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韓国映画の聖地、群山は恋愛したくなるような町

現地発 韓国エンタメ事情
群山の街中で見かけた映画「傷だらけのふたり」の写真。群山で撮影された=写真は全て成川彩撮影

韓国映画のロケ地の中で最も長く人気の場所が、「八月のクリスマス」(ホ・ジノ監督)に出てくるチョウォン写真館ではなかろうか。公開から20年たった今も、聖地巡礼のように訪れるファンが後を絶たない。チョウォン写真館は、韓国の西海岸に位置する港湾都市、群山(グンサン)にある。群山は日本式家屋が多く残ることでも知られ、100を超える映画のロケ地となっている。10月の釜山国際映画祭で見た「群山:ガチョウを歌う」(チャン・リュル監督)に刺激を受け、ソウルからバスで2時間半、1泊2日のロケ地巡りの旅に行ってきた。

「八月のクリスマス」は「韓国映画最高のラブストーリー」と言われるほど、愛される作品だ。全盛期のハン・ソッキュ、シム・ウナが主演した。シム・ウナはその後2001年に引退を宣言。20代の早すぎる引退を惜しむファン心理も働き、「八月のクリスマス」が伝説化した。「落ち着いた雰囲気が日本映画みたい」と言う人も多く、実際、日本でも「8月のクリスマス」としてリメイクされた。映画の舞台の半分以上は、ハン・ソッキュ演じる青年が営むチョウォン写真館。ただの写真館と言ってしまえばそうなのだが、行ってみると、写真館の前で写真撮影しようという人たちであふれ返っていた。中に入ると、映画の場面写真や撮影当時の写真が壁いっぱいに飾ってあった。写真館の前にはムウクッという大根スープの有名な店があり、ハン・ソッキュもここでよく食べたというのでまねして食べてみた。素朴な味ながら、風邪気味の体が芯から温まる感じがした。

チョウォン写真館の内部には「八月のクリスマス」の写真が飾ってあった

宿泊したゲストハウスの隣には、映画「群山」の撮影地となったカフェがあった。日本式木造建築を改装したカフェ「小説旅行」は、異国情緒たっぷりの雰囲気で、映画が撮りたくなるのもよく分かる。主演のパク・ヘイルとムン・ソリが座った場所で、映画のセリフを口にしてみた。

群山の数ある日本式家屋の中でも最も有名なのは、通称「広津家屋」、正式名称は「新興洞日本式家屋」。映画「将軍の息子」(イム・グォンテク監督)や「タチャ イカサマ師」(チェ・ドンフン監督)などのロケ地として知られる。畳の部屋や日本風庭園もあって、日本に行かずして日本で撮ったように見える。登録文化財で、かつて住んでいたのが広津さんという日本人だそうだ。広津さんは日本統治下の群山で農場を営んでいた。そもそも群山に日本人が多く住んでいたのは、米を日本に運び出すためだ。韓国では「日本による米の収奪」と言われる。興味深いのは、一見日本式の家屋だが、オンドル(韓国の床暖房)や中国風の丸い窓があり、日中韓が混在していることだ。港町ならではの異文化に対する寛大さが感じられる。

日本式家屋として数々の映画が撮影された「広津家屋」

そういえば、在日コリアンの金守珍監督の「夜を賭けて」も群山が撮影地だ。と言っても群山の街並みが出てくる作品ではなく、バラック小屋の集落を再現したオープンセットをゼロから作って撮影した。集落を流れる川まで作ったというから、群山は映画撮影の受け入れにも寛大なようだ。

旅の最後は、チャンポンを食べに中華料理店へ。チャンポンと言っても、韓国チャンポンは真っ赤で辛い。「群山に行く」と言うとみんな口をそろえて「チャンポン食べないと」と言うぐらい、なぜか群山はチャンポンが有名だ。日本でも横浜や神戸がそうであるように、港湾都市は中華がおいしいらしい。行ったのは「国際飯店」という映画「タチャ 神の手」(カン・ヒョンチョル監督)のロケ地。壁に貼られた出演者たちの写真を眺めながら、真っ赤なチャンポンをたいらげた。

「国際飯店」のチャンポン

ロケ地巡りの旅は、日本統治の歴史を学ぶ旅でもあった。日本人の多くが日本統治の歴史について疎いのは、日本にいてはその痕跡を目にする機会が少ないという理由もあるかもしれない。「群山」のチャン・リュル監督いわく「群山は恋愛したくなるような、やわらかい質感のある街」。そのやわらかさに癒されつつ、「日本による収奪」を繰り返すガイドさんの声が耳を離れず、ちょっと複雑な気持ちでソウルへ戻った。