その威力はあまり可視化されないが、絶大だろう。

環境のための都市開発では、車の出入りを規制することなどから、一部の住民からは苦情もくる。新しいことをする時に反対する人は必ずいる。男性ばかりが目立つ環境・交通政策の現場で、若い女性としてリーダー力を発揮するバルグ氏には脅迫も届くが、彼女は屈することなく進み続ける。

ノルウェーの人々は、環境問題において、とても熱心に日頃から議論をしている。なぜだろうか?石油を掘る国として、責任を感じているのだろうか? オスロの環境政策をリードするこの2人に直接インタビューをした。

オスロ市議会執行部 レイモン・ヨハンセン知事(労働党)

「小さいけれど、お金があるオスロのような都市は、環境問題において国際的な責任があると思っています。ノルウェーは石油と天然ガスのお陰で、金銭的に非常に豊か。東京のような大都市が利用できるような解決策を、私たちは試験モデルとして提案できるかもしれません」

ラン・マリエ・ヌエン・バルグ環境・通信局局長(緑の環境党)

「環境・気候問題は、私たちの現代生活で最も大きな課題。だからこそ、ノルウェーの人々は熱心にこのテーマについて話し合います。世界の7割の排ガスは都市から発生しています。日本といえば、新幹線や電車の普及が素晴らしいですね!環境政策はその街ごとによって取り組み方が変わるので、私から日本の政治家の方々にアドバイスというのはしにくいのですが、街をグリーン化すればするほど、今の私たちにとっても、より住みやすい場所となります」。 

オープニング会場にはたくさんの住民が訪れる Photo: Asaki Abumi
環境や気候変動のことを考えるときに、若者や子どもの意見を聞くことは重要だ。オスロの環境マスコットとなったトラと一緒に、子どもたちが意見交換をする Photo: Asaki Abumi
保護者が赤ちゃんや子どもと一緒に来やすいように様々な工夫も。現場には政治家も来る。ノルウェーの冬は雪が多いので、ベビーカーは大きくて頑丈  Photo: Asaki Abumi

車だけじゃない!乗り物もどんどん電気化

今後普及拡大予定の郵便局の電動アシスト自転車を私も試させてもらった。すいすいと動く

車での移動は排ガスを出すし、EVは道路のスペースを占領しすぎる(歩行者と自転車乗りのためにその空間を譲りたい)。郵便局では、これからは電動の自転車でも手紙を配達予定だ。

オスロでは今年70台の電気バスが追加される Photo: Asaki Abumi

みんなで何ができるか、考えよう

欧州グリーン首都となったことを記念して、郵便局では特別な切手を販売  Photo: Asaki Abumi
イベント中、参加者はグリーンな取り組みをもっとしてほしい政治家や団体に手紙を書いた。切手代は郵便局が全額負担。ノルウェーの各政党だけではなく、ドナルド・トランプ大統領にも届けることも! Photo: Asaki Abumi
ノルウェーでは服を大量に捨てる人が多いことが問題視されている。ファッションブランドのベルガンスは、無料で来場者の服を修理 Photo: Asaki Abumi
捨てるはずだった食器や食料を使って、子どもたちは鳥のエサを作った Photo:Asaki Abumi
赤い箱の中にあるのは、いらなくなった靴や本。来場者が持ち寄り、交換した Photo: Asaki Abumi
ノルウェーの環境青年団体の元代表だったギーナ・ギルヴェールさん(17)。12歳に入会した時、自分は未成年で投票権も持たず、環境対策において影響力を持てなかった自分に憤りを感じていたという  Photo: Asaki Abumi
ヨルダン社は、リサイクルされた新しい歯ブラシシリーズを発表。余計なプラスチックを地球上で増やさないために、ブラシ部分はバイオ素材、歯ブラシの手持ちの部分はリサイクルした食品用容器でできている。商品パッケージも紙をリサイクル Photo: Asaki Abumi
気候変動の原因ともなる肉食中心の私たちのライフスタイル。もっと野菜を食べようという試みのほかに、未来の食ともいわれる昆虫食を紹介。コオロギは甘いスナック菓子のようだった Photo: Asaki Abumi
オスロフィヨルドの底には、どんなゴミが溜まっているのか?イベント中にプロのダイバーたちがもぐり、自転車や空き缶など、大量のゴミを見つけた Photo: Asaki Abumi
美しいオスロのフィヨルドに捨てられていたゴミたち Photo:Asaki Abumi
アーティストたちもイベントに参加。ノルウェーのグループ「サステイン」(Sustain)は、捨てられたゴミで衣装や楽器を作る Photo: Asaki Abumi
北欧の先住民族サーミ人は、北極圏でトナカイと移動する暮らしをしてきた。自然と深く関わってきたきたため、環境や気候変動問題において、アクティブに活動する人が多い。サーミの儀式で、私たちが汚染する地球に感謝した。今の消費中心の社会には問題があるとサーミの人は問う Photo: Asaki Abumi

欧州グリーン首都として、これから1年間、様々なグリーンな試みを世界へと発信していくオスロ。地球の自然を守るために、私たちには何ができるだろうか?互いを批判するだけではなく、みんなで楽しく考えていこうと、街は動き出した。

日没を迎えるオスロフィヨルド Photo: Asaki Abumi