1. HOME
  2. LifeStyle
  3. 選挙中なのに無料でもらえる!?北欧スウェーデンの選挙運動を写真で振り返る

選挙中なのに無料でもらえる!?北欧スウェーデンの選挙運動を写真で振り返る

ノルウェー通信 更新日: 公開日:
取材中に収集した各党の無料配布グッズ Photo: Asaki Abumi

9月に実施されたスウェーデン総選挙。選挙中の10日間、首都ストックホルムで取材した、各政党の選挙活動を振り返ってみた。

お隣の国ノルウェーと同じように、スウェーデンでは各政党がスタンドを設置し、さまざまなグッズや政策プログラムを無料配布している。

各党では文房具、飲食物などが無料配布される。ノルウェーでもスウェーデンでも、何を配っていいかというルールは国や自治体では決められていない。

ものを無料配布することで、「有権者や、選挙権を将来持つ若者が党に特別な好感度を抱いてしまう」というような懸念は、ノルウェーでもスウェーデンでもないようだった。

「日本では、文房具や食べ物を配っちゃいけないの?なぜ?」とむしろ聞き返されることが多かった。

「私たちは、グッズに左右されるほどバカではない、政策とは別」と、ノルウェー・スウェーデンでも返ってくる言葉は同じ。

ポスターも貼り放題で、そのサイズが均一なのか、金銭的や人員に余裕のある党にとって有利なのでは、という批判も聞かなかった。

むしろ、市民が気に食わない政党のポスターをはがしたり、落書きするなどして意思表示。

「スウェーデンの極右」として、国際メディアで最も注目を集めたスウェーデン民主党。彼らのポスターには政策が書かれておらず、にっこりと笑いかけてくるだけ。この政党ならではのアピール方法 Photo: Asaki Abumi
ノルウェーでは通りにここまでたくさんの選挙ポスターを貼ることは規制されているので、貼りたい放題(?)のスウェーデンは観察しがいがあった。社会民主労働党のポスターはバラと赤色が目印 Photo: Asaki Abumi
右派ブロックのリーダー、穏健党のポスターは青色 Photo: Asaki Abumi

日本と比べると、強く感じるのは、政治についての質問がとてもしやすい、「なぜ、そうなの?」と政治について興味をわく環境ができあがっている。

各地域にあるスタンドでは、気になることを聞いて、政治の話ができる。井戸端会議みたいに、カフェでおしゃべりしている感覚で。

18~20歳までは地方議員だった穏健党のマクシミリア・ヒルデビー(左・22歳)。ヨン・グランクヴィストさん(右・21歳)と党スタンドで通行人に政策を説明していた。選挙運動を、たくさんの政治熱心な10~20代の若者が支えている Photo: Asaki Abumi
穏健党の戸別訪問に同行。楽しんで政治の話をしようとする人もいれば、「もう事前投票したよ」、「ほかの党に投票するから」と反応は様々 Photo: Asaki Abumi
自宅が留守だった場合は、ポストに政策パンフレットを投函。戸別訪問でも飴や文房具などを配布 Photo:Asaki Abumi
各党の配布グッズを集めるという私の趣味は変わっているため、ストックホルム在住の友人たちは驚いていた。「それで、どの党の飴が一番おいしいの?」と聞かれて、「それは試していなかった!」と気づく。友人と味比べをしてみた Photo:Asaki Abumi
飴だけではなく、グミやドライアップルを配布する党も。いろいろな味があるのだが、私的には中央党のメロン味の飴が一番おいしかった Photo:Asaki Abumi
左翼党では、リップクリームのほかに、コンドームまで無料配布! Photo: Asaki Abumi

政治家と子どもたちが、当たり前のように、自分たちの社会の未来について意見交換できる。

個人的には、こちらのほうが、「楽しい」と感じる。

日本での「ノーマル」は、北欧では「アンノーマル」だった。

中学生たちは、学校の宿題で、各党のスタンドを回り、政策について質問をする Photo: Asaki Abumi
各党への質問の答えをメモし、後でクラス内で発表するそうだ Photo:Asaki Abumi
コーヒーを配布していたおばあちゃんが、社会民主労働党が、これまでどのように男女平等を実現してきたのかを教えてくれた Photo: Asaki Abumi
社会民主労働党の棚には、スペイン語など様々な言語で書かれた政策パンフレットが。投票権はあるが、ノルウェー語があまりわからない移民のこともしっかりと考えている Photo: Asaki Abumi
農家のための党とされる中央党のスタンドには、たくさんの植物。野菜の種も無料配布していた(これはもらって嬉しかった) Photo: Asaki Abumi
地方選も同時開催されるため、ストックホルムの市長候補2人の議論対決も公園で開催 Photo: Asaki Abumi
党の応援に駆け付ける、若者たち Photo:Askai Abumi
話題の「極右」は何を配布するのかなと思ったら、党のブレスバンドのみ。どの党よりも、グッズにお金を使っていなさそうだった Photo:Asaki Abumi
選挙当日、投票会場前では各党の党員たちが選挙人名簿を「無言・笑顔で」配布していた。国の決まりで、投票会場で積極的に政治の話を政党がするのは禁止されている Photo:Asaki Abumi

ノルウェーとスウェーデンでは、若者の政治参加、無料配布グッズ、戸別訪問、スタンドの使用方法に大きな違いはないように感じた。ただ、スウェーデンのほうが、街頭ポスターに関して規制がなく、スタンドデザインを毎回変えるという意味では、変化や多様性に溢れていた。

写真でも見てわかるように、政治を「楽しく」「わかりやすく」する工夫が、いろいろなところで仕掛けられている。

Photo&Text: Asaki Abumi