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どうした?モスクワ・モーターショー 日系など外国メーカーが軒並み出展を回避

迷宮ロシアをさまよう
モスクワ・モーターショーにおける韓国系「起亜(KIA)」の展示。起亜は捨て身の低価格戦略でロシア市場から日本メーカーのセダンをほぼ駆逐してしまった恐るべきライバル(撮影:服部倫卓、以下同様)

ロシア最大の乗用車の祭典に異変が

「モスクワ国際自動車サロン(MIAS)」は、ロシア最大の乗用車の祭典。隔年で偶数年に開かれている展示会で、業界関係者やジャーナリストだけでなく一般市民も数多く訪れる大イベントです。なお、本稿では簡単に「モスクワ・モーターショー」と呼ぶことにします。

今年は偶数年ですので、8月29日から9月9日にかけて、見本市会場「クロックス・エクスポ」でモスクワ・モーターショーが開催されました。筆者はこの見本市を視察し、重大な異変を目の当たりにしました。出展企業が減少し、見本市の規模と格が落ち込んでしまったのです。今回は、モスクワ・モーターショーの凋落について語ってみたいと思います。

ルノー・アルカナは、2018年の数少ないワールドプレミアの一つだったが…

モスクワ・モーターショーの栄枯盛衰

私がモスクワ・モーターショーを初めて取材したのは、2006年のことでした。バブル華やかなりし時代で、当時急成長していたロシアのマーケットに、世界中の自動車メーカーが殺到していました。日系メーカーも、こぞって大規模な展示を披露(ロシアでは軽自動車が売れないので、軽自動車のメーカーだけは不参加ですが)。外国メーカーは売れ筋の車種の展示に主眼を置き、一般客の表情からも高い購買意欲がうかがえ、さながら熱気溢れる展示即売会のような雰囲気を感じたものです。

2008年のリーマンショックを経て、2010年代に入っても、モスクワ・モーターショーはしばらくその規模を維持し、世界有数の自動車見本市の地位を保っていました。各メーカーは、その時点の売れ筋商品だけでなく、新モデルのお披露目やコンセプトカーの展示にも注力するようになりました。新製品を最初に展示することを「プレミア」と呼び、その会場に選ばれることはモーターショーにとって名誉です。たとえば2012年のモスクワ・モーターショーでは、23のワールドプレミア、21のヨーロッパプレミアが行われ、また34のコンセプトカーが発表されました。

ところが、2016年のモスクワ・モーターショーで異変が起きます。参加を見合わせる動きが広がり、乗用車メーカーの出展が一気に11にまで激減してしまったのです。日系メーカーはゼロで、欧米メーカーも軒並み不参加。結局、2016年のモーターショーは、ロシア地場メーカーのAvtoVAZおよびUAZ、ロシアで低価格車を現地生産している韓国系の現代自動車、そして一連の中国メーカーだけが参加という、非常に寂しいものになってしまいました。主要メーカーが出展を回避した理由は、ロシアの経済危機、自動車市場の落ち込み、モーターショーの効果の低さ、出展費用および設営費の高さと指摘されました。

そして、本年のモスクワ・モーターショーでは、乗用車メーカーの出展は12社となりました。前回から増えたものの、ロシアの景気が持ち直し、自動車販売も回復しているにもかかわらず、わずか1社しか増えなかった事実を重く見るべきでしょう。日系や欧米の主要メーカーは、引き続きモスクワ・モーターショーをボイコット。外資の大手で出展に踏み切ったのは、ロシア市場に密着して低価格モデルを現地生産している韓国系の現代自動車(傘下の起亜も含む)および仏系ルノー、そして屋外でイベント色の濃い展示を行った独系フォルクスワーゲンだけでした。

新製品のお披露目も、ロシア・メーカーのAvtoVAZと、仏系のルノーが実施した程度。AvtoVAZは、販路がロシアを中心とした旧ソ連市場にほぼ限られるので、モスクワで新製品を発表するのは当たり前です。また、ルノーの新モデル「アルカナ」のワールドプレミアが今回モスクワで行われたのは、同モデルがロシアで生産され主としてロシア向けに販売されるからであり、これまた当然のことでした。

乗用車ではないが、日本勢では川崎重工のバギー車およびバイクが展示されていた

モーターショーそのものが曲がり角に

かつてのモスクワ・モーターショーでは、展示車両数も来場者数も多かったので、人をよけて歩くのが大変なほどでした。しかし、今年は展示が妙に間延びしており、人もまばら。以前は、すべての展示を見ようと思えば1日がかりで、へとへとになりましたが、今回は2時間くらいですべて見終ってしまい、「え、もう終わり?」という感じでした。最盛期には100万人を超えていた来場者数も、今年は57万人だったそうです。

経済危機が色濃かった2016年のモスクワ・モーターショーで、メーカーの出展回避が相次いだのは、やむをえなかったと思います。しかし、景気も販売もある程度回復した2018年になっても、規模がほぼ横這いだったということは、モスクワ・モーターショーが往時の輝きを取り戻すことは、もうないのかもしれません。

各メーカーは、一見の見物客が多いモーターショーよりも、ターゲットを絞った宣伝に力を入れ、顧客にブランドへの忠誠心を植え付け、優良顧客を囲い込むことを重視するようになっています。実は、他の国でも同じような現象は生じていて、モスクワほど激しくはないにせよ、東京やフランクフルトのモーターショーも規模が縮小しているようです。

ロシアが独自に開発した高級リムジン「アウルス」

それでも見所はある

モスクワ・モーターショーは、世界のメーカーがこぞって出展する華やかな舞台ではなくなってしまいました。ただ、その分、ロシア独自の面白味は、より浮き彫りになったと言えるかもしれません。

そうした意味での2018年の目玉は、高級リムジン「アウルス」の展示でした。これは、ロシア政府の肝いりで、ロシアの設計局が開発し、もっぱらロシア産パーツのみで生産される純ロシア車です。今年5月のプーチン大統領の就任式で、プーチン氏がこの新型国産リムジンに颯爽と乗り込み、式典の会場に駆け付けるという演出がありました。このロシア産リムジンが、一般向けにも販売されるということで、今回モーターショーにおいて満を持してお披露目されたものです。

また、今回のモスクワ・モーターショーでは、ロシアの周辺諸国から、ウズベキスタンのラボン、アゼルバイジャンのハザールといった異国情緒漂うブランドの乗用車が展示されていました。こういうレアな車に出会えるのも、モスクワ・モーターショーの楽しみだと思います。筆者も、このイベントが続く限り、これからもその動向に注目していきたいと思います。

ロシアのボルガバスという会社が発表した電動無人運転バスの試作品