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大坂選手で注目される「国籍」 ハーフは困っています

ニッポンあれやこれや ~“日独ハーフ”サンドラの視点~ 更新日: 公開日:

活躍が注目されているテニスの大坂なおみ選手。大坂選手のバックグラウンドとともに彼女の「国籍」にもスポットが当たりました。大坂選手は現在、日本人の選手として活動していますが、米国と日本の二重国籍であるため、将来的には米国人の選手として活動することも考えられるからです。そのため、「大坂なおみ選手は将来、どちらの国籍を選ぶのか。日本かアメリカか」と注目が集まりました。

ハーフの人々が聞かれる「国籍はどちらを選んだの?」

「国籍」問題は、実は国を代表するスポーツ選手のみならず、一般のハーフの人も周りから関心を持たれる場面が多いです。ハーフの人は「日本と●●(もう一方の国)のどちらの方が好き?」「夢は何語で見るの?」などアイデンティティーにまつわる様々な質問をされることが多いですが、その一つに「国籍はどちらを選んだの?」という質問も含まれます。

仕事関連の会合や飲み会など、周りに多くの人がいる場で「国籍」にまつわる質問が突然出ることも珍しくありません。しかし「国籍はどちらを選んだの?」という質問に対して、「日本を選びました」と答えれば「もうひとつのほうの(外国の)国籍はどうして選ばなかったの?」とさらなる質問が飛んできます。逆に質問に対して「外国のほうの国籍を選びましたよ」と答えれば、「やっぱり日本はあまり好きではない?」というようなことを遠まわしに確認されます。そして、ハーフ当事者が「両方持っていますよ」と答えれば、蓮舫議員のいわゆる「二重国籍騒動」のインパクトが大きかったのか、「え・・・それっていいの?」とたちまち疑惑の目を向けられてしまいます。結局、どのような答え方をしても、相手は中々納得しないことが多く、ハーフ当事者は戸惑うばかりなのです。

国籍選択の流れ

では、国籍選択の流れはどうなっているのでしょうか。国籍選択については、こちらの法務省のフローチャートに書かれているように、20歳になる前に重国籍となり、日本の国籍を選択したい場合は、22歳までに「日本国籍の選択宣言(国籍法14条2項後段)」(フローチャートの「2-(2)」の部分)をしなければなりません。大事なのは、このことにより「国籍の選択義務は履行したことになる」ということです。

実は選択義務を履行したことにより自動的に外国の国籍がなくなるわけではありません。外国国籍を喪失していない場合は、外国国籍の離脱の努力(国籍法16条1項)をしなければいけませんが、外国国籍の実際の離脱に関しては、相手国(日本国ではないもう一つの国)の管轄であることから、外国籍を離脱しなくても日本において罰則はなくもちろん犯罪でもありません。外国籍の離脱に関しては当該国(日本国ではなく外国)の法令によるもののため、それは該当国と個人との問題であり、国籍法14条2項後段に基づいて日本国籍の選択宣言をした人に対して、日本の法律で外国籍からの離脱を強制することはできません。

日本がそうであるように、該当国にも該当国の国籍にまつわる法律があり、国によって違いはあるものの、外国の国籍からの離脱はそう簡単にできるものではなく、日本の一部で考えられている「日本国籍を選んだのなら、外国の国籍はすぐに離脱できるはず」というような簡単な話ではありません。

日本の国側もそのことは理解していて、自己の志望によらずに、日本以外の国籍を持っている人(例えば「ハーフ」の人々のように出生による取得等)が期限までに「日本国籍の選択宣言」をしなかった場合、「法務大臣から国籍選択の催告を受け、場合によっては日本国籍を失う」可能性がありますが、実際にはこれまで国籍選択の催告を受けた人はいません。

愛国心のバロメーター?

このように、多くのハーフの人にとって国籍にまつわる問題は、法的にも簡単な話ではありません。日本ではハーフに対して「国籍はどちらを選んだの?」と軽い気持ちで聞く人も多いですが、国籍の選択は非常に個人的なことですので、人が大勢いる場の「雑談の一環」として、自らの「国籍の選択」について語らされることには、やはりある種の理不尽さを感じます。初対面の人に「ところで本籍地はどこですか」といきなり聞かれるようなもの、といえば分かりやすいかもしれません。

また、日本では「国籍の選択」をイコール「どの国に愛国心があるか」という観点だけで考えている人も少なくありません。「国籍はどちらを選んだの?」という質問の中には「あなたの愛国心はどちら?」という質問も同時に含まれている、と感じることがあります。ただ、初対面の人やよく知らない人にいきなり愛国心を確認されるということは、あまり居心地の良いものではありません。

私は最近、「雑談の一環」で「国籍はどちらを選んだの?」という質問をされた場合、果たしてハーフは正直に答えるべきか?そもそも答える義務はあるのか?と疑問に思うようになりました。そして、この手の質問を上手にかわしたり濁す術を身につける必要があるのもまた「ハーフあるある」なのでした。