「No.No.No.」
どこからか勢いよく現れた北朝鮮の官吏たちが、英国の俳優マイケル・ペイリン(75)の撮影チームに3度も「No」という警告を発した。平壌の万寿台前にある金日成、金正日親子の銅像を拝みに来たペイリンが、ラフな雰囲気で撮影しながら、ポケットに手を入れていたためだ。北朝鮮の官吏たちは、この場面を撮り直せと命じた。北朝鮮で最も尊い金氏一家の銅像前で不敬な行動をとれば、監獄に入れられたり追放されたりするという。一転、「恭しい」態度に急変したペイリンは、銅像前で両手を合わせ、撮影を終えた。
9月27日、ガーディアンやデイリー・テレグラフなど英国メディアによると、コメディーシリーズ「モンティ・パイソン」出身の著名な俳優であり旅行家のペイリンは、2年余りにわたる北朝鮮政府との交渉の末、5月に撮影チームを率いて北朝鮮を訪れた。約2週間、北朝鮮に滞在し、取材した内容をもとに作られた旅行ドキュメンタリー2部作「北朝鮮でマイケル・ペイリン(Michael Palin in North Korea)」が英国現地で放送された。20日と27日に分けて放送され、好評で話題になっている。コメディー俳優のペイリンが統制社会北朝鮮の数々の規則を守ろうと懸命な様子が、機知に富みながらも教訓的に描かれていたからだ。ドキュメンタリーを放送した地上波の民間放送「チャンネル5」は、「『リアリティー番組を減らして、このようなクオリティー(良質な)番組を増やして』という視聴者の要望が殺到している」と明らかにした。米国ではこの番組の版権をめぐって放送局が競い合った結果、「ナショナルジオグラフィックチャンネル」が今月放送する予定だ。
ドキュメンタリーにはおもしろい場面がたくさん登場する。午前5時から最大のボリュームで平壌市内に響き渡る北朝鮮の住民起床曲「何処にいらっしゃいますか 懐かしき将軍様」の音でびっくりして起き上がったかと思うと、旅行客でごった返す一般の空港と違って平壌空港にはほとんど人が見えず、「幽霊空港(ghost airport)」というあだ名を付ける場面も出てくる。
平壌小学校を訪れた時には、幼い児童が金氏一家を褒めたたえる詩を朗読し、ペイリンが北朝鮮の体制の偶像化を感じたと語る場面もある。北朝鮮では、70代半ばの自分を完全に老人扱いすると言って不満を漏らす場面もおもしろおかしく描かれた。そうかと思えば、北朝鮮で75歳の誕生日を迎えたペイリンが、監視員2人にお祝いのケーキをもらって感激する様子も。住民たちと一緒に労働節(5月1日)の行事で踊る場面もある。
ペイリンは、ドキュメンタリーの放送前、ロンドンでの記者会見で「最初は北朝鮮の住民が何の感情も持たないロボットのように見えたが、時間がたつ中で少しずつ彼らと親しくなった」と話した。北朝鮮をめぐる国際情勢については、「私はコメディアンなのでよく分からない」と前置きした後、「北朝鮮は変化を求めている。しかし、その変化が住民ではなく指導者が求める方向のようで、心配だ」と明かした。
北極やヒマラヤなどで様々な探検を完遂したペイリンは、「約2週間のコカ・コーラとインターネットがない世界での生活だった。でも、北朝鮮にもう一度行けるなら行きたい。住民たちが温かく接してくれたから」と話した。
(2018年9月28日付東亜日報 チョン・ミギョン専門記者)
(翻訳・成川彩)